ワイズコンサルティング・グループ

HOME サービス紹介 コラム 会社概要 採用情報 お問い合わせ

コンサルティング リサーチ セミナー 在台日本人にPR 経済ニュース 労務顧問会員

第208回 回転寿司最大手 争鮮董事長 陳津秋氏/台湾


コラム 経営 作成日:2023年11月17日

台湾流経営策略 台湾の名経営者

第208回 回転寿司最大手 争鮮董事長 陳津秋氏/台湾

記事番号:T00112269

 争鮮(スシ・エクスプレス)は、台湾最大の回転寿司チェーン店、争鮮迴転寿司を展開しているほか、▽テイクアウトの争鮮gogo(ゴーゴー)、▽高単価の争鮮PLUS(プラス)、▽レストランの点争鮮(マジックタッチ)、▽日本料理の定食8──があり、食材の卸売業も手掛けています。

/date/2023/11/17/co01_2.jpg台湾鉄路(台鉄)樹林駅の「争鮮gogo」(YSN)

 台湾に店舗は275店あり、中国、香港、シンガポール、タイなどを合わせて世界に594店出店しています。従業員は1万2500人以上で、1分当たり1863貫の寿司が売れています。

鮮度にこだわり命名

 創業者の陳津秋氏は当初、衣料品販売で起業しました。当初は衣料品の輸出を行っていましたが、産業が衰退したため、音楽チェーン店を始めたり、台湾や海外の雑誌を販売する書店を出店しました。後にこれらの事業は譲渡、閉鎖しました。

 こうした豊富な起業経験を生かし、1997年に日本から器材を輸入し、台北市大安区の繁華街、永康街で、争鮮迴転寿司の1号店をオープンしました。飲食業への参入です。回転寿司と定食を店内で提供し、テイクアウトもできる店舗です。

 鮮度にこだわり、「真鮮(本当に新鮮)」と同じ読み方の「争鮮」というブランド名を付けました。

 オープン当初は30台湾元(約140円)、60元、90元の価格設定で、サービス料10%を徴収していました。業績は芳しくなく、3年連続で赤字となりました。その後立ち上げた回転焼き肉レストランは損失が3000万元に上り、マーケティング戦略の変更を迫られました。

均一価格が成功の鍵

 2001年、販売価格を一律30元と設定し、サービス料10%を取りやめました。すると、徐々に軌道に乗り、黒字に転換しました。店舗数も増え、定食8などの新ブランドもできました。

 この均一価格が、争鮮に成功をもたらしました。均一価格を導入するには、2つのことを成し遂げる必要がありました。一つは売り上げを増やし、薄利多売で利益を生み出すことです。もうひとつは食材のコストを下げ、30元でも利益をひねり出すことです。そこで、食材の負担を減らすため、卸売事業を立ち上げました。

 自社で水産物を輸入販売し、自社だけでなく、五つ星ホテルや量販店、スーパーマーケットにも卸しています。台湾最大のサケ輸入業者となりました。

業務標準化でコスト削減

 コスト削減で重要なことは、シンプルにすることです。まるでロボットのように、作業工程を標準化し、作業を単純化すれば、人手を減らすことができます。

 人件費を削減する一方、従業員一人一人が対応できる業務範囲を広げ、いつでもすぐにカバーできるようにしました。キッチンスタッフはホールスタッフもできるようになり、混雑時は店長もキッチンを手伝わなければなりません。以前は、ピーク時にアルバイトを雇っていましたが、今では誰もがどの仕事も対応できるので、その費用を削減できました。

常連客を覚える

 争鮮のサービスは、「温かく、よく気がつき、スピーディーで、よく行き届いている」ことを追求しています。どのお客様も温かく出迎え、口に出さないニーズにも常に注意深く観察し、要望があれば即対応し、急いでいるからといってサービスの質を落とすことなく、丁寧に対応します。

 従業員は、70%以上を占める常連客の習慣や好みを覚えています。お店に覚えてもらえていると分かれば、常連客は大切にされていると感じ、自然と来店回数が増えます。

 店舗では、▽電話は3コール以内に出る、▽客の入店後、5秒以内に声をかけ、席に案内する、▽食事が終われば、1分以内にテーブルを片付ける──ことを徹底しています。

 よく行き届いたサービスを実行するために、手順は細かく定められています。毎年、キッチンやホールの指導マニュアルを見直し、改善の余地があれば、すぐに更新します。

 サービスの品質を維持するため、内部評価だけでなく、覆面調査(ミステリーショッパー)があります。消費者を装った調査員が月に2回、店舗を訪れ、全体的に調査します。その結果は、店舗の重要業績評価指標(KPI)となり、スタッフのボーナスに反映します。

 顧客からクレームや指摘を受ければ、24時間以内に回答し、4日以内に対応を完了しなければなりません。

アジア進出

 争鮮は、回転寿司チェーンとして安定した後、2006年に海外進出を果たしました。現地の文化や味に合わせ、手ごろな価格で販売しています。マルチブランド戦略で、回転寿司チェーンから飲食グループに進化しました。

 陳氏は、ビジネスには革新的でしたが、目立ちたがらない人です。新ブランド創設など記者会見が必要な時以外は、メディアに登場することはほぼありません。市場のトレンドを的確に捉え、アジアに、手ごろな価格の寿司王国を作り上げました。

 

【セミナー情報です】
企画からプレゼンまで、3日間で、ワンストップで学べる、日系企業の台湾人向けプレゼン総合力向上セミナー。
検索は「1月、プレゼン総合力」。
【セミナー情報の詳細はこちら】
https://www.ys-consulting.com.tw/seminar/111121.html

荘建中

荘建中

ワイズコンサルティング社高級顧問

 年間200回以上のセミナー講演を行い、法律、経営、人事、財務、人材育成など、多岐にわたるテーマを幅広く扱っている。なかでも難解な内容をわかりやすく伝えることに定評があり、参加者から高い評価を得ている。ワイズのエース講師として、どんなテーマにも柔軟に対応でき、ユーモア有る話術で魅力的な講演が可能。(言語)中国語◎

台湾流経営策略台湾の名経営者

情報セキュリティ資格を取得しています

台湾のコンサルティングファーム初のISO27001(情報セキュリティ管理の国際資格)を取得しております。情報を扱うサービスだからこそ、お客様の大切な情報を高い情報管理手法に則りお預かりいたします。