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第205回 AMD リサ・スーCEO/台湾


コラム 経営 作成日:2023年8月18日

台湾流経営策略 台湾の名経営者

第205回 AMD リサ・スーCEO/台湾

記事番号:T00110623

 グラフィックスプロセッサー(GPU)大手、エヌビディア(Nvidia)創業者の黄仁勲(ジェンスン・フアン)氏が5月に訪台し、AI(人工知能)ブームを巻き起こしました。

 続いて7月には、マイクロプロセッサー世界2位のアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)のリサ・スー最高経営責任者(CEO)が訪台し、サプライヤー、顧客、パートナー企業や台湾の従業員と面会し、台湾のAIブームはさらに盛り上がりました。/date/2023/08/18/3AMD_2.jpgスーCEO(右)は7月20日、陽明交通大学で名誉博士記を手渡された(20日=中央社)

好奇心旺盛な幼少期

 スー氏は1969年、台南市で生まれ、父母とともに3歳でニューヨークに渡りました。台南出身の黄仁勲氏は遠い親戚で、スー氏の伯従父(親のいとこ)に当たります。

 統計学者の父、蘇春槐氏と、会計士の母、羅淑雅氏の下で、幼いころから科学やビジネスのトレーニングを受けたスー氏は、人形で遊ぶよりも、おもちゃを分解することが好きで、よく車のおもちゃを分解していました。父の蘇氏はそんな娘に、思う存分分解し、学ばせました。

25歳でMIT博士号

 幼少期から優秀だったスー氏は、高校を飛び級し、25歳の誕生日を迎える前にマサチューセッツ工科大学(MIT)電気工学の博士号を取得しました。卒業後、アナログIC最大手の米テキサス・インスツルメンツ(TI)、IBM、フリースケール・セミコンダクタで勤務しました。特にIBMでの13年間の経験は、後に才能を発揮させる土台となりました。

 30歳でIBMのルイス・ガースナーCEOの特別補佐を1年間務め、伝説となるIBMの企業再建を体験しました。CEO特別補佐とは、IBMの後継者育成方法で、有望株を選出し、会社の重要な経営判断に参加します。スー氏の「不可能を可能にする」力も、この経験で鍛えられました。

 2012年1月、スー氏はAMDに加わり、グローバル事業部の上級副社長兼事業部総括として、AMDの製品とソリューションのエンドツーエンドの業務遂行を指揮しました。

44歳でCEO就任

 14年、AMDの株価が1.61米ドルまで下がった際、スー氏は44歳でCEOに就任しました。それが今やAMDの株価は107米ドル、時価総額は1800億米ドル以上まで成長しました。

 CEO就任後、スー氏は幹部を3人入れ替えました。テック企業のCEOにありがちな大風呂敷を広げることもなく、スー氏は堅実で、細部まで気を配ります。

5%ルールで低迷脱出

 スー氏は「50%の成長目標を掲げると、見栄えはいいが、不可能な任務に感じてしまう。例えば5%の成長なら、建設的になる」と、「5%ルール」を定め、常にチームを前進させました。

 スー氏は初年度からADMを黒字化させたのではありません。テーマを絞り、製品を企画し、3年かけて赤字から脱却しました。

 スー氏がやることは、▽優れた製品開発、▽顧客の信頼強化、▽会社のスリム化──の3つだけです。インテルを超えるため、エンジニアをチップ開発に専念させました。

 この間、AMDのサーバー用チップは市場を失いましたが、2017年にZenアーキテクチャを発表したとき、これまでの苦労が報われました。

 Zenの演算速度はADMの従来製品の50%以上となり、ADMが低迷期を脱出したことを印象付けました。

 戦略的に、クラウド事業で莫大なCPUを必要とするグーグルなどの巨大テック企業をターゲットとしました。

CEOに直接メッセージ

 スー氏は、CEOが孤立させられないことが重要と考え、従業員とのコミュニケーションを重視しています。AMDの全従業員がスー氏に直接メッセージを送ることができます。

 スー氏は、「メッセージの8割に返信しています。ときには意外なメッセージもあります」と話していて、末端の従業員から新たなインスピレーションを得ていることがうかがえます。

世界一の高額報酬

 AP通信の調査によると、スー氏は、19年に世界で最も報酬が高いCEOとなりました。5年でAMDを成長させ、報酬5850万米ドルを受け取っています。

 24年にCEO就任10年目を迎えるスー氏は、就任当時8000人だった従業員が、2万5000人まで増加し、感慨深いと語りました。次の10年も、テック産業の発展に寄与したいと語りました。

 

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荘建中

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ワイズコンサルティング社高級顧問

 年間200回以上のセミナー講演を行い、法律、経営、人事、財務、人材育成など、多岐にわたるテーマを幅広く扱っている。なかでも難解な内容をわかりやすく伝えることに定評があり、参加者から高い評価を得ている。ワイズのエース講師として、どんなテーマにも柔軟に対応でき、ユーモア有る話術で魅力的な講演が可能。(言語)中国語◎

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