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第201回 イーメモリー創業者 徐清祥氏/台湾


コラム 経営 作成日:2023年4月14日

台湾流経営策略 台湾の名経営者

第201回 イーメモリー創業者 徐清祥氏/台湾

記事番号:T00108427

 力旺電子(イーメモリー・テクノロジー)は、世界最大のロジック製造プロセスでの不揮発性メモリーのシリコンIP(知的財産)ベンダーです。ファウンドリー、デバイスメーカー、IC設計会社などにシリコンIPを提供しています。

 顧客は、ファウンドリー最大手の台湾積体電路製造(TSMC)や聯華電子(UMC)など、世界に300社以上。2022年の連結売上高は前年比36.1%増の32億1700万台湾元(約140億円)、1株当たり純利益(EPS)は21.61元でした。

座右の銘「言い訳しない」

 イーメモリー創業者の徐清祥氏は1959年に生まれました。新竹市の清華大学電機系を卒業後、87年に米国で博士号を取得しました。92年、母校に請われ、清華大学電気系の副教授に就任し、4年後に教授に昇格、98年には電子工程研究所の所長に任命されました。

 座右の銘は、学業、ビジネス共に「成功の道を探しても、失敗の言い訳は探さない」。失敗した時、環境のせいなどと言い訳を探すのでなく、問題を解決する方法を探すべきと考えています。

学術界を飛び出し起業

 清華大学の副教授に就任する3~4年前は、仕事に没頭し、毎日午前3時、4時に帰宅する生活を送っていました。仕事のやり過ぎで、胃潰瘍や十二指腸潰瘍を患った後は、医師と家族の助言で、午前2時までには帰宅するようになりました。

 新技術を見つければ、すぐ特許を出願していたため、徐氏は半導体関連の特許を個人で231件保有しており、学術論文は120本以上発表しました。

 もし学術界に残っていれば、徐氏は富や名声をほしいがままにしていたはずです。それでも、清華大学の教授の座を捨て、世界のフラッシュメモリー市場の大幅成長を見込んで、起業する道を選びました。

メモリー製造から転換

 イーメモリーは2000年に設立しました。当初はフラッシュメモリーを0.25マイクロメートルで製造し、米インテルと並んでいました。その後、インテルは、イーメモリーを大きく上回るペースで製造技術を発展させ、徐氏は現実を受け入れ、泣く泣くフラッシュメモリー製造を諦めました。

 徐氏は、半導体デバイスでの強みを活かし、ロジック製造プロセスで非揮発性メモリーを製造する技術を発明しました。従来と比べ、フォトマスク工程を10回も省略できました。このライセンスを他社に供与するビジネスモデルで、粗利益率の低い受託生産から脱却しました。

 02年、三菱が埋め込み製品にイーメモリーのシリコンIPを導入したのをきっかけに、▽TSMC、▽UMC、▽東芝、▽NEC、▽富士通、▽ルネサス・エレクトロニクス──などの半導体メーカー大手が続々と採用するようになり、イーメモリーは世界首位になりました。

学者肌で失敗も

 もともと教授だった徐氏の起業には欠点がありました。こだわりが強すぎ、融通が効かないことです。

 徐氏はある日、営業担当者に同行し、顧客を訪問しました。すると顧客が、イーメモリーのライセンス供与を受けるから、イーメモリーの全ての特許を使わせてほしいと言い出しました。聞くや否や、徐氏は「あり得ない!」と断り、場が凍りつきました。後日、営業担当者から「もう顧客の訪問に同行しないでほしい」と言われてしまいました。

 徐氏は反省しました。営業担当者というのは、顧客にノーと断ることを嫌い、たとえ不可能でも「持ち帰って検討します」と言うのです。徐氏は学者出身で、技術と特許に自信があり、自分を抑えられず、営業担当者に迷惑をかけてしまいました。このことから、徐氏は、自分の癖を自覚し、融通や回り道することを学びました。

 徐氏は、グローバルな舞台で活躍できる、息の長いビジネスモデルを生み出しました。台湾のIC産業の奇跡の一つと言われています。

 今年の成長エンジンは、情報セキュリティ関連のライセンス収入と見込んでいます。特に、チップの個体認証を行う技術、PUF(物理複製困難関数)関連のライセンスが大幅成長するとみています。

 

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荘建中

荘建中

ワイズコンサルティング社高級顧問

 年間200回以上のセミナー講演を行い、法律、経営、人事、財務、人材育成など、多岐にわたるテーマを幅広く扱っている。なかでも難解な内容をわかりやすく伝えることに定評があり、参加者から高い評価を得ている。ワイズのエース講師として、どんなテーマにも柔軟に対応でき、ユーモア有る話術で魅力的な講演が可能。(言語)中国語◎

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