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労務コンサルタントの
事件簿64「従業員は店舗異動を
拒否できるのか!?」


コラム 人事労務 作成日:2023年2月22日

労務コンサルタントの事件簿

労務コンサルタントの
事件簿64「従業員は店舗異動を
拒否できるのか!?」

記事番号:T00109254

 日本では会社に人事異動を命じる権利がある旨を就業規則などで定めている場合、従業員はこれに従う義務があり、原則として人事異動を拒否することはできないとされています。人事異動命令に対する拒否は、組織の秩序を乱す重大な問題であり、懲戒事由になることが原則です。但し、台湾の労働基準法上、異動は労働条件の変更にあたるため、就業規則で一方的に強制することはできません。従って、台湾人は「異動は基本的に断れるもの」と理解していることが多く、異動問題には多くの経営者が頭を悩ませています。

◎事例
店長:呉さん、今度信義区に新しく店舗がオープンするだろう?今、増員募集をしているが、是非、経験豊富な呉さんにもそこで現場を支えてもらいたいと思ってる。そこで時期は来月を予定しているが、どうかな?
(実は前々から希望者を募っていたが、慣れない場所での挑戦は怖いのか手を挙げる者はいなかったのだ...。)
呉さん:え?勤務地も遠くなりますし、家庭の事情で無理です。
店長:家庭の事情とは何かな?
呉さん:うん…。プライベートの事情ですので…。
店長:就業規則でも会社の人事異動は正当な理由がない限り拒否してはならないと規定しているから、理由を聞かせてくれないとこちらとしても困ったなぁ。
呉さん:いいえ。台湾では異動は本人の同意が必要です。それに不利益を受ける場合、労働者は拒否することが認められています。
店長:その心配はないよ。給与は変わらないし、通勤時間が長くなるようだったら交通費も出す予定だ。
呉さん:ですが新店舗は色々と大変です。なのに給与が変わらないのは実質不利益に値します。
店長:(おや、これは家庭の事情ではなくて、単に慣れない場所への異動が嫌なのでは?台湾ではこのような理由で異動を拒否しても良いのか!?)

◎解説
 小売業や飲食業では、店舗異動は普通にあることですので、店長はこの一件で大きな衝撃を受けたのです。
 さて、台湾では店舗異動に必ず本人の同意が必要なのでしょうか?その答えは、原則としてイエスです。労働基準法第10–1条により、異動は労働契約に違反しない前提で行わなければならないと定められています。つまり、入社時に会社と交わした労働契約書で勤務地や職種が限定されており、従業員が該当外のエリアや職種に異動を求められた場合、厳密には契約違反として拒否することが可能となります。また、今回のように、異動の必要が発生した際に、その都度協議するとなると、なかなか同意を得られないことが多いです。そのため、店舗異動の可能性がある職種の場合は、あらかじめ労働契約で同意を得ておことが重要なポイントとなります。さらに、制度上異動がしやすい環境を整えるのも有効な手段の一つです。人事制度は自社の労働環境、市場特性、ビジネスモデル、社員に求めることなどを踏まえたうえで、その企業にあったものを設計していく必要があります。ワイズコンサルティングでは、人事制度に関するご相談を随時受け付けています。この機に自社の人事制度について見直しを検討している方は、是非一度ご相談下さい。

 

 

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