「商標」の本質は商品または役務の提供元を代表することですから、商標にはそれを識別する能力が必要です。いわゆる「記述的商標」は、「公衆が自由に使用できる公共文化財」のため、商標登録し、独占することはできません。

比喩で特性を示す

　商標はその識別性の強弱により、▽普通名称商標▽記述的商標▽暗示的商標▽任意選択商標▽造語商標──などに分類されますが、現在の商標法では普通名称商標と記述的商標は登録ができません。そのため、商標登録を行う際には、商標が記述的商標なのか、暗示的商標なのかが、争議のポイントとなります。

　智慧財産法院（知的財産裁判所）の現在の見解によると、暗示的商標とは商標の文字が「比喩を含んだ暗示により、指定商品または役務の関連特性を示すもの」とされています。また、文字商標は次の条件を満たす必要があります。

１．指定商品または役務の品質、成分、性質、特徴を直接記述していない。

２．消費者が想像と推理を働かせなければ、同文字が有する意義と指定商品または役務の特性を連想することができない。

外国語でも業界用語は却下

　台湾では、英語は法定言語ではありませんが、広く使用されており、簡単な英語であれば一般市民でも識別できます。そのため、外国企業を含む多くの企業は、台湾で英語やその他の外国語を使用した商標を登録します。しかし、商標登録の主務官庁である経済部智慧財産局（知的財産局）は、台湾人が中国語に比べ、外国語に慣れていないからといって、記述的商標の認定基準を甘くしません。

　例えば「商標に業界関連用語が含まれる」など、登録される商標と商品の間に少しでも関係がある場合、登録は認められません。

１．智慧財産法院2020年３月判決：「Delivering Hope for Life」には「生命に希望をもたらす、生命に希望を与える」という意味がある。指定商品である「薬物」が、疾病や痛みを和らげ、健康を促進することを表しており、単に経営理念と理想を標榜した用語である。

２．智慧財産法院20年３月判決：「SEE WHAT YOU'VE BEEN MISSING」には「あなたが失ったものが見える」という意味があり、失ったものが見つかるという意味を含んでいる。これはただの励ましの言葉、標語であるため、眼鏡の出どころを識別することはできない。

３．智慧財産法院20年３月判決：「UNDERCONSTRUCTION」とは「UNDER CONSTRUCTION」のことで、「建築中」「構築中」という意味である。これをレストランや喫茶店に使用すると、消費者は同店が現在「建築中」「構築中」であると認識し、同商標が商品または役務の出どころを表しているとは認識しない。

４．智慧財産法院20年３月判決：「INTELLIGENCE ACCELERATED」は「智能の加速、智慧の加速」を意味し、これを電子部品に使用した場合、ただ性質を説明しているにすぎない。

５．比較的興味を覚えるのは、最高行政法院が19年12月に下した判決で、「SAN FRANCISCO」という名称をコンピューターのハード、ソフトウエアに使用することについて、サンフランシスコは電子・ハイテク産業の集積地であるため、単なる商品の製造地、生産地、設計地の説明であるとした。ただし、同商標を「凸版印刷とその文字型」に使用することは、商品品質の説明とはならない。

　智慧財産局、裁判所共に、ごく少数の案件でしか申請商標が「暗示的商標」であると判断しません。多くの場合は、申請された文字の一部が同業界と関連していれば、申請は却下されます。あまり楽観視しない方がいいでしょう。