ニュース 法律 作成日:2018年11月14日_記事番号:T00080373
産業時事の法律講座台湾民法の規定では、特別の取り決めがない場合、夫婦間の財産については一律に「法定財産制」を適用するとしています。法定財産制の下では、夫婦は原則としておのおの自己の財産を所有しますが、法定財産関係が終了する際には、その「余剰財産」を分与しなければなりません。
法定財産制は、「離婚」「一方の死亡」「その他の夫婦財産制の選択」という三つの場合に、その関係が終了します。その際の余剰財産の分与方式は、次のように規定されています。
1.夫婦それぞれについて婚姻継続期間中に増加した財産総価値を計算し、同金額からおのおのが婚姻継続期間中に負った債務を控除したものが余剰財産となる。
2.双方の余剰財産を比較し、多い方が他方に余剰財産の差額の半分を与える。
3.相続、その他の無償の方式により取得した財産は、余剰財産として計上しない。
4.判決により離婚した場合、「訴訟の提起時」が計算の基準時点となる。
分与比率の調整
このような折半方式は、時に「明らかに公平を失している」結果を招くため、当事者は法院(裁判所)に対して分与比率の「調整または免除」を求めることができます。最高法院(最高裁判所)の解釈によれば、「明らかに公平を失している」とは、夫婦の一方が毎日ブラブラ遊んでいる、または浪費を習慣としているなど、財産の形成・増加に対して貢献・協力せず、余剰財産の分与に参加する正当な理由を有していないのに、労せずに不相応な利益を得ることを指します。
この規定の下では、経済力のある方が、他方から請求される金額を抑えようとするため、台湾の裁判所は次の事例のように、さまざまな判決を下しています。
1.夫婦双方が婚姻関係継続中に子女と同居しており、一方が家事や教育を担い、他方が憂いなく事業に打ち込んでいた場合において、裁判所は夫婦の婚姻後の財産の増加に対して貢献がないとはいえないとして、余剰財産を平等分与しても「明らかに公平を失してはいない」と判断した。
2.一方、結婚期間2年8カ月のうち1年を別居していた案件で裁判所は、収入が少ない方が、他方の一部の親族と関係を保ち、毎日ブラブラ遊んだり、浪費する習慣がなかったにもかかわらず、余剰財産の平等分与を行うことはできないと判断した。
3.裁判所は、余剰財産の計算で、基準時点における預貯金、動産、不動産の他、保険契約の「価値」を算入しなければならないとした。また、夫婦の一方が婚姻関係終了前5年以内に行った、正当な理由なく銀行から預金を引き出す行為など、「他方の余剰財産分与を減少させるための婚姻後財産の処分行為」について、余剰財産に算入しなければならないと判断した。
4.裁判所は、控除可能な債務は、期限満了したものに限らず、例えば既に確定した所得税なども控除可能な債務と判断した。また、控除可能な「贈与」については、第三者からの贈与に限らず、例えば夫または妻が購入した不動産を他方の名義で登記するなど、贈与の証明ができる範囲で他方から得た贈与についても財産に計上しなくてよいと判断した。
5.裁判所は、余剰財産の分与権は金銭債権であり、金銭による支払いのみを求めることができ、双方の合意がある場合を除き、特定の骨董(こっとう)品や車などの引き渡しを求めることはできないとした。
6.一方の死亡により余剰財産が分与される場合について、裁判所は、請求を行う側(死亡していない夫または妻)は、その他の相続人に対して金銭の支払いを求めることができるとした。最高裁判所は、このような状況で、「亡くなった配偶者の遺産について既に遺産の相続登記が行われていても、生存している配偶者が夫婦間における余剰財産の差額分与請求権を行使することには影響しない」と判断した。
7.婚姻期間に第三者から不動産購入資金を提供された場合について、裁判所は、第三者が「不動産の贈与」を行ったことが証明できれば不動産は余剰財産に含まれず、「資金の贈与」の場合は資金の贈与として控除でき、「金銭貸借」の場合は債務として計上することができるとした。
以上の事例からも分かる通り、台湾の夫婦財産制度は一般の方がスムーズに理解できるものとなっていません。外国人と台湾人が結婚では、多くの方が台湾の夫婦財産制を採用します。このため、結婚に際して高額な財産を購入する場合などは、経験豊富な弁護士と事前の計画を立てることで、夫婦双方の権益の保障に努めることをお勧めします。
徐宏昇弁護士
台湾のコンサルティングファーム初のISO27001(情報セキュリティ管理の国際資格)を取得しております。情報を扱うサービスだからこそ、お客様の大切な情報を高い情報管理手法に則りお預かりいたします。
ワイズコンサルティンググループ
威志企管顧問股份有限公司
Y's consulting.co.,ltd
中華民国台北市中正区襄陽路9号8F
TEL:+886-2-2381-9711
FAX:+886-2-2381-9722