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第216回 仰徳グループ 許育瑞・董事長/台湾


コラム 経営 作成日:2024年7月19日

台湾流経営策略

第216回 仰徳グループ 許育瑞・董事長/台湾

記事番号:T00116498

 仰徳集団(仰徳グループ)は、▽新竹物流(HCTロジスティクス)、▽士林電機廠(士林エレクトリック&エンジニアリング)、▽国賓大飯店(アンバサダーホテル)──などの有名企業を傘下に持ち、マクドナルドの台湾での経営権も保有しています。

 仰徳グループは1956年に設立されました。▽食品大手の味全食品工業、53年設立、▽新光集団(新光グループ)、51年設立、▽台南紡織(台南スピニング)、55年設立──などとともに、台湾の老舗企業として知られています。

孫を跡継ぎに

 仰徳グループ創業者の許金徳氏は、日本統治時代の1938年、新竹物流の前身、新竹州自動車運輸(その後、新竹貨運に社名変更)を設立しました。多くの事業に投資し、全盛期には十数社の董事長を務めたほか、台湾の地方議会だった台湾省議会(1998年に廃止)の副議長も務め、産業界と政界に大きな影響力がありました。

 許金徳氏の子供は娘が2人だったので、家業を継がせるため長女の許淑貞氏の長男、許育瑞氏を育成しました。

 後継者育成のため、交友関係が広い許金徳氏は、許育瑞氏を幼少の頃から連れて回り、人脈を引き継ぎました。許金徳氏の社交力を見て育った許育瑞氏は早くから、さまざまな人付き合いを学びました。

 2代目経営者の許淑貞氏は、日本に留学した経験があり、許育瑞氏に対し、謙虚さ、目上の人や制度を尊重することを教えると同時に、のびのびと振る舞える場を与えました。

24歳で経営者に

 許育瑞氏は3代目の経営者で、現在61歳です。米国の南カリフォルニア大学で経済学を専攻しました。

 1970年代、新竹貨運(現・新竹物流)が低迷し、大栄汽車貨運(現・嘉里大栄物流)と中連汽車貨運(現・中連誠企業)に市場首位の座を奪われました。

 87年、卒業したばかりで24歳だった許育瑞氏が米国から帰国し、当時80歳だった許金徳氏から、赤字続きの新竹貨運を引き継ぎました。

 当時の新竹貨運は、家族や親戚のほか、扱いにくい従業員も多く、許育瑞氏は改革を実行しました。従業員は反発し、ストライキが頻発、営業拠点が次々とストップし、とうとう全ての拠点の営業が停止しても、許育瑞氏は譲りませんでした。人員整理に大鉈(おおなた)を振るった結果、従業員に徐々に規律ができ、黒字に転換しました。

 組織改革では、ピラミッド型組織からフラット型組織に再編しました。新幹部が新業務を担い、やる気のある古参に細部を任せ、やる気のない古参は補佐に回しました。

運び屋からサービス業に転換

 最大の改革は、物流ネットワーク(ロジスティクス)を構築し、外国企業から学んだことです。

 宝僑家品(プロクター・アンド・ギャンブル台湾、P&G台湾)の仕事を受けた際、P&Gは海外から指導役を呼び寄せ、新竹貨運に、物流の標準作業手順(SOP)やサービスの概念を教えました。

 新竹貨運は、輸入通関、コンテナ開梱、倉庫保管、再包装やラベル貼り、配送などの後方支援業務を担当しました。台湾各地の小売店からの注文があれば、新竹貨運が翌日すぐに補充します。これで、P&G台湾は経営に専念することができました。

 こうして新竹貨運は、単なる貨物運送会社から、品質を重視するサービス業に転換しました。02年には、ルート配送市場の首位に18年ぶりに返り咲きました。

士林電機でも実績

 許育瑞氏は、新竹貨運のほか、士林電機で企画部協理から経験を積みました。99年に総経理に昇進し、中国やベトナム市場進出を果たしました。

 三菱電機との40年にわたる技術協力関係を維持しつつ、フランスのシュナイダーエレクトリックや米国のゼネラル・エレクトリック(GE)と提携し、グローバル展開を進めました。

 03年、母親の許淑貞氏が死去し、許育瑞氏は核心事業を引き継ぎ、3代目の経営者となりました。

 17年、台湾マクドナルドの20年間の経営権を取得しました。

アンバサダーホテル建て替え

 台北国賓大飯店(アンバサダーホテル台北)は64年に開業した台湾初の五つ星ホテルです。政財界の要人が集う場で、延べ2000万人以上が訪れました。

 22年、全面リニューアルを決定し、昨年9月に建て替え工事を開始しました。日本のホテルチェーン、パレスホテル(本社・東京都千代田区、吉原大介社長)と提携し、台北国賓皇宮酒店(アンバサダーパレスホテル台北)を28年に開業する予定です。レジデンスフロアも併設します。

荘建中

荘建中

ワイズコンサルティング社高級顧問

 年間200回以上のセミナー講演を行い、法律、経営、人事、財務、人材育成など、多岐にわたるテーマを幅広く扱っている。なかでも難解な内容をわかりやすく伝えることに定評があり、参加者から高い評価を得ている。ワイズのエース講師として、どんなテーマにも柔軟に対応でき、ユーモア有る話術で魅力的な講演が可能。(言語)中国語◎

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