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台湾水泥(台湾セメント、台泥)の辜成允董事長(当時)が今年1月21日夜、台北晶華酒店(リージェント台北、台北市中山区)で友人の披露宴に参加した際、3階の階段から転落して頭を強く打ち、23日未明に亡くなりました。享年63歳でした。
台湾経済への貢献も評価されている(中央社)
辜成允氏は「台湾5大名家」の一つに数えられる、彰化県鹿港を出身地とする「辜家」の第3世代です。台湾セメント董事長や海峡交流基金会(海基会)董事長を務めた辜振甫氏(2005年没)の次男として54年に生まれました。幼いころは後継ぎとはみられておらず、董事長職に就いたのは兄の辜啓允氏が48歳で病没した翌々年03年でした。
台湾セメントは当時、300億台湾元の負債を抱えていました。辜氏は、前進しようと幹部に何度も訴え、5年以上かけて大胆な組織改革を実行しました。株価は一時4倍以上の49.8元まで上昇しました。
トビ式管理と鉄腕
台湾セメントは46年に設立され、62年の上場以降、赤字になったことがありません。そのため社員の間には、従来型産業なので利益が高くなくても十分というぬるま湯ムードが漂っていました。
辜氏は董事長就任後、社員に危機感を持たせようとリストラを進めました。不採算事業の整理、大幅なコスト削減、保守勢力の一掃に着手したほか、中国市場進出を決め、離職者は一時100人を数えました。
それでも改革を推進した辜氏のやり方は、「鷹(トビ)式管理」「鉄腕」といわれています。「鷹式管理」は、鳥のトビのように高所から全体を俯瞰し、的確に見極め、スピーディーに実行する管理を、「鉄腕」は徹底した人員整理を指しています。
数字より人を重視
台湾セメントは従来、年功序列で和を重んじる企業文化でした。しかし辜氏は、若手の幹部候補に対し、パフォーマンスが良ければ奨励金を支給し、昇級させることで、10年余りで30歳台の工場長を数多く誕生させました。一方で、不適任だったり、会社の理念に賛同しない社員は容赦なく解雇しました。辜氏は「米プロバスケットボールリーグ(NBA)と同じで、できの悪いメンバーは入れ替える」と語っています。
また辜氏は、これまでの社内の階層制度も壊しました。例えば、下級管理職を伴って会議に出席する上級管理職に対し、「何でも下級管理職に聞いているが、あなたの役割は何なのか。上司であれば部下以上に理解してもらわないと困る」と意見しました。その上で、下級管理職が不在の際は、その部下ではなく、上級管理職が代行し、下級管理職が解決できない問題を解決してほしいと話したのです。
このほか、業績数値を追求する経営者は多いですが、辜氏は数字でなく、数字を作った人を管理するべきと考えていました。数字が良かろうと悪かろうと、管理や改善を行うのは人であり、社員や会社がやるべきことをやれば、数字は自然と付いてくると思っていたからです。
台湾セメントは近年、バイオテクノロジーや環境分野にも参入しました。例えば、傘下企業がごみ焼却施設6カ所を運営しており、台湾の5人に1人のごみを処理しています。
辜氏は不幸にも急死しましたが、こうした数々の功績は、社員の心に残り続けることでしょう。
荘建中
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