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第237回 台湾における模倣品取り締まりのプロセス


ニュース 法律 作成日:2017年12月27日_記事番号:T00074727

産業時事の法律講座

第237回 台湾における模倣品取り締まりのプロセス

 模倣品は社会の敵です。撲滅されなければいけません。台湾で最もよく見かける模倣品、海賊版はコンピュータープログラム、ゲームソフト、動画、アイドル関連商品、ブランド製品です。これらの違法行為によって侵害されるのは著作権と商標権ですが、台湾ではこのような権利侵害行為は刑事責任を負わなければなりません。

模造品の告訴方法

 台湾は最も模倣品が多いわけではありませんが、10年以上前に設立された台湾の知的財産警察は、既に相当豊富な経験と専門知識を蓄えており、効果的に模倣品を取り締まることができるようになりました。

 権利者が海賊版または模倣品を発見した際には、まずサンプルを購入します。その際には購入したことの証明、例えば、領収書、発票、オンラインオークションの落札記録などを保管しなければなりません。また、同製品を購入する際には、「フィッシング」、つまり、もともと販売するつもりがない人をそそのかして販売させたり、既に在庫がない店をそそのかして入荷させたりということがないよう注意する必要があります。

 権利者は模倣品などの権利を侵害している商品を購入した後、鑑定報告書を1部準備しなければなりません。鑑定報告書の目的は、警察や検察に対して同サンプルが模倣品であると説明することです。ですから、鑑定報告書では、正規製品と模倣品をどのように見分けるのかを説明しなければなりません。

 次に、司法機関への刑事告訴の方法ですが、これは口頭で行わなければなりません。通常は警察または検察官に対してその場で口頭で告訴を行い、警察または検察がそれを記録します。また「告訴状」を作成し、口頭説明の不足を補うこともできます。

押収物品が証拠に

 台湾には現在、専門的な訓練を受けた警察が知的財産権に関する案件を専門的に担当する知的財産警察隊が、台北、台中、高雄の3カ所に配置されています。彼らは通報を受けた後に調査を開始し、模倣品の提供者および模倣品の保管場所を主な調査の対象として捜査を行います。警察内部での評価はどのくらい模倣品を挙げることができたかで決まるため、警察は一生懸命模倣品の卸元を探そうとするのが常です。

 刑事訴訟法の規定によると、原則として権利者が購入した模倣品は犯罪の証拠とすることはできません。警察が家宅捜索時に押収した物品が犯罪の主な証拠となります。しかし、警察は裁判所に対して十分な証明を提出して、家宅捜索を行う「必要性」を証明しなければならないため、裁判所に対する捜査令状の申請は容易なことではありません。例えば新竹地方裁判所などは、知的財産案件の捜査令状の発行に対して慎重な傾向があります。

 権利を侵害しているか明らかではない案件、例えば模倣品が使用している商標が単に「近似」を構成しているだけであるような場合、警察はまず知的財産局の判断を仰ぐことになります。

弁護士の同行

 警察による家宅捜索時には権利者の弁護士の同行が求められる可能性があります。弁護士の主な仕事は、警察に協力して模倣品を見分けることにあります。弁護士は法律に精通しているため、警察のサポート役となれます。また、一部の容疑者は、弁護士が模倣品に精通しているか試してくることがあります。弁護士がきちんと対応できれば、容疑者も罪を認めざるを得なくなり、勝訴が容易になります。また、弁護士が同行することで、警察が模倣品の卸元を特定する証拠や、容疑者による入荷、販売量などの証拠をより迅速に特定できます。

 家宅捜索終了後、警察は定期的に権利者の弁護士と容疑者で押収品の確認を行うことを求めます。権利者はこの機会を利用して、警察に協力する形で、より完全な押収品リストと鑑定報告を作成することができます。鑑定報告書の作成には特に気を付ける必要があります。なぜならば、容疑者または被告は通常、内容が正確な鑑定報告書に対しては異議を唱えてこないからです。また、この鑑定報告書は、検察による起訴、および裁判所による判決などの根拠となります。逆に、もし被告が権利者の鑑定報告に同意をしない場合、裁判官自ら検証を行わなければならないため、訴訟プロセスが無意味に長引く結果となってしまいます。

第三者が身代わり

 台湾の裁判所は知的財産権の侵害に対する処罰を軽く見る傾向があります。もし容疑者が初犯である場合、よほど大量の証拠が押収された場合を除いて、大抵は6月以上の有期刑となることはありません。これは、6月以上の有期刑の場合、被告は必ず刑務所に入らなければならないからです。また、模倣品の販売の際にはほとんどの場合、従業員または第三者を雇ってそれを責任者とすることで、本当の販売者は責任を逃れようとします。このような場合、従業員などは賠償を支払うだけの財産がありません。しかしこのような場合でも、大量の模倣品を押収し、またその場所が明るみに出るだけで、模倣行為を行う者にとっては大きな打撃となることでしょう。

 台湾では、前述の專門警察と権利者の協力により、効果的に模倣を取り締まるプロセスが確立されています。そのため皆さんは専門知識を持った弁護士を雇えば、模倣品の大本営を叩きつぶし、権利が侵害されることを防ぐことができるでしょう。

徐宏昇弁護士

徐宏昇弁護士

徐宏昇弁護士事務所

1991年に徐宏昇法律事務所を設立。全友電脳や台湾IBMでの業務を歴任。10年に鴻海精密工業との特許権侵害訴訟、12年に米ダウ・ケミカルとの営業秘密に関わる刑事訴訟で勝訴判決を獲得するなど、知的財産分野のエキスパート。専門は国際商務法律、知的財産権出願、特許侵害訴訟、模倣品取り締まり。著書に特許法案例集の『進歩の発明v.進歩の判決』。EMAIL:hiteklaw@hiteklaw.tw

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