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第199回 エースピード董事長 林鴻明氏/台湾


コラム 経営 作成日:2023年2月17日

台湾流経営策略 台湾の名経営者

第199回 エースピード董事長 林鴻明氏/台湾

記事番号:T00107479

 信驊科技(エースピード・テクノロジー)は、サーバーを遠隔管理するためのベースボード管理コントローラー(BMC)の世界最大手で、市場シェア72%を誇ります。2022年の連結売上高は前年比43.2%増の52億1000万台湾元(約230億円)で過去最高、粗利益率は60%を超えました。

 主要顧客は米グーグル、アマゾン、メタ(旧フェイスブック)、マイクロソフト(MS)、中国の阿里巴巴集団(アリババ・グループ)などクラウド大手です。

 23年1月初旬には、株価が一時2300元を超え、大立光電(ラーガン・プレシジョン)を抜いて、台湾株式市場の王者となりました。

失業で起業、BMC世界一に

 林鴻明氏は1984年に清華大学電機系を卒業し、93年に矽統科技(SiS)に入社しました。台湾の半導体産業の「黄金の10年」に、エンジニアから副総経理まで上り詰めました。

 04年、組織改革に伴い、10年余りを捧げたSISを追われ、当時43歳で林氏は失業しました。中年の危機(ミドルライフクライシス)に直面したことで、起業を決意しました。

 林氏は、真面目にやっていれば人脈は自然にできるもので、顧客、同僚、取引先、部下さえも、将来のチャンスのキーパーソンになり得ると考えています。同年、エースピード・テクノロジーを設立し、過去に意気投合した仲間と共に理想を追い掛けることにしました。

 エースピード設立から1年後、創業メンバーが株式をあまり持っていないことに気づき、林氏は保有していた株式の半数以上を従業員に譲り、「従業員がオーナーの会社」を実現しました。

 林氏は、大手メーカーが参入したがらないサーバーICの研究開発(R&D)に取り組みました。創業初期は主に、サーバー管理と集中型コンピューティング向けチップの研究開発を手掛けました。

 05年10月、初めての製品となる初代サーバー管理チップをリリースし、世界の名だたる大手メーカーに採用されました。

 クラウド市場の黎明期も、世界の大手メーカーはエースピードの実力を見抜いていました。05年、半導体大手の米ブロードコムが2000万米ドルで買収を持ち掛けてきました。最終的には、価格がネックで、合意に至りませんでした。

 16年には逆に、林氏がブロードコムの子会社、エミュレックス(Emulex)の遠隔管理チップ事業を10億元で買収し、エースピードは世界一のBMCサプライヤーとなりました。

3つの参入障壁

 林氏は、ニッチな製品を作れば、3つの参入障壁があると言います。

 1つ目の参入障壁は、BMCは投資額と生産額の「コストパフォーマンスが悪い」。大手メーカーは手を出したがりません。

 2つ目の参入障壁は、「投資コストが高い」。製造プロセスが精密になるほど、投資コストがかかります。

 3つ目の参入障壁は、「先発優位」。インテルが2~3年後に発売する新製品に、エースピードのBMCが組み込まれており、ライバルはエースピードより2年以上遅れを取ります。

誰に対しても誠実に

 林氏は人材育成を重視すると同時に、少数精鋭主義で、5年以上の経験がある研究開発のベテランしか採用しません。

 年間売上高が50億元以上となった現在でも、従業員はわずか100人で、1人当たりの売上高は約5000万元に上ります。

 林氏がリーダーとして最も重視しているのは誠実さです。従業員、顧客、株主、投資家、サプライヤーなど誰に対しても、誠実に向き合います。

 従業員に報酬を約束すれば、必ず実行します。皆に信頼されれば、会社は自然と発展するのです。一方、従業員のことも信頼し、権限を与えます。

 エースピードは13年に1株110元で上場し、業績とともに株価も順調に上昇し、22年には1株3675元と、過去最高になりました。

コロナ後も商機

 林氏は、新型コロナウイルス後、オンライン会議が増えると見込み、映像処理専用チップ「Cupola360」をリリースしました。

 Cupola360は、ソースネクスト(東京都港区、松田憲幸代表取締役兼CEO)の360度カメラ付きリモート会議の専用デバイス「KAIGIO CAM360(カイギオ・カム360)」に採用されました。会議中、誰かが発言すると、発言者を自動フォーカスし、対面のようなスムーズな会議を実現します。

 

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荘建中

荘建中

ワイズコンサルティング社高級顧問

 年間200回以上のセミナー講演を行い、法律、経営、人事、財務、人材育成など、多岐にわたるテーマを幅広く扱っている。なかでも難解な内容をわかりやすく伝えることに定評があり、参加者から高い評価を得ている。ワイズのエース講師として、どんなテーマにも柔軟に対応でき、ユーモア有る話術で魅力的な講演が可能。(言語)中国語◎

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