ニュース その他分野 作成日:2021年5月11日_記事番号:T00096034
台湾経済 潮流を読むバイデン政権の誕生から約4カ月が経過し、その政策や性格が徐々に明らかになってきた。台湾にとっては、民主党の政権が中国寄りのスタンスを取るのではないかとの懸念が当初あったが、ふたを開けてみればバイデン政権の対中政策は基本的にトランプ前政権の強硬路線を継承している。その背景は何か。実は国際社会における台湾自身の価値がより高まっていることが考えられる。
52年ぶりに「台湾」に言及
去る4月16日、ワシントンで日米首脳会談が行われた。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の中でバイデン大統領が初めて対面で迎える外国の首脳は日本の菅義偉首相であった。改めて日米同盟の絆を世に知らしめたわけだが、アジア太平洋でプレゼンスを増す中国に対峙するためには、日米両国の結束が必要だというバイデン大統領の認識がそこにはあった。
日米首脳会談と前後して、バイデン政権は元上院議員のクリス・ドッド氏、元国務副長官のリチャード・アーミテージ氏とジェームズ・スタインバーグ氏を台湾へ派遣している。米国には、台湾に関する政策を決めた「台湾関係法」という国内法があるが、その法律制定42周年を祝うという名目での派遣である。米国からの代表団はあくまでも「非公式」という位置付けだったが、台湾の民主主義にコミットメントするバイデン大統領の強い意志が代表団の派遣には込められていた。
日米首脳会談後の共同声明では、「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調する」との文言が入った。共同声明に「台湾」を明記するのは、1969年以来52年ぶりである。「台湾」への言及を主導したのは米国側であり、日米間のぎりぎりの調整の中で最後は日本側が了承したという。こうした共同声明に対しては、台湾の総統府と外交部から感謝と歓迎のコメントが発表された。
バイデン政権の対中包囲網
貿易摩擦に端を発した米中間の対立は、その後、中国製の情報通信技術(ICT)機器の排除に発展し、今日では民主主義と専制主義の争いという新冷戦の様相を呈している。バイデン政権がトランプ前政権の対中強硬路線を継承したのは、中国の経済力や軍事力がここ数年飛躍的に向上しているからである。
しかしながら、中国に対峙する方法については、トランプ前政権とバイデン政権でかなり異なるのも事実だ。
トランプ前政権は、「アメリカファースト(米国第一主義)」を掲げた。そして中国との対立もその延長線上に位置付けられた。一方で、パリ協定から離脱したり、イランとの核合意を破棄したりしたように、国際協調には背を向けた。
トランプ前政権は、中国にくみする場合も米国単独であり、その際も基本的には米国の損得勘定を考えていた。トランプ前政権は台湾に対しても好意的であったが、それは台湾の民主主義にコミットするというよりも、「敵の敵は味方」といった論理に基づいていたと思われる。
これに対してバイデン政権は、自由、民主主義、人権、法の支配、多国間主義など、米国が従来から重視してきた普遍的価値観を前面に出している。中国と対峙する場合も、単独ではなく同盟国を中心に緻密な対中包囲網を築こうとしている。
例えば3月には、日本、オーストラリア、インドの各国首脳に呼び掛けて、オンライン首脳会議を開催した。日米豪印4カ国(通称クアッド)は、いずれも太平洋とインド洋を取り囲む主要国で、この地域で台頭する中国と複雑な利害関係を有する国である。
また欧州では、トランプ前政権時代に決めた在独米軍の削減を撤回し、逆に増員することを決めている。普遍的価値観を共有する欧州各国との関係を強化し、一体となって中国に対峙していこうとする姿勢の表れといえる。
他にも、5月5日にロンドンで開かれた先進7カ国(G7)外相会議の共同声明では、台湾海峡の平和と安定の重要性が強調されるとともに、世界保健機関(WHO)の会議と世界保健総会(WHA)への台湾の参加に支持表明がされた。
中国にとって、こうしたアプローチを取るバイデン政権は、トランプ前政権よりも間違いなくやりにくい相手であろう。
背景には高まる台湾の価値
今のところ、バイデン政権が台湾を重視しているのは間違いない。その背景には、米中双方にとって台湾の価値が高まっていることが挙げられる。
一つは台湾の地政学的な位置である。中国にとって、台湾を名実ともに取り込めば東シナ海における海洋進出は一気に完成に近づく。逆にいえば米国にとって、今の台湾の存在は中国の海洋進出を抑制する砦(とりで)にもなっている。
また、台湾の民主主義の価値も高まっている。中国が新型コロナウイルスのまん延をうまく抑制していることもあり、専制主義に対する民主主義の優越性に疑問を抱く風潮も一部の新興国に生じている。そうした中、民主主義体制の中でパンデミックを抑えた台湾の経験は改めて注目すべき価値がある。実際、米国のブリンケン国務長官は5月7日に声明を発表し、24日から開催されるWHOの年次総会に台湾を招待するようにWHOに求めたことを明らかにした。
そして最後に、半導体の生産拠点としての価値である。このコラムでもかつて触れたが、台湾の半導体産業は圧倒的な強さを誇っており、世界中のあらゆる産業が台湾の半導体に依存している。
このように台湾の価値が高まり、米国をはじめ国際的に注目されることは、台湾自身の安全保障につながる。ただそれは、中国にとっても台湾がますます譲れない核心的利益になることを意味する。バイデン政権になっても、米中の対立は台湾を軸に引き続き神経質な展開が続くであろう。
赤羽淳
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