ニュース 法律 作成日:2020年11月11日_記事番号:T00093101
産業時事の法律講座韓国人の趙善明(チョ・スンミョン)氏は、台湾人の配偶者、未成年の子女2人とともに、台湾に居住していました。
違法ダウンロードサイト
趙氏は、スマートフォンやパソコンにインストールすることで各種映像を視聴でき、また会費を支払えば映像をダウンロードできるアプリケーションを提供するインターネットサイト「ishowfile」を運営していました。
台湾の著作権団体は2015年4月1日、同アプリを発見しました。会費を支払い、映像をダウンロードし、それを証拠として警察に告訴を提出しました。
告訴を受けた警察は、趙氏の中華電信のレンタルサーバーを捜査し、サーバー6台を差し押さえました。鑑定の結果、サーバー内には同アプリのほか、映画4,865本が保存されていました。
士林地方法院(地方裁判所)は19年9月、趙氏に1年10月の有罪判決を、趙氏の妻には無罪判決を下しました。被告人、検察ともに控訴しました。
二審は控訴棄却
第二審の智慧財産法院(知的財産裁判所)は20年7月9日、双方の控訴を退けました。
同裁判所は判決の中で次のように指摘しました。
1.被告人は15年5月14日に台北市政府警察局大安分局で警察の取り調べを受けた。差し迫った状況ではなく、被告人が当日行った供述は調書が作成されたものの、録音録画はされておらず、証拠能力を欠く。
本案が同調書の使用を禁止することは、調査官の態度を正し、法治プロセスの遵守を促すこととなる。
2.被告人は、検察官の調査を受けた際には通訳がおらず、「多くの部分を理解できなかったため、推測で答えた」としていることから、同調書についても証拠とはできないと主張した。
しかし、当日の録画を見る限り、被告人の回答は、全てが単純な肯定での回答ではなく、多くの否定や解釈を加えていることから、被告人は検察官の問題が全く分からないという状況ではなかったことは明らかである。
3.被告人は「ishowfile」の機能について理解しておらず、犯罪の故意はないと主張する一方で、同サイト上の中国語は、被告自らが韓国語から翻訳したことは認めている。
また、同サイトには「スマホストリーミング」「PCダウンロード」「5分もかからないから頑張れ!映画のチケットを買うために行列に並ぶ必要がなくなるぞ!」などとの記載があることから、被告人は「ishowfile」の性質と経営方式を理解していたことが認められる。
被告人の罪名は、「公衆に対して視聴著作の複製または公開伝送を可能とするコンピュータープログラムを提供した」罪、および「販売を目的とし無断で複製を行うことで他者の著作権を侵害した」罪でした。
4年遅れの出境禁止命令
本案件で不可解なのは、被告人は15年5月14日に捜査されたにも関わらず、19年12月末になって、知的財産裁判所により出境禁止と裁定され、20年8月に同裁判所によってその期間が延期されていることです。
被告はこれに対して極度の不満を持っており、抗告を提起しましたが、最高法院(最高裁判所)に否決されました。
最高裁判所は20年10月15日の裁定において次のように指摘しました。
1.▽被告人が著作権法に違反している嫌疑は重大▽有罪判決も出ている▽被告人は外国籍である▽被害者と和解をしていない──などの理由により、出境を制限する必要がある。
2.被告人に正当な事由があり、特定期間に限って出境が必要な場合には、その具体的理由を説明し、裁判所に対して出境制限の一時的な解除を申請することができる。
本案件では、外国人が台湾において関わる刑事訴訟上の法律問題を議論しています。皆さんもぜひ参考になさってください。
徐宏昇弁護士
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