ニュース 法律 作成日:2021年1月13日_記事番号:T00094169
産業時事の法律講座無期限の法律関係は通常、元々は期限のある契約から生じます。契約満了後に双方が別途契約をせず、元の契約を止めもしなかった場合に、法律によって期限のない契約へと擬制(ぎせい)されます。
宝円国際股份有限公司は「正老林羊肉爐(羊肉の鍋料理)」の創業者の林武棋氏とその株主が2015年に設立した会社です。林氏は「正老林羊肉爐」の加盟店契約と登録商標「正老林」を同社に移管し、現物出資としました。
宝円は16年3月、「正老林」の商標を使用している11の加盟店に対して、商標権が移管されたため、新たに契約を締結しなければ商標を継続使用できないと通知しました。
しかし、加盟店が通知を無視して商標を使用し続け、また林氏の息子の妻が16年に、正老林の元本店のあった場所で、「正老林」商標を使用して「茂林羊肉爐」を開店したため、宝円は、商標権を侵害されたとして、それぞれ50万台湾元(約186万円)の損害賠償を求めて智慧財産法院(知的財産裁判所)に訴訟を提起しました。
調味料継続購入で契約も継続
智慧財産法院第一審は18年5月に宝円を敗訴とする判決を下しました。宝円の控訴による第二審は19年1月、次のような理由から、被告のうち「統全食品行」のみに30万元の賠償を命じ、その他の訴えを退けました。
1.原告は16年3月に各被告に「正老林」商標権は移管されたため、新たに契約を締結しなければ継続使用できないと通知した。したがって原告は、提携協議書を締結した15年5月の段階で、元の商標権者である林氏と被控訴人らが加盟関係にあること、被控訴人らが林氏から商標「正老林」の使用を許諾され、長年にわたって実際に使用していたことなどの事実の存在を認識していた。
2.被告は加盟期間満了後も継続して係争商標を使用し、また林氏から「煮込み調味料」を購入していた。同調味料こそが顧客から好まれる羊肉調理の味の元で、林氏が提供し続けていたことから、林氏が加盟契約満了後も、被告らと無期限の加盟契約関係を継続していたことは明らかである。
3.原告と林氏とは提携協議書について争いとなり、18年に判決が下ったが、判決前の抗弁において被告が「商標権が移管されたことは知らなかった」としていたことには理由がある。
4.被告らは宝円からの通知を受けた後は、それぞれ異なる商標を使用し始めた。新商標「茂林羊肉爐」と「正老林」商標は近似しておらず、消費者を混交させる恐れもない。
5.被告が商標を変更するまでは係争商標を使用していたことには、故意も過失も無いため、賠償責任はない。
6.統全食品行は宝円の通知を受けた後も係争商標を使用し続けたため、許諾金に相当する損害賠償30万元の支払いを命じる。
株主指示による使用は無過失
宝円は上告し、最高裁が20年12月、次のような理由から、原判決のうち創業者の息子の妻にかかる部分を破棄し、その他の部分の訴えは退けました。
1.林氏は原告企業に45%出資している株主である。被告が林氏を信用し、その指示により商標を変更しなかったことに過失はない。また被告は商標権が移管されたことを確認後、直ちに商標を変更しており、賠償は必要ない。
2.原告と林氏の提携協議書では、林氏が「正老林羊肉爐」を経営することは認めているが、林氏がその営業権を移転すること、または他者へ「正老林」商標の使用を許諾することは認められていない。林氏の息子の妻が羊肉爐の店を開き「正老林」商標を使用したことは権利を侵害している。
商標の移管は本質的には営業権全体の移管です。商標の売買を行う際には専門家による慎重な計画と実行が不可欠です。
徐宏昇弁護士
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