ニュース 法律 作成日:2020年9月9日_記事番号:T00092011
産業時事の法律講座先進光電科技(アビリティー・オプトエレクトロニクス・テクノロジー)は、2012年4月に「遮光シャッターの供給構造」の実用新案を出願し、同年10月に認められました。
この実用新案に関して大立光電(ラーガン・プレシジョン)は14年9月、次のような理由から経済部智慧財産局(知的財産局)に特許無効審判を請求しました。▽この構造はラーガンが04年に初めて設計したものである▽登録されている4人の考案者は全てラーガンの元従業員であるが、この構造を考案した事実はない▽4人がラーガンが使用している構造をアビリティーに渡し、実用新案を出願した──と主張しました。
智慧財産局は審査の結果、ラーガンが提出した設計資料からは、同社には04年の段階で類似する「遮光シャッターの供給構造」があったことが証明できるものの、「実用新案の技術的特徴と完全に一致しておらず、研究開発(R&D)記録、日誌などの資料が示されていない」ため、ラーガンに特許出願権があることを証明できないと認定し、17年4月に審判は不成立となりラーガンの訴願も退けられました。
正当な特許出願権者か
智慧財産法院(知的財産裁判所)は19年4月、ラーガンが提起した行政訴訟について、次のような理由から原処分を取り消す判決を下し、知的財産局に審判を成立させるよう命じました。
1.特許権者が正当な特許出願権者か否か判断するには、名義上の特許権者が、特許出願の範囲に記載されている技術的特徴に実質的に貢献したかを判断しなければならない。
2.したがって、もし特許無効審判の証拠でこの特許範囲の「主要な技術的特徴」が明らかにされており、また名義上の特許権者が研究開発の過程に関わった合理的な証明ができない場合には、この名義上の特許権者は正当な出願権者ではない。
3.特許無効審判の証拠が主要な技術的特徴を明らかにしているか否かは、特許申請の範囲に記載されている主要な技術的特徴や名義上の特許権者が発想したものか否かで総合的に判断すればよい。完全に同じである必要はない。
4.比較判断の結果、特許権者はラーガンの設計のうち、「一組」を「複数の組」へ、「二つの吸入孔および二つの内側のガイド穴」を「一つの吸入孔および一つの内側のガイド穴」へ変更したのみで、実質的に何ら貢献していない。知的財産局の判断には明らかな過ちがある。
5.アビリティーは長い訴訟プロセスを経ても、依然開発過程の資料を提出できていない。このことからもこの機構の発想者ではないことが証明できる。
実質上の差異の有無
アビリティーはこの判決を不服として最高行政法院(最高行政裁判所)に上告しましたが、同裁判所は次の各点を強調した判決をもって、20年6月に同社の訴えを退けました。
1.特許権者が特許出願権者であるか否か、特許を取り消すべきか否かの判断は、特許無効審判の請求者が提出する考案の証拠によって証明されるべきである。
2.もし係争特許申請の範囲に記載されている技術と、特許無効審判の証拠の技術との間に実質上の差異がなく、また特許権者が合理的な創作過程を提出できない場合、たとえ特許無効審判の証拠と、特許出願の範囲・特許説明書の文字や図案の記載が、形式上は異なったものであったとしても、同審判は成立すると判断すべきである。
3.無効審判を請求する際、その請求者は▽利害関係者であること▽係争特許出願の範囲に記載されている技術と特許無効審判の証拠に記載されている技術に実質上の差異がないこと▽考案者は同特許に対して実質上の貢献があった者でないこと──だけを証明すれば挙証責任を果たしたことになる。特許無効審判の証拠においては、係争特許の出願範囲の全ての技術的特徴が明らかにされているか、係争特許が先行技術と比較して新規性、進歩性があるかを証明する必要はない。
同時発明の可能性
特許法ではいわゆる「同時発明」的な理論が存在します。これは2人以上の発明者が、異なる場所で独立して同じ発明を思い付いた(同時である必要はありません)という場合を想定したもので、「先出願主義」はこの想定に基づいて設けられた規則です。
この想定の下、盗まれた特許を取り消すには、特許無効審判の請求者の発明に名義上の特許権者が接触したことを論理的に証明しなければなりません。しかし、知的財産裁判所と最高行政裁判所は、本件でそこまで厳格な証明は必要ないとしました。
特許無効審判の請求者が、考案者が過去に同社の従業員であったこと、発明に貢献していないことを証明すればよいとした一方、特許権者はその考案過程を証明しなければならないとしたわけです。これは一種の合理的な問題解決方法でしょう。
徐宏昇弁護士
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