ニュース 法律 作成日:2017年7月26日_記事番号:T00071904
産業時事の法律講座2015年1月14日の本コラムで、上場会社の雅新実業が不正会計で13年8月に受けた第一審の有罪判決をお伝えしました。(https://www.ys-consulting.com.tw/news/54869.html)本コラムでは当時、「裁判所は、被告人が高尚な目的により不正会計処理を行い、不当な利益は得ていないとみているようだ」としましたが、幸いなことにその後のいずれの判決も第一審の見方を支持しませんでした。
第二審、不備を否定
刑事事件の第二審判決は14年12月に下され、黃恆俊董事長は懲役7年6月を7年4月に、配偶者の荘宝玉氏は懲役9年を7年4月に減刑され、不当利得1億6,000万台湾元の没収を言い渡されました。また、葉壬侑財務協理は懲役4年を3年8月に減刑され、蘇嘉斌広報担当は懲役1年10月、執行猶予5年の原判決が維持されました。
裁判所は判決の中で、雅新は06年売上高が176億5,000万元と、前年の半分近くまで減少したが、ほぼ同額の186億4,000万元に上る虚偽の売り上げを計上していたと被告人を厳しく批判しました。
被告人は多くの点について「技術的な不備」と主張しましたが、裁判所は「問題は、雅新が売り上げを水増ししていたことで、出荷していないのに100億元以上を計上していた。これら未出荷の受注は、親会社の売上高にも実在しておらず、被告人の黃恒俊氏、莊宝玉氏が主張するような実際の売り上げではない」と、不正会計が単なる不備ではなく、ましてや高尚な理由などないと認定しました。
検察官と被告人はいずれも上告しましたが、最高裁判所は16年2月25日、上告を棄却しました。最高裁判所は高等裁判所の判断を支持し、「被告人は雅新グループの06年売上高が444億元に上ると主張しているが、不正会計の有無とは何ら関係がない」と説明しました。
また最高裁判所は、雅新の監査を行った会計士、王引凡氏は有罪が確定しているが、それは雅新が中国子会社に対して無償で使用させるために購入した機械設備がその子会社の資産として計上、認定されたが、本来は「固定資産」ではなく「長期投資」としなければならない上、「長期投資」なら台湾政府の中国投資に関する認可額の上限を超えていることを知りながら監査報告で指摘しなかったため、15年12月に懲役1年4月、執行猶予4年の判決を受けたと説明しました。
王引凡氏は控訴しましたが、台湾高等裁判所は16年5月、訴えを退けました。また、王引凡氏と共同で監査を行った会計士の呉典昭氏が死亡したため、検察は不起訴処分としました。
刑事事件の判決書には、王引凡氏は「監査の責任を果たさなかった」ことを理由に、民事訴訟で損害賠償5億4,000万元の支払いを命じられたと記されています。しかし、この民事の判決書を読み込むと、王引凡氏は単に勘定科目の誤りが理由で賠償責任を負ったわけではないことが分かります。
会計士も責任
15年3月に下された民事訴訟の原告は、投資家6,000人から委任を受けた「財団法人証券投資人及期貨交易人保護センター」で、被告は雅新および同社の董事、監査人、幹部、会計士です。裁判所は判決で以下のように認定しています。
1.雅新の黃恆俊董事長、配偶者の莊宝玉氏、李政寬総経理、葉壬侑財務長は、不実の財務報告を作成したため、雅新と連帯して被害者に対し25億106万775元を賠償しなければならない。莊宝玉氏はインサイダー取引で被害者に対し3,089万1,294元を賠償しなければならない
2.雅新の董事、監察人も被害者に対し前述の金額の50%、25%を賠償しなければならない
3.雅新の会計士の王引凡氏と呉典昭氏の相続人は、被害者に対し前述の金額の25%を賠償しなければならない
一部の被告は上告しましたが、訴訟費用を納めなかったため、上告は退けられました。判決で裁判所は以下のような素晴らしい判断を行っています。
1.雅新の財務報告が不十分だったのは、内部統制の決定機関や財務担当者が計画的、構造的に虚偽の売り上げを計上し、コストを調整した上で、虚偽の営業利益を作り出したことによる。これらのことから、コーポレートガバナンス(企業統治)および信義誠実の原則が欠けていたことが分かる
2.専門家の意見として王志雄教授は、雅新の財務報告における記載誤りの程度が「重大でない」としているが、「重大性の質的な判断」において理由の記載がなく、どう評価したのか何の説明もないので、採用することはできない
3.もし企業の董事、監査人が関与していない、排除された、または監査を受けた財務報告には不当なところがないはずなどの理由で、免責となるのであれば、董事や監査人は企業の経営に参加しなくなる。そうなると、悪意を持った人間により企業の経営が左右され、公司法(会社法)で定められた董事、監察人による内部統制システムが崩壊してしまう。雅新の董事と監査人は、名義だけで実際の権利は何もないと主張しているが、もちろん賠償責任を負わなければならない
4.雅新の06年第1~3四半期財務報告に売り上げの水増しがあったことは、発見が不可能なわけではなかった。もし、会計士の呉典昭氏と王引凡氏が、財務会計監査準則公報にのっとり監査し、その結果と帳簿が符合していない原因を突き止めていれば、雅新に虚偽の売り上げが計上されていたこと、コストを調整していたことが明らかになったはずだ。両会計士は準則にのっとった監査を行わなかったため、賠償責任を負わなければならない。
徐宏昇弁護士
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