ニュース 法律 作成日:2020年2月26日_記事番号:T00088521
産業時事の法律講座荘子鋐は2017年11月、「邱宇浩」と名乗る者の指示を受け、指定された場所で陳俊傑に会い、模倣品のルイヴィトンのバッグを陳に手渡し、陳から市場価格で1万8,000台湾元(約6万5,000円)相当の金塊を受け取りました。荘はその後、台北市政府警察局万華分局に逮捕されました。
調査の結果、▽「邱宇浩」はフェイスブック(FB)の公開グループ「二手品牌保証真的(中古ブランド品、全品本物保証)」に前述のルイヴィトンのバッグを販売する旨のメッセージを掲載▽陳が同メッセージを見て、FBのプライベートメッセージ機能を使い「邱宇浩」と連絡▽「邱宇浩」は同バッグが本物であること、価格が1万8,000元であることを陳に告知▽陳は同金額相当の金塊で対面で取引することに同意▽「邱宇浩」は荘にメッセージを送信▽荘は17年11月15日夜間に台北市内で陳と会い、取引を行った──ということが明らかになりました。
陳は取引後、同バッグが質の悪い模倣品であることに気付き、警察に通報、検察は荘を詐欺および商標法違反の罪で起訴しました。
個別メッセで加重詐欺罪?
荘は捜査の段階で罪を認め、陳と和解しましたが、台北地方法院(地方裁判所)は19年7月、「他者と共同し、公衆にインターネットを通じて広く送信することで行われた詐欺罪(共同以網際網路対公衆散布而犯詐欺取財罪)」で執行猶予1年2月の判決を下しました。理由は次の通りです。
1.商標権侵害の要件に「不法な所得を得ること」は含まれていない。詐欺によって他者の商標権を侵害した場合、不法な所得を得る意図がないのであれば、刑法上の詐欺罪で処罰することはできず、商標法の規定によって処罰する。ただし、商標権の侵害以外にも詐欺行為があれば、別途詐欺罪が成立する。
2.刑法第339条の4第1項第3号の加重詐欺罪は、不特定多数の公衆に対して、詐欺に関する情報を広めることがその要件となっている。行為者がテレビやラジオ、電子通信、インターネット、その他メディアなどの情報を広めるツールを利用して犯罪を行っても、公衆に対してではなく、特定の個人に対して詐欺情報を通知した場合は、普通詐欺罪のみが成立する。
3.行為者が、不特定の相手に対して詐欺を行う意図をもって、インターネットなど情報を広めるツールを利用して虚偽のメッセージを投稿し、おびき出した被害者に詐欺を働き、財産の交付を受けたとしても、インターネットなどのツールで詐欺に関する情報を広めたのだから、前述の加重詐欺罪が成立する。
4.「邱宇浩」のアカウントを利用し、FBでルイヴィトンのバッグを販売するという虚偽のメッセージを投稿したのが誰かは不明だが、被告は本件詐欺行為に加担したため、商標法および加重詐欺罪の共犯者となる。
荘はこの判決を不服とし、知的財産法院(知的財産裁判所)に控訴しました。同裁判所は19年10月、次のような理由から、被告の訴えを退けました。
1.被告には以前にも似たような犯罪手段による前科がある。
2.被害者は本裁判所に対し、被告が賠償を履行せず、連絡も取れないと供述している。
3.関連法の規定によれば、本罪の刑期は最低でも1年の有期刑で、第一審は1年2月と判決を下したのであり、「同量刑は職権の範囲を超えてはおらず、また比例原則にも違反していない」。
荘は上告しましたが、最高法院(最高裁判所)は20年2月、この訴えを退けました。荘は、公衆に対し詐欺に関する情報を広めたのは自分ではなく、被害者とのやり取りは全て、プライベートメッセージで行っていたと弁明しましたが、最高裁は判断を変えませんでした。
一部でも公衆向けなら適用
インターネットは、人々が情報を得るために利用する主要な方法となりました。インターネット上で行われた詐欺について加重処罰を下すのは、必要なことです。本案で裁判所は、インターネット上で「公衆に対してメッセージを投稿」することで加重詐欺罪を適用すると判断しました。つまり詐欺行為の全てが、インターネット上で公衆に対して行われていなくても加重処罰が成立するということです。
徐宏昇弁護士
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