記事番号:T00114246
世界7位のプリント基板(PCB)メーカー、健鼎科技(トリポッド・テクノロジー)は、アップルやサムスン電子、華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)、小米集団(シャオミ)のスマートフォン向けサプライヤーです。▽携帯電話、▽ノートパソコン、▽サーバー、▽メモリーモジュール、▽ハードディスク、▽自動車、▽太陽光発電パネル──向けのPCBを生産しています。桃園市平鎮区、中国の江蘇省無錫市、湖北省仙桃市に工場があります。
2023年の連結売上高は588億6000万台湾元(約2800億円)でした。顧客と製品の幅広さが強みで、利益は長年、安定成長しています。
TIを退職して起業
トリポッド董事長の王景春氏はかつて、テキサス・インスツルメンツ(TI)の台湾支社で厳格さと効率追求で知られていました。副総経理にまで上り詰めましたが、TIで台湾人は副総経理までしか昇進できないため、1984年にTIを退職しました。
王氏は、亜瑟科技(CISテクノロジー)など2社の総経理を務め、経営立て直しを担当していましたが、いずれも不愉快な結末を迎え、起業することを決意しました。
ビジネスにサプライズ不要
トリポッドは1991年に設立しました。英語のTripod(トリポッド、トライポッド、三脚)から、三本足で立ち、着実に発展するという意味を込めて、命名しました。
当初、POS(販売時点情報管理)システム会社としてスタートしました。競合が国際的な大企業ばかりで、中小企業は発展の余地が限られていると考え、3年かけてPCBメーカーに事業転換しました。PCB業界も競争が激しく、薄利の中、勝ち抜く方法を考えなければなりませんでした。
王氏は、PCBの製造工程はとても複雑で、利益を上げるには効果的に管理する必要があると考えました。厳格な規律で、どの工程も正確に、経済的に、最善を尽くすことで、利益を絞り出せるのです。
王氏は初めの段階で、完全なMIS(経営情報システム)を構築し、製品の廃棄率や原材料の調達コストを正確に把握しました。また、TIが得意とする半導体の製造工程管理を使って、PCBの複雑な生産ラインを管理しました。
製品が一つしかないのは経営リスクです。03年に太陽光発電パネル用PCBの製造を開始しました。後にトリポッドは、太陽光発電パネル用PCBの台湾最大手に成長しました。
王氏は、「ビジネスでは、サプライズを好まない」といいます。綿密に計画を立て、制度に従って運営することで、コストを削減します。
この非常に高い水準の規律こそが、トリポッドの特徴で、日本を追い抜き、メモリーモジュールと太陽光発電用PCBの最大手に成長した鍵です。
作業員にもコスト徹底
王氏は起業当初、台北市で暮らし、1日15時間、働いていました。TI時代の習慣で、夜中の3時や4時に目を覚まし、車で工場を巡回することもありました。
王氏の率先垂範(人々の先頭に立って行動し、人の模範となること)で、トリポッドはわずか数年で台湾のPCB業界で突出した存在になりました。▽多品種少量生産、▽海外からの受注力、▽正確なコスト管理、▽デジタル化──で、不景気になっても、トリポッドの利益は安定しています。
PCBメーカーは、技術ではなく、コストが勝負所です。トリポッドは、やみくもに最新の製品や技術を追求しないことで、失敗するコストを抑えています。
王氏は部門の支出を把握し、毎月定期的にコスト削減の実績を確認しています。たとえ作業員であっても、歩留まり率が落ちたら、すぐに現場の写真を撮らなければなりません。翌日の幹部会議に提出し、改善方法を考えます。
この制度で、トリポッドは年間1億元を節約し、歩留まり率を90%以上に改善し、コストを同業より10%下げることに成功しました。近年の粗利益率は18%前後で推移しており、競争力があります。
福利厚生や慈善事業に尽力
王氏にとって、従業員こそが企業の存続と発展の礎です。中国江蘇省の無錫工場は、あらゆる方法で、居心地の良い環境を追求しています。たとえば、従業員寮はエアコンや洗濯機など必要な家電をそろえ、ビリヤード場や図書館もあります。ボランティアグループのほか、▽サイクリング、▽バスケットボール、▽バドミントン、▽卓球──などのクラブ・サークルもあります。
春節(旧正月)、端午節(旧暦の5月5日)、中秋節(旧暦の8月15日)、バレンタインデーなどはイベントを開催しています。春節や中秋節には、自動車やアップルのスマートフォン、iPhoneなどの景品が当たる抽選会イベントを行っています。ベテラン従業員には、海外旅行もあります。
トリポッドは、慈善・社会事業にも尽力しています。毎年、従業員を募り、孤児院や老人ホームを慰問訪問しています。
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