ニュース 法律 作成日:2020年5月13日_記事番号:T00089937
産業時事の法律講座「技術的保護手段」は著作権者によって採択される▽設備▽器材▽部品▽技術▽その他の科学技術的方法──で、他者が無許可で同著作権者の著作にアクセスしたり、利用したりすることを禁止・制限するものです。著作権法の規定では、いかなる人も技術的保護手段を回避、ハッキング、破壊することを禁止しています。ハッキングなどのための▽設備▽機材▽部品▽技術▽データ──を作ること、公衆に対してこうしたサービスを提供することもできません。
ソフトウエア開発メーカーは技術的保護手段によって、他のメーカーによる海賊版販売を防ぐためだけでなく、顧客からの権利侵害も防いでいます。
技術的保護手段は合法な措置
艾鉅有限公司(以下「艾鉅」)は2011年、尚鑫科技有限公司(以下「尚鑫」)から発泡スチロール形成機のコントロール設備一式を購入しました。この中には、タッチパネル式のコントロールパネル、第三者が製造したプログラマブル・ロジック・コントローラー(PLC)、PLCのコントロールプログラム(以下「プログラム」)を含みます。
契約には、尚鑫はプログラムのバックアップを提供しなければならないこと、今後プログラムを修正した際にもバックアップを提供することが明記されていました。
艾鉅は14年、PLCを製造した第三者よりPLCを購入。新設備に取り付け、プログラムのバックアップをインストールしようとしたところ、ロックされました。そこで尚鑫が契約に違反しているとして、台北地方法院(地方裁判所)に起訴し、別の設備を調達する費用を請求しました。
第一、二審では、尚鑫の「プログラムへのパスワード設定は、他者が無断で複製することを防ぐためで、著作権法が規定する保護手段である。原告の利用権を侵害しておらず、不法性もない」との主張が認められ、艾鉅が敗訴しました。
しかし最高法院(最高裁判所)は、艾鉅が同プログラムを、尚鑫が提供していないPLCでも使用できるかは、その購入の目的によるとして、原判決を破棄。下級裁判所に対し、具体的に認定するよう求めました。
知的財産法院(知的財産裁判所)は19年10月、原判決を維持しました。判決では、双方が契約上、同プログラムは尚鑫が提供するPLCにのみ使用できるとしていたことを認めました。また著作権法では技術的保護手段を「単なる技術的側面の保護としてではなく、法律上でも保護される対策に格上げしている」としました。
したがって、尚鑫がプログラムにパスワードを設定し、他者が同プログラムにアクセスすることを禁止・制限したことは合法な権利の行使ということになります。請負契約の内容と目的に沿っており、尚鑫がパスワードの提供を拒否したことは、艾鉅の利用権を侵害していないとされました。
技術的保護手段の有効性
もう一つ判例をご紹介します。遠伝電信(ファーイーストーン・テレコミュニケーションズ、以下「遠伝」)が07年、仕宇資訊公司(以下「仕宇」)より企業向けウェブサービスシステム(CWS)を購入した案件です。
仕宇は、遠伝は契約を10年以降継続しなかったにもかかわらず、その従業員が「不法な手段で、CWSのデータベースアカウントのパスワードなど技術的保護手段を破り、同データベースを全てコピーした」として、遠伝に賠償金500万台湾元(約1,800万円)を求めました。
知的財産裁判所の第一審、第二審は、仕宇が取った技術的保護手段は有効ではなく、著作権法の保護を受けることはできないと判断しました。また、最高裁判所も17年3月の判決でこれを支持しました。理由は以下の通りです。
1.著作権法上の技術的保護手段に対する「ハッキング、破壊、回避」とは、既に暗号化(encrypt)されたものを解析(decrypt)すること、スクランブル(scramble)処理したものを解除(descramble)すること、または権利者が取り決めているインターネット上での登録制度や、その他本来有効であった技術的保護手段を無効化し、回避することである。
2.CWSは、遠伝のコンピューターにインストールされ、これには「dump_db.bat」という自動バックアッププログラムが存在していた。このバッチファイルは、米マイクロソフト(MS)の基本ソフト(OS)、Windowsの「編集」機能で内容を確認することが可能で、情報処理の一般的な知識を持ち合わせていれば、パスワードを解析(decrypt)することなく、データベースのメインマシンの名称や使用者アカウント、パスワードなどの情報を知ることができる。したがって、遠伝はハッキングによりそれらのデータを知り得たのではない。
これらの案件から分かるように、もしソフトウエアの購入契約で、買い手のその利用やコピーを禁止または制限する場合、メーカーは「有効」な技術的保護手段を取ることができ、これを「ハッキング、破壊、回避」すると刑事責任を負うこととなります。もちろん、買い手にソフトウエアを利用する権利がある、または技術的保護手段が有効ではない場合は、それを「ハッキング、破壊、回避」することは違法ではありません。
徐宏昇弁護士
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