ワイズコンサルティング・グループ

HOME サービス紹介 コラム 会社概要 採用情報 お問い合わせ

コンサルティング リサーチ セミナー 在台日本人にPR 経済ニュース 労務顧問会員

第309回 新種植物に対する法律保護/台湾


ニュース 法律 作成日:2021年2月24日_記事番号:T00094786

産業時事の法律講座

第309回 新種植物に対する法律保護/台湾

 「新種植物および種苗法」の規定では、新種植物の育成者は、排他的に▽生産▽繁殖▽繁殖のための調製▽販売▽輸出▽これらを目的とした所持──を行うことができる「品種権」を申請できます。「新品種」とは、▽新規性▽区別性▽一致性▽安定性▽適当な名称──を持つ品種を指します。

 品種権は特許権と似たものですが、植物は生物であり、常に変化するという特質があるため、法律上は特許法とは異なった処理をします。

サンプルは即時保管が必要

 2019年11月、福埠実業公司はポインセチアの品種「クリスマス」について、数軒の花卉(かき)農家に対しての「証拠保全」を申請しました。智慧財産法院(知的財産裁判所)は、申請者が市場で自ら証拠を収集すればよいとしたため、同社がこれに上告。最終的に同裁判所は証拠保全を認め、次の通り判断しました。

・植物は生命体であるため、サンプル取得後、即時に専門機関での保管、栽培を行う必要がある。

・取得した植物株は環境、栽培などの条件の違いから、その性状に違いが生じる可能性がある。そのため、双方当事者の植物株は、同様の環境、栽培条件下に置いて初めて、その性状を比較する基礎が確立される。

・もし抗告人が自ら市場で相手方のポインセチアを購入した場合、「ポインセチア品種試験検定方法」が求める条件に符合しない可能性があり、性状の比較を行うことができない。

サンプルの性状比較で判定

 品種権の侵害訴訟においては、▽原告品種の区別性の有無▽被告植物が新品種と相同か▽損害賠償の金額──が主な争点となります。

 区別性については、智慧財産法院は20年12月に「宝島甘露」梨の判決において、「係争品種の宝島甘露梨と新興梨は、少なくとも一つ以上の性状の違いを認識、叙述することができるため、区別性がある」と判断しました。

 品種の比較に関しては、同判決の中で次の理由から、被告の梨と係争品種は相同であると判断しました。

・裁判所が証拠保全時に採集したサンプルと新品種を比較した結果、11項の性状には区別性がない。

・サンプルの植物はその成長周期において4項の性状が現れず、比較できなかった。

・証拠保全したサンプルを接ぎ木した後、重度の寒害が発生したため、開花および果実の性状には代表性がない

・ただし、証拠保全の現場において、被告が提出した果実は宝島甘露梨であったことは専門家が認め、その理由も説明した。

・被告は、裁判所が冷蔵庫を開け、保存している梨を確認することを固辞している。

 また、同裁判所は20年9月のバラの品種「十分雪山白」の第二審判決において、次のように判断しました。

・品種権者は申請時に同新種について20項の「区別性のある性状」を記載していた。

・また、性状が最も近い「翡翠白」と比較し、7項の「区別性のある性状」も記載していた。

・裁判所の現場検証では、被告のバラの性状はこれら7項と符合しないため、権利を侵害していない。

市場価格と証言から賠償算定

 賠償金については、前述の梨の判決において、「市場における一般的な水梨の平均価格」と、証人である原告が授権した梨農家の供述上の「係争品種の平均価格」との平均値を、被告の賠償額算定の単価とすると判断しました。

 バラの品種の「シェエラザード」の案件においては、智慧財産法院は、被告の花壇で差し押さえられた19株の侵害種は、2年間で約10回繁殖、開花し、1株500台湾元(約1,890円)で販売されるため、被告が権利侵害によって得た利益は9万5,000元となると判断しました。

徐宏昇弁護士

徐宏昇弁護士

徐宏昇弁護士事務所

1991年に徐宏昇法律事務所を設立。全友電脳や台湾IBMでの業務を歴任。10年に鴻海精密工業との特許権侵害訴訟、12年に米ダウ・ケミカルとの営業秘密に関わる刑事訴訟で勝訴判決を獲得するなど、知的財産分野のエキスパート。専門は国際商務法律、知的財産権出願、特許侵害訴訟、模倣品取り締まり。著書に特許法案例集の『進歩の発明v.進歩の判決』。EMAIL:hiteklaw@hiteklaw.tw

産業時事の法律講座