記事番号:T00074130
薛長興工業(SHEICO)は、スキューバダイビング用ウエットスーツの受託生産最大手で、世界市場シェアは65%です。本社は宜蘭県、工場は台湾の他、中国、ベトナム、タイ、カンボジアの5カ国・地域にあります。有名なウエットスーツブランド「ビラボン」「オニール」「リップカール」「NRS」はいずれもSHEICOの顧客で、年間450万着生産し、売上高は4億米ドルに上ります。
今年公開された、ライフガード(救命隊員)たちの活躍を描いた米国映画「ベイウオッチ」で主役が身に着けていたウエットスーツもSHEICOが作りました。
シューズ卸売りで起業
SHEICOは1968年設立です。創業者の薛丕拱氏は当時、安定した収入が得られる教師をしていましたが、家計を助けるために教師を辞め、宜蘭県でシューズの卸売りを始めました。薛氏はビジネスセンスがあり、宜蘭県は林業が盛んなことに目を付けて、取り扱い商品をシューズから足袋に切り替えました。また自社ブランド「長興牌」を創設し、宜蘭県は雨が多いことから、レインコートや雨靴までラインアップを広げました。
その後、台湾市場は規模が小さく、ライバルも増えてきたことから、海外市場進出を決意しました。ちょうど79年、次男の敏誠氏(現総経理)が独ミュンヘンのスポーツ用品展覧会から持ち帰ってきたダイビングブーツが、当時販売していた雨靴と素材が類似していることに気づき、ダイビング用品に参入しました。
日本から初受注
79年末、日本からダイビングブーツ500足、総額3,000米ドルの受注を獲得しました。これがSHEICOにとって初の海外からの受注でした。
当時、ダイビングブーツの生地は台湾で生産しておらず、全て日本から輸入していました。しかし、たびたび入荷が遅れ、コストがかさんでいました。そこで敏誠氏は、生地の自社開発を薛氏に提案しました。2年後の83年、クロロプレンゴム生地の開発に成功し、日本からの輸入と比べ30%のコストダウンを実現しました。
これにより、SHEICOは世界で初めて生地から製品までの一貫生産体制を構築し、高品質、低価格で、製品のカスタマイズも可能となりました。顧客から高い評価を得て、欧米の大手メーカーなどから受注が相次ぎました。
火災で全損、3日で再稼働
好調の一方、96年9月には宜蘭県の本社が2日連続で放火され、工場棟、設備が全損してしまいました。
薛氏はすぐに銀行で融資を取り付け、高価でも惜しまず中古設備を買い集め、火災の3日後には屋外に設置したテントで1本目の生産ラインを稼働しました。1カ月後に生産能力の70%を回復し、3カ月後には操業を全面再開しました。
こんなに短期間で復旧できたのは、薛氏のリーダーシップだけでなく、従業員の協力のおかげでした。しかも従業員は火災発生後、給与支給日を3カ月遅らせ、支給額を20%カットするよう申し出ました。薛氏は深く感動しましたが、期日通り全額を支給し、さらには慰労の意を込めて、翌年の春節ボーナス(年終奨金)を0.5カ月分上乗せして支給しました。薛氏が「会社にとって一番の資産は人」と考えていることがよく分かるエピソードです。
現在、薛氏は88歳で、総経理の敏誠氏がSHEICOを率いています。従業員は1万1,000人余り。台湾で研究開発(R&D)、受注を行い、生産を行う海外工場では台湾人が幹部を務めることで、核心技術の流出を防ぎ、競争力を維持しています。
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