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記事番号:T00082910
2019年4月10日16:07

 他人の商標の「横取り登録」は、常に同じ図案を登録してしまうこととは限りません。経済部智慧財産局(知的財産局)の商標審査官たちも、最近ではグーグルなどの検索エンジンを使用することで、過去には密室審査と揶揄(やゆ)された審査方法の欠点を改善してきていますが、横取り登録を狙う人たちにとってはまだまだ「隙」だらけです。

 台湾愛邦仕実業有限公司(以下「エバンス社」)は、2013年8月に動物の飼料などへの使用を指定した商標「A★Star Bones」を出願し、14年4月に商標を取得しました。しかし、米国企業のNatural Polymer International Corporation(以下「ポリマー社」)が、同商標は同社の登録商標「N-Bone」と近似しており、関連消費者を誤認、混交させることを理由として15年6月に同商標に対して無効審判を申し立てた(評定)ため、知的財産局は16年3月にエバンス社の商標を取り消しました。

 エバンス社はその後訴願を提起するも退けられたため、知的財産裁判所に対して無効審判の結果(商標の取り消し)の取り消しを求めて訴訟を提起しました。しかし同訴訟も17年11月に敗訴したため、最後は最高行政裁判所に対して上告するも18年11月に、訴えは退けられました。

「出どころの違いは明白」

 一連の行政救済プロセスにおけるエバンス社の主張は次のようなものでした。

1.係争商標(エバンス側の商標)は、「A★star」と「Bones」が二列に組み合わさって構成されているのに対し、ポリマー社の商標は「N」「-」「Bone」との組み合わせとなっている。「Bone」とは骨を意味し、両社が商標を使用し販売している「犬用デンタルボーングッズ」の商品外観、効能、特性を説明するものであるため、それを商標が近似を構成しているかどうかの判断要素とすることはできない。また、両商標は同部分を除けば、全く近似を構成しない。

2.エバンス社は13年より台湾において1,000軒を超えるペットショップで販売している他、インターネットでの販売も行っており、年間売上高も数千万台湾元(1元=約3.6円)に上ることから、係争商標は関連消費者にとっては知名度があり、消費者はエバンス社の商品とポリマー社の商品が異なる出どころであることを認識している。

 これに対して最高行政裁判所は珍しく多くの紙面を割いて、次のような理由で同社の主張を退けました。

1.組み合わされた、または複合された文字の商標を観察する際には、同商標が主要な用語とそれを形容する部分とに分かれるかどうかを、まず確認しなければならない。もし、それらの区別があるのであれば、原則として主要な用語をもって比較の対象としなければならない。しかし、係争商標の文字の組み合わせが、全て商品の品質または特性を説明している用語であるため、本件「Bones」についても重要な比較の対象となる。

2.係争商標における「A★star」の部分は、商品が優良であることを示すものであり、係争商標は「A★star」と「Bones」を上下で組み合わせることで、「AクラスのBones(骨:ボーン)」という意味を構成している。また、両商標の頭文字「A」と「N」はその発音が近いことからも、両商標が近似を構成していることが判断できる。

3.外国語を使用した商標が、説明的な意味を持つ文字によって構成されている場合、同商標が識別性を有するかどうかについては、組み合わされた文字全体を考慮の対象としなければならない。もし、組み合わされた文字が、文字本来の個別の説明の意味と異なるものとなっており、消費者に本来とは異なる意味を与えることで、他の商品の出どころと区別がつくのであれば、それは識別性を有すると判断される。

4.係争商標は「A★star」と「Bones」の組み合わせから成っており、その意味するところは「優良な骨(ボーン)」であるのだから、もともとの個別の文字の意味と異なったものとなってはおらず、識別性は比較的弱い。それに比べ、「N-Bone」は、新たに創作された文字の組み合わせであり、もともとの個別の文字の意味とは異なったものとなっており、識別性は比較的強い。原判決がこのような判断により、両商標は関連消費者を誤認、混交させる恐れがあると判断したことは、適法である。

悪意ありと判断

5.関連消費者に商品の出どころを誤認、混交させることを知りながら、商標を出願登録した場合、その出願そのものは善意であるとは見なされない。エバンス社と同じ責任者が経営する阿曼特公司は、08年の段階で同様の商品に対して「A-Bones」を商標登録したが、ポリマー社が無効審判を成立させ、また知的財産裁判所と最高行政裁判所も14年に同社の訴えを退ける判決を下している。これらのことからみても、エバンス社が阿曼特公司が行政救済プロセスを行っている最中に、別途係争商標を出願したことには悪意がある。

 「商標の出願者が善意であるかどうか」は、両商標が混交される恐れがあるかどうかを判断するための要素の一つですが、本件においては、エバンス社の悪意は、同社敗訴の最も大きな理由の一つだったことは間違いありません。しかし、最高行政裁判所は、一方では「N-Bone」は既に「もともとの文字『bone』の意味と異なったものとなっている」としたにもかかわらず、他方では両商標は共に「Bone」を使用しているため近似を構成するという、矛盾した理由をもって判決を下してしまっています。

徐宏昇弁護士

徐宏昇弁護士

徐宏昇弁護士事務所

1991年に徐宏昇法律事務所を設立。全友電脳や台湾IBMでの業務を歴任。10年に鴻海精密工業との特許権侵害訴訟、12年に米ダウ・ケミカルとの営業秘密に関わる刑事訴訟で勝訴判決を獲得するなど、知的財産分野のエキスパート。専門は国際商務法律、知的財産権出願、特許侵害訴訟、模倣品取り締まり。著書に特許法案例集の『進歩の発明v.進歩の判決』。EMAIL:hiteklaw@hiteklaw.tw
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