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第167回 トラベルバブルは海外旅行再開の試金石となるか?/台湾


ニュース その他分野 作成日:2021年4月13日_記事番号:T00095536

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第167回 トラベルバブルは海外旅行再開の試金石となるか?/台湾

 新型コロナウイルス感染症の市中感染を抑え込んできた台湾では、昨秋から海外との往来再開が検討されてきた。外交やビジネスの往来に加えて、最も大きな目玉が海外旅行の本格的な解禁を目指すトラベルバブル(中国語名:旅遊泡泡)である。そして4月1日に、ついにその第1弾が友好国パラオとの間で実施された。人々にとっては待ち望んだ海外旅行の再開である。

20年入出境者は大幅減

 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)から既に1年以上が経過し、その間、台湾でも一般の海外旅行は基本的にお預け状態が続いている。図表は台湾への入境者と台湾からの出境者の人数を主な国・地域別に2019年と20年の二時点で比較したものだ。いずれの国・地域でみても、入境者、出境者ともに19年から20年にかけて大幅に減少している。

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 日本、香港、韓国、中国など東アジアの人々にとって、台湾は人気の旅行先である。一方で、図表に表されるように台湾では入境者の数字よりも出境者の数字の方が大きい。つまり、台湾を訪れる外国人以上に台湾の人々は海外へ出掛けているのである。

 台湾にも観光資源は豊富に存在する。昨年7月から交通部は、域内旅行需要の喚起策である「安心旅遊」を実施し、旅行・観光産業の活性化を図った。しかし、台湾の面積は九州よりも小さく、人々の旅行ニーズを満たすには、やはり海外旅行の解禁が待ち望まれていた。

全制約条件クリアで隔離免除

 では、どのように海外旅行を再開するのか。これは台湾だけではなく、全ての国・地域がこれから直面する課題でもある。ワクチン接種が進展し、集団免疫が地球規模で確立すれば自然と解決する問題かもしれないが、それまでにはまだ相当の時間がかかりそうである。やはり現実的には、抑制的かつ段階的なスキームで、海外旅行を再開していかなければならない。

 実際に台湾が今般パラオとの間で実施したトラベルバブルのスキームには、各種の制約条件が付いている。まず団体旅行であり、渡航先での自由行動が原則できない。PCR検査の陰性証明と海外旅行保険への加入も必須となっている。また、このトラベルバブルに申し込むためには、過去6カ月に海外渡航歴がないこと、感染者との接触者に対する外出制限措置の対象になっていないことが前提となっている。これらの制約条件を全てクリアすれば、トラベルバブルに参加が可能となり、台湾とパラオでは入境後の隔離措置が免除されることになる。

 待ちに待った海外旅行の解禁ということもあり、台湾からパラオ行きの初回ツアーは満員になったそうだ。しかし、その後の予約は低迷しているという。やはり各種の制約が伴うことや保険なども含めた旅行代金が高額になることがネックになっているようである。

トラベルバブルをモデルに

 トラベルバブルの最初の対象がパラオになったのは、台湾から比較的近く、かつ国交がある友好国ということに加えて、これまでパラオが国内での新型コロナウイルス感染者ゼロを維持しているからだ。当然のことだが、このスキーム成立の前提条件として、お互いの地域が感染者の封じ込めに成功していなければならない。当初は昨秋に開始の予定だったようだが、北半球が冬を迎えたことでパラオ側が難色を示したようである。世界的にみれば台湾も感染者抑制に成功しているが、国内の感染者ゼロを維持しているパラオからみれば、それでも慎重にならざるを得なかったということだ。

 台湾は今後、トラベルバブルのスキームを他の国・地域に広げていく計画である。まずは感染者が比較的少ないベトナムあたりが有力候補になりそうだが、いずれは日本や韓国も対象となる見込みである。トラベルバブルの実施にあたっては、お互いの地域で検査結果を共有する体制や保険の仕組みを整える必要がある。台湾が先んじてこうしたノウハウを蓄積していけば、日本や韓国との交渉においては、台湾がイニシアチブを発揮することができるだろう。トラベルバブルが海外旅行再開のモデルケースになれば、台湾が再び国際社会で存在感を示すチャンスにもなり得るということである。

赤羽淳

赤羽淳

中央大学経済学部・大学院経済学研究科 教授

東京大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科博士後期課程修了、博士(経済学)を取得。株式会社三菱総合研究所にて、主に日本のモノづくり企業の海外進出コンサルティング業務(主に新興国)に従事。豊富な調査・コンサルティング経験に基づき、現在は中央大学にて、実践的な教育と研究活動に従事している。1997年に台湾総合研究院客員研究員、99年から2001年まで台湾師範大学、台湾大学経済系研究所へ留学経験あり。 論文多数執筆、著書に『東アジア液晶パネル産業の発展:アジア後発企業の急速キャッチアップと日本企業の対応』(15年6月、第31回大平正芳記念賞を受賞)、『アジアローカル企業のイノベーション能力』(19年2月、18年度中小企業研究奨励賞(経済部門準賞)を受賞)などがある。

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