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第164回 2021年台湾経済の展望/台湾


ニュース その他分野 作成日:2021年1月12日_記事番号:T00094143

台湾経済 潮流を読む

第164回 2021年台湾経済の展望/台湾

 去る12月17日に中央銀行(中銀)が発表した2020年の経済成長率(予測)は、当初の1.60%から2.58%に上方修正された。新型コロナウイルスの蔓延(まんえん)で各国・地域が軒並みマイナス成長に陥るとみられる中で、これは異例の高い経済成長率だ。また21年の経済成長率予測は3.68%と発表された(1)。

 今月は年頭にあたり、21年の台湾経済を四つの観点から展望する。

ICT産業はDXの恩恵

 台湾の中核産業といえば、電子デバイスやパソコン関連製品を中心とするICT(情報通信技術)関連製品である。特に半導体は、世界的なDX(デジタルトランスフォーメーション)(2)の流れの中でここ数年需要が高まっており、ファウンドリー最大手、台湾積体電路製造(TSMC)をはじめとする台湾半導体企業はその恩恵を受けてきた。今年は第5世代移動通信(5G)の普及も本格化する上にモノのインターネット(IoT)関連への投資も世界的に見込まれる。DXを下支えする半導体のニーズも引き続き堅調であることが予測される。

 また昨年からの新型コロナウイルスの蔓延によりテレワーク(リモートワーク、在宅勤務)が急速に普及し、ワークスタイルの変革に拍車がかかっている。一時期、普及がピークアウトしたとみられたPC関連製品は、コロナを機に再び需要の高まりをみせつつある。台湾はPC関連製品の受託生産を担っており、コロナ禍がもたらしたワークスタイルのニューノーマル(新常態)が思わぬ追い風をもたらしているといえる。こうした潮流は21年も続くであろう。

新しい産業への種まき

 21年は、台湾にとって新しい産業への種まきが重要になる年でもある。足元ではICT産業が好調だが、こうした時こそ次世代を見据えた準備が必要なタイミングでもある。環境関連、ヘルスケア、ロボティクス、電気自動車(EV)、人工知能(AI)関連などその候補はあまたある。これらの分野は、いずれも台湾が得意とするICT産業とつながりが深く、シナジー効果が見込める。

 また、ロボティクス、EV、AI関連から生み出されるデジタル製品は、我々のワークスタイル、生活スタイルを大きく変える可能性を秘めており、その波及効果は製造業のみならずサービス分野にも及ぶことになろう。

 一方、環境問題は台湾のみならず地球規模での課題である。この分野で台湾が先進的な技術を生み出せば、ICTに続く中核産業に成長する可能性がある。

 ヘルスケアは、高齢化が進みつつある台湾にとって、社会問題の解決に直結する産業である。目下のところ、日本が進んでいる分野だが、台湾には西洋と東洋双方の医学に基づいた独自のヘルスケア産業を生み出す素地がある。

「新南向政策」の重要性

 21年に台湾と同様の好調な経済成長が見込まれるのが中国だ(3)。しかし今、中国は国際的な孤立を深めつつある。間もなく米国ではバイデン政権が誕生するが、対中政策に関してはトランプ政権時代から大きく変わることはないと見込まれる。バイデン政権になっても米中の対立構造はしばらく続くであろう。

 こうしたチャイナリスクに備えた生産拠点のリバランスは、21年も台湾の製造業の課題となる。台湾では一昨年頃から製造業の台湾回帰が進み、それは域内投資の拡大を通じて台湾の経済成長にも寄与した。しかし台湾の生産コストはアジア新興国に比較して高く、チャイナリスクを台湾回帰だけでヘッジすることはサステイナブルではない。この意味で、21年は改めて「新南向政策」の重要性が見直されるのではないだろうか。

リスクはやはり新型コロナ

 21年はおしなべて好調な経済が予測される台湾だが、リスクはやはり新型コロナウイルスだろう。新南向政策をはじめ生産拠点のリバランスを図るにしても、海外との往来が不自由な状況ではいろいろ困難が生じよう。20年にマイナス成長に落ち込んだ主要国経済は、21年にプラス成長が見込まれているが、これはいわゆるペントアップ(繰り越し)需要によるものだ。そこでは、新型コロナウイルスの終息が前提となっている。

 ワクチン接種も徐々に始まっており、終息シナリオはある程度の蓋然性をもつ。しかし一方でウイルスの変異も生じており、予断は許されない状況である。台湾自身は新型コロナウイルスの流入を早期にせき止めたが、21年も新型コロナウイルスが猛威を振るい、グローバル経済の回復が遅れたりすると外需の低迷を通じて台湾経済は痛手を負うことにもなりかねない。

出典:
(1)中央銀行理監事聯席会議会後記者会見(20年12月17日)
https://www.youtube.com/watch?v=G3RRZYeL3qc&feature=youtu.be
(2)デジタル技術を活かした業務変革
(3)国際通貨基金(IMF)は21年の中国経済の成長率を8.2%と予測
https://www.imf.org/ja/Publications/WEO/Issues/2020/09/30/world-economic-outlook-october-2020

赤羽淳

赤羽淳

中央大学経済学部・大学院経済学研究科 教授

東京大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科博士後期課程修了、博士(経済学)を取得。株式会社三菱総合研究所にて、主に日本のモノづくり企業の海外進出コンサルティング業務(主に新興国)に従事。豊富な調査・コンサルティング経験に基づき、現在は中央大学にて、実践的な教育と研究活動に従事している。1997年に台湾総合研究院客員研究員、99年から2001年まで台湾師範大学、台湾大学経済系研究所へ留学経験あり。 論文多数執筆、著書に『東アジア液晶パネル産業の発展:アジア後発企業の急速キャッチアップと日本企業の対応』(15年6月、第31回大平正芳記念賞を受賞)、『アジアローカル企業のイノベーション能力』(19年2月、18年度中小企業研究奨励賞(経済部門準賞)を受賞)などがある。

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