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タピオカミルクティーで有名な春水堂人文茶館、通称春水堂は現在台湾に46店、日本に11店を展開しています。1983年に台中市四維街に1号店をオープン、当初は陽羨茶行という名前で、後に春水堂に改名しました。創業者の劉漢介氏は、幼い頃より父親からお茶の薫陶を受け、各時代の中国茶芸、日本の茶道、台湾の工夫茶などの研究を重ねます。
パールミルクティーは今やどこのドリンクスタンドでも売っていますが、春水堂はおいしさと優雅な雰囲気で他の追随を許さないブランドとなっています(YSN)
当時、暑い気候の台湾ではコーラやサイダーがよく飲まれる一方で、お茶は屋台で売る飲み物でした。これに不満だった劉氏は、茶を優雅な雰囲気で楽しめるようにと、宋朝の茶館をイメージした店舗をオープンします。西洋風のカウンターで、スノーカップに入れた新しいお茶「バブルティー(泡沫紅茶)」を提供。冷えて甘みのある味は、お茶といえば熱いものと決まっていた当時の常識をくつがし、ブームを巻き起こしました。
春水堂は「パールミルクティー(珍珠奶茶)の元祖」を名乗っています(注)。台湾を代表するこの「国民的ドリンク」は、87年、春水堂で店長を務めていた林秀慧氏が、タピオカをミルクティーやレモンティーに入れて店員たちに振る舞ったのが始まりとのことです。おいしく、飲みやすかったことから、後にタピオカを「パール(真珠)」と名付けて売り出しました。これが消費者から大歓迎を受けたのです。春水堂は13年7月に日本に進出しますが、パールミルクティーが日本でも大人気となったことはよく知られています。1日当たり最高で1,000杯が売れるとのことで、春水堂いわく「日本人から『一番おいしいパールミルクティー』というイメージを持たれるようになった」とのことです。
人材に最適の職位を
春水堂の従業員がドリンクを扱うには「ティーマスター」の試験に合格する必要があります。毎回同じ味を出すためには、お茶の色や香り、味、温度の変化、茶葉の量の見極め、ショ糖の濃度などに正確な判断力が必要で、お茶の入れ方から始まって、茶葉の知識、味覚、嗅覚がテストされます。
このティーマスター、春水堂の人事組織では末端に位置しており、その上は組長、さらに副店長、店長、マネジャー、エリアマネジャーと昇格していきます。劉氏は「人材に応じて仕事を設ける」「仕事によって人材を用いる」の2点を人材活用のモットーとしており、普段から従業員一人一人の個性と特長を把握し、最適の職位を与えることを心掛けています。例えば店長にふさわしい人材が現れた場合、その人材の個性と店の営業状況に応じて、年棒制か利益中心制を選んでもらいます。年棒制を選択した場合は希望する年収額と目標を定め、利益中心制の場合は業績を評価した上で希望する自社株支給方式を決定します。
店長の職位は、春水堂の人事システムではまだ育成の対象です。店長は自分のチームを作り上げ、その中から2人の店長を育成することがマネジャー昇格の条件です。マネジャーがエリアマネジャーに昇格するには、5店舗を統括する必要があります。
店は1つのファミリー
こうした人材育成と昇進制度を支えるもう一つの柱が「師弟制」です。春水堂は1人の新入社員に対し、教育係である「マスター」を1人付けます。マスターは、専門技術を教えるのはもちろん、心理、情緒面でのサポートも行います。店長は店内の「大マスター」であり、全ての従業員に心を配ります。春水堂はそれぞれの店が1つのファミリーであり、そのメンバーが師弟関係で成り立っていることが同社の発展の原動力です。
春水堂は近年、台湾全土で260店以上のチェーンとなったテイクアウト店の「茶湯会」など、ファミリーブランドの展開に注力しています。台湾人のお茶の飲み方を変えた春水堂は、これからもさまざまなアイデアによって、優雅な趣きを消費者に提供し、ビジネスチャンスを創造していくことでしょう。
(注)台湾では「パールミルクティーの元祖」を名乗る店は春水堂の他、台南市発祥の翰林茶館があります。両社は法廷で争ったものの、いずれも特許や商標権を獲得できませんでした。パールミルクティーはそれゆえに台湾の国民的ドリンクになったといえます。
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講師 ワイズコンサルティング シニアコンサルタント 荘建中
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荘建中
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