記事番号:T00070157
スーパーマーケット最大手、全聯福利中心(PXマート)総裁としての徐重仁氏の理念について、前回(https://www.ys-consulting.com.tw/column/69548.html)お伝えしました。今回は、米国の経営学者ジョン・コッター氏が提唱した「変革のための8段階のプロセス」を使って、徐氏の3年間の改革を振り返ってみましょう。
ジョン・コッターの8段階のプロセス
1)危機意識を高める
2)変革推進チームをつくる
3)適切なビジョンを掲げる
4)ビジョンを周知徹底する
5)自発的な行動を促す
6)短期的な成果を実現する
7)さらに変革を進める
8)変革を根づかせる
1.危機意識と明確なビジョン
徐氏が2014年1月に総裁に就任した当時、全聯は既に設立15年で、従業員は仕事のやり方が固まっていました。その上、1店舗当たりの業績が下り坂にあり、「質」の改革が迫られていました。
徐氏は、17年までに店舗数1,000店(当時約700店)、20年までに売上高2,000億台湾元という大きな目標を掲げました。目標と方向をはっきりと示すことで、従業員に変わらなければならないと感じさせました。
2.改革チームの構築
徐氏は総裁就任2カ月後、蔡篤昌氏を全聯の総経理に迎え入れました。蔡氏は▽セブン-イレブン▽ドラッグストアの康是美(コスメッド)▽生活雑貨の台湾無印良品(MUJI台湾)──などの総経理を歴任しており、さまざまな小売業の運営やマーケティング経験がありました。
16年2月には、セブン-イレブンを展開する統一超商(プレジデント・チェーンストア)営運長(COO)や喫茶店チェーン「85度C」総経理を歴任し、マーケティング、物流、システム改革などに強い謝健南氏を執行長(CEO)に任命しました。
長い間セブン-イレブンで協力し合い、気心も知れてた3人による改革チーム結成は、小売業界に衝撃をもたらしました。
3.十分なコミュニケーション
どんな改革であっても、必ず反対があるものです。例えば、全聯で従来よく売れていた加工食品の棚を減らして生鮮食品を増やす際にも、反対の声が出ました。そんなとき徐氏は、どうしてやるべきなのかを説明し、話し合いを重ねました。
4.トップからの信頼と権限委譲
全聯は15年、100億元を投じた物流センターが完成。また、店舗を改装するなどし、利益率が低下したことがありました。ただこれは、徐氏が林敏雄董事長から厚い信頼を得ており、権限を与えられ、失敗を恐れずに新しいことに挑むことができた証拠です。改革の成功の理由の一つでしょう。
5.短期的な成果の実現
徐氏は、すぐに実感できる成果が出る改革も行いました。総裁就任の4カ月後、店舗に対し「整理、整頓、清潔、清掃、しつけ」の「5S」を命じました。このほか、店内の通路は来店客のために空ける、来店客の質問に丁寧に答えるなどサービスを強化しました。
こうした改革はお金がかからないのに成果が出るのは早いものです。14年5月には1店舗当たりの売上高がプラス成長に転じました。その上、改革に反対する声を抑える効果もありました。
特に大きく変えたのは、新店舗だけでなく既存店舗の改装でも、目に付きやすい入り口近くに、従来の加工食品のセール品の代わりに、青果や果物を積み上げたことです。目に見える変化だった上、レシピ提供なども行ったので、自炊するために食材を買う客が増えました。
徐氏のこうした改革はまだ「投資の段階」と言えます。今後どのように、全聯を成長させ、台湾に「第2次流通革命」を起こすのか、目が離せません。
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