記事番号:T00104783
華邦電子(ウィンボンド・エレクトロニクス)は、NOR型フラッシュメモリー市場シェア35%で世界首位です。DRAMは世界5位、マイクロコントローラ(MCU)は世界7位です。
2021年の連結売上高は996億台湾元(約4600億円)で前年比64.1%増加しました。
2代目経営者
焦佑鈞氏は1956年生まれ。交通大学の電信工程系を卒業し、米国のワシントン大学で電機の修士号を取得しました。
ウィンボンドは1987年設立。焦佑鈞氏は、2代目経営者です。30代のときに、父親の焦廷標氏からウィンボンド董事長の座を引き継ぎました。
工業技術研究院(工研院、ITRI)出身の200人余りの従業員を率いて、有線電話やコンピューターなどの消費者向け電子製品に搭載するロジックICをターゲットに定め、台湾最大のIDM(垂直統合型の半導体メーカー)となりました。
1993年、SRAMでメモリーに参入しました。1995年には、NOR型フラッシュメモリーにも参入し、東芝と、汎用DRAMで提携しました。ウィンボンドは、台湾で唯一、DRAMとフラッシュメモリーの自社技術を持つサプライヤーとなり、売上高も急成長しました。
2008年、世界金融危機のあおりを受け、ウィンボンドは、需要の規模は大きいものの、収益は良くない汎用DRAMから撤退し、損失100億元を計上しました。
焦佑鈞氏は、挫折しても、あきらめません。努力で克服し、優位なところを見つけ出し、再出発します。父親の焦廷標氏から受け継がれた家訓「大きくやるより小さくやれ。小さくやるより良くやれ」を心にとめ、経営は、集中と選択が必要だと学びました。何でもやるのでなく、やることを選ばないと、すぐに淘汰(とうた)されてしまいます。
ウィンボンドは、自社のポジショニングを再設定し、携帯電話やウエアラブル(装着型)端末、自動車など特殊用途のメモリーを供給し、あらゆるメモリーに対応できるようにしました。
マッキンゼー式がヒントに
2018年、台北富邦銀行の陳聖徳・董事長との会食で、台湾企業のリーダーが経営上で直面する課題についての話題になりました。
陳聖徳・董事長は、M&A(合併・買収)は台湾企業が成長を追求する上で、考えるべき方法だと提言しました。「The Granularity of Growth(邦題・マッキンゼー式最強の成長戦略)」を引用し、優秀な企業の成長は、60%が自社の努力、30%が企業買収で、市場シェア拡大は5%に過ぎないと焦佑鈞氏に告げました。
焦佑鈞氏にとって、父親から学んだ家訓とは違うものの、ビジネスモデルを考え直し、M&Aを検討するきっかけとなりました。
2019年11月、ウィンボンド傘下の新唐科技(ヌヴォトン・テクノロジー)が、パナソニックの半導体事業会社、パナソニックセミコンダクターソリューションズ(PSCS)を76億元で買収しました。ヌヴォトンの年間売上高は100億元余りから、400億元余りへと、4倍に増えました。
失敗を容認
焦佑鈞氏は、イノベーションを重視しています。守備面でいうと、黒字企業でも、イノベーションなしには、同業他社に受注を奪われ、最後には利益が出なくなってしまいます。攻撃面では、顧客のために新しいアイデアを考えることが、自社の価値創造になります。
焦佑鈞氏は、イノベーションにとって重要なのは、失敗を容認することだと考えています。ウィンボンドにも失敗事例は少なくありません。焦佑鈞氏は、管理上の失敗には必ず改善を求めるものの、イノベーションの失敗は構う必要はないと話しています。これがウィンボンドの非常に重要な企業文化です。
育児手当で人材引き留め
焦佑鈞氏は、家庭を大切にしています。2011年4月から、育児手当を導入し、子供が4歳になるまで子供1人当たり月5000元を支給しています。最大で子供2人24万元を支給します。2020年までに、1092人が育児手当を申請しました。
焦佑鈞氏は、育児手当を受け取った従業員の離職率は、全社平均より低く、人材引き留めの効果があり、自社を「幸福企業」にできると語っています。
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