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記事番号:T00081193
2018年12月26日15:41

 皆さんもご存じのように、インターネットオークションサイトでの売り手の評価記録は、売り手が何かを売るたびに、オークションサイト側が買い手に対して「売り手に関する評価」を求め、記録されたものです。買い手は全ての売り手に評価を付けるわけではありませんが、買い手が評価を付けさえすれば、双方の取引は完了しているといえ、それを否定する当事者はいません。つまり、あるアカウントが行った取引に関して付けられた評価は、オークションサイト側により作成された同取引に関する記録ということになります。

 一部の売り手は販売促進のため、自らの別アカウントを利用して「偽装評価」を行うことで高評価を得ていたりもしますが、そのためには多くのアカウントを取得しなければならないなどの技術上の制限、およびそれに伴うコスト負担といった問題もあるため、評価を大量に偽装することは難しいのが現状です。

海賊版ゲーム機の事例

 呉氏は、高雄市六合路の知的財産保護警察の高雄分隊付近で玩具店を営む傍ら、ネットオークション上でゲーム関連商品を販売していました。2016年10月、他地区の警察により同店で、本体内部に大量の海賊版ゲームを記録しているテレビゲーム機「ファミリーコンピューター(ファミコン)」の海賊版1台と、カセット1個当たり33個から500個のゲームを記録した「海賊版ファミコンカセット」数百個が摘発されました。

 すぐそばにある知的財産保護警察高雄分隊としては面目丸つぶれといったところですが、その後さらに17年3月にも、同じ玩具店内で大量の海賊版ファミコンといくつかの海賊版カセットが摘発されました。

 検察は捜査の後、「接続犯」理論により被告人による犯罪は「一つ」であると判断、起訴しました。しかし、高雄地方法院(地方裁判所)は18年8月、被告に対して「二つの罪」を認定し、それぞれ罰金に換算執行可能(易科罰金)な懲役6月の有罪判決を下した他、犯罪所得の没収(追徴)を命じました。この場合の犯罪所得とは、告訴人が証拠収集時に呉氏より購入した海賊版ファミコンなどの代金、計3,840台湾元(約1万4,000円)を指しています。

売り手評価で証明不可?

 告訴人は、裁判所の下した刑期に関して意見はありませんでしたが、犯罪所得の計算方法に関しては不服とし、検察に控訴を求めました。検察による控訴が行われた後、告訴人は裁判所に対して、一審において既に提出している証拠であるネットオークション上に公開されている「販売数量」に注意するよう求めた他、呉氏がネットオークション上で使用していたアカウントの売り手評価のうち、「任天堂ファミコン」または「任天堂ファミコン模倣品」に関する売り手評価、計1,200件を整理し、裁判所に提出しました。

 智慧財産法院(知的財産裁判所)は18年12月、次のような理由から、ネットオークションの評価記録から犯罪所得を計算することはできないとの判決を下しました。

・告訴人の提出した被告人のネットオークション上における評価は、たとえそれが係争製品の評価だとしても、評価を行った評価者が確実に係争製品を購入しており、かつ購入したものが模倣品(海賊版)であることを「一つ一つ証明できない」。したがって、ネットオークション上の評価の数量から被告人の犯罪所得を計算することはできない。

取り締まり成果に打撃も

 知的財産裁判所のこのような判断と法律的見解は間違っているだけでなく、極めて不当なものと言わざるを得ません。

1.犯罪所得の金額は、裁判所がその職権に基づいて認定する事項です。ネットオークション上における売り手の評価は、オークションサイト側が日常の業務として作成した記録であり、その内容は同企業の会計記録と同様のものが記載されているのですから、法定の証拠です。裁判所がそれを採択しないということであれば、何らかの説得力ある説明が必要です。「一つ一つ証明できない」というのは証拠を採択しない理由とはなり得ません。

2.ネットオークション上における売り手評価は、最も直接的、システム的、かつ調査が容易な取引回数の証明です。知的財産裁判所の見解によれば、ネットオークション上における売り手評価から犯罪所得の証明を行うことはできないとのことですが、それは同時に犯罪回数の証明もできないことになります。今後、検察がネットオークション上における犯罪を取り締まるに当たっては、どのように犯罪行為の存在を証明すればよいのでしょう。

3.司法機関による犯罪取り締まりを強化するため、刑事訴訟法を改正し導入された犯罪所得の没収制度ですが、全土の知的財産刑事事件の二審管轄裁判所である知的財産裁判所での今回の判決が、最高法院(最高裁判所)で覆されなければ、全土で同類の事件を判断する一審裁判所は、今後、ネットオークション上の評価から犯罪所得を計算することができないことになります。それは、立法機関である国会(立法院)が司法機関に期待した成果、すなわち「犯罪所得を没収(追徴)することで犯罪取り締まりを強化する」という成果を挙げることが難しくなり、大打撃を被ることを意味しています。

徐宏昇弁護士

徐宏昇弁護士

徐宏昇弁護士事務所

1991年に徐宏昇法律事務所を設立。全友電脳や台湾IBMでの業務を歴任。10年に鴻海精密工業との特許権侵害訴訟、12年に米ダウ・ケミカルとの営業秘密に関わる刑事訴訟で勝訴判決を獲得するなど、知的財産分野のエキスパート。専門は国際商務法律、知的財産権出願、特許侵害訴訟、模倣品取り締まり。著書に特許法案例集の『進歩の発明v.進歩の判決』。EMAIL:hiteklaw@hiteklaw.tw
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