ニュース 法律 作成日:2017年9月13日_記事番号:T00072834
産業時事の法律講座成龍健康礼約股份有限公司(以下「成龍公司」)は、頴創生技実業有限公司(以下「頴創公司」)を相手取り、営業秘密が侵害されたとして提訴した起訴状の中で、以下のように主張しました。▽成龍公司は頴創公司に対して、活性効果、アンチエイジング効果が期待できる「レスベラトロール」の健康食品の生産を依頼した。▽その後、双方は顧問契約を締結し、頴創公司が成龍公司に対して、毎月2万台湾元の対価を支払うことで、レスベラトロールのレシピおよび製造方法を頴創公司の栄養士に提供することとした。▽しかし、頴創公司は上記顧問料を支払わなかっただけでなく、成龍公司の同意を得ずに、同レシピを製品の外箱に記載した。▽また、第三者を発明者として、同レシピをもって、経済部知的財産局に対して特許権の申請を行った。
原告は頴創公司が自らレスベラトロールの健康食品を生産していることを発見したため、頴創公司およびその董事、総経理が営業秘密を侵害したと主張して、連帯で255万元の損害賠償を求めました。
経済的価値を認めず
しかし、第一審および第二審裁判所は共に、以下のような理由から原告を敗訴としました。
1.原告は、▽被告の栄養士に対して、ファクスで成分明細を送った上で、被告が「本当のレシピ」の秘密を保守しなければならないことを伝えた。▽A製品の成分明細には、「パッケージ成分」「製造成分」および「外部不出成分」の3部分が含まれていた。▽原告は、「外部不出成分」は第三者に教えてはならないレシピであり、外箱に印刷することはできない営業秘密であると主張した。▽B製品の成分明細には、「外箱成分」と「実際の成分と薬量」が含まれていた。▽原告は、蛍光マーカーで示してある部分は、外箱上ではそれが何の抽出物であるかを示せばよく、その詳細な成分については機密であると主張した。
2.裁判所での比較検討により、▽原告製品の包装に表示されている成分の内容と、「外部不出成分」および「実際の成分と薬量」は、一部の成分の種類または含有量、用量が微量に異なるにすぎないことが分かった。▽レスベラトロール、およびその活性効果、アンチエイジング効果などについては、世界中で盛んに研究が行われているテーマである。▽原告の主張する「外部不出成分」に含まれるブドウの種、イタドリの根、ガーリックオイル、ツルドクダミ、サンシチニンジン、鰹カツオ(カルノシン)、カルノシンなどは、どれも通常よく見かける漢方薬または栄養補充品である。▽原告は前述の微量な成分または含有量、薬量の差異が、原告による整理、分析により蓄積された特有な営業情報であるため、その秘密性および経済価値があるということを証明できていない。
秘密保持の処置も不認定
3.▽法律の求める「秘密性管理」とは、営業秘密の種類と内容、および権利者は業務の必要に応じた分類やレベル分けを行い、異なるライセンスと職務等級に基づいて、適当な管制処置を行わなければならない、というものである。▽原告は同レシピをファクスで被告の栄養士に送ったとしているが、被告側のファクスの所在地では不特定多数の者が自由に同ファクスの内容を知ること、取得することができたし、受け取る側としても何らの秘密保全協定にサインをしていたわけではなかった。▽原告は、同栄養士が法律上秘密保持の義務を負っていることを証明できていない。▽原告は同ファクス上に「商業機密」「機密」などの文字を記載していたのみだった。▽これらのことなどから、原告が合理的な秘密保持のための処置を取っていたとは考えられない。
最高裁で逆転判決
この判断を不服とした原告は上告、最高裁判所は第一審および第二審裁判所とは違う見解を採択しました。
1.第二審判決における「成分の種類または含有量、薬量が微量に異なる」とは何を指しているのか。それは原告のいう「外部不出」という部分に相当しているのではないのか?この部分について不明な点が残されている。
2.原告は「レスベラトロールのレシピ」「レスベラトロールの新レシピ」を提供する際、「商業機密」と明記した上で、その成分と薬量を記載した。また、原告は、2010年に被告に文書を送ったが、そこには「本製品の『実際成分』の調合に際しては、いくつかの重要な『相乗作用(synergic effects)』の原則に注意されたし:レスベラトロール、PPARs活性剤、クェルセチン、カテキン、βカロチンが幹細胞の活性化と修復を促進する食材、乳酸菌…」などと記載されていたことから、原告が提供した資料には機密性が認められる。
3.パッケージ上に記された成分は、実際の製造成分および薬量と異なったものとされるのが通常であるし、また一般人にはそれらの違いも分からない。上告人は、レシピを提供する際に、パッケージ上に表示してはならない各成分または薬量を明記し、警告も行っていた。このことは、同レシピを被告外部の者に提供してはならないということの明示である。従って、原告が、同レシピには独特性、秘密性があり、またすでに秘密保全処置も採っていると主張することには全く根拠が無いわけではない。
4.原告が被告に対して同製品の製造を委託した後、被告はそれらを自らの名義で製造し、レスベラトロール製品を販売した。前述のレシピには経済性があるとの上告人の主張は認められる。
本件の下級裁判所は、成分そのものに注目し、レシピに経済的価値はないと判断しましたが、最高裁判所は事件の外観に従って異なる判決を下しました。もし、被告が原告のレシピを使用して生産を行ったことを原告が証明できなかった場合、同レシピは本当にレスベラトロールによる活性効果、アンチエイジング効果を実現または高めることができるのかという点こそが、企業秘密としての保護を与えるべきかの最大のポイントでしょう。
徐宏昇弁護士
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