記事番号:T00119129
工作機械用の部品大手、上銀科技(ハイウィン・テクノロジーズ)は、ボールねじで世界首位、リニアガイドレールでは世界2位です。同社の製品は、半導体製造装置、外科手術用ロボットアーム、自動車部品など、幅広い分野で使用されています。
第1~3四半期(1~9月)累計の連結売上高は前年同期比4.55%減の180億1600万台湾元(約830億円)で、純利益は3.54%減少の16億4200万元で、1株当たり純利益(EPS)は4.64元でした。
■ハイテクの勝者に
ハイウィンは1989年、卓永財氏が設立しました。ブランド名「HIWIN(ハイウィン)」は、「HI-tech WINner」(ハイテクの勝者)を省略したもので、「われわれの製品を使えば、市場で勝者になれる」という思いが込められています。
■創業者卓永財氏との出会い
総経理の蔡惠卿氏は1958年生まれ。銘伝女子商業専科学校(現在の私立銘伝大学)商業文書科を卒業後、卓永財氏が創刊した貿易関連の雑誌『外貿雑誌』の編集の仕事に就きました。文学とはほど遠いこの雑誌を通じて、蔡氏は信用リスク評価や貿易ルールなどビジネスや財務に関する知識を学びました。
その後、卓氏が設立した経営コンサルティング会社で秘書を務め、マネジメントの理論や実務を学びました。
1989年、卓氏が精密機械業界でハイウィンを設立し、蔡氏は従業員第1号となりました。
蔡氏は、工業系の知識がなかったため、精密機械業界は未知の世界で、同僚が話す専門用語がまるで外国語のように感じました。
ある日、卓氏に電話をかけ、涙ながらに訴えました。「もう限界です。これ以上続けられません。わたしに何ができるのか分かりません」。その言葉を聞いた卓氏は、冷静にこう返しました。「よく考えてみてください。あなたが得意なことは何ですか?」
この問いをきっかけに、蔡氏は精密機械業界には、ブランドを発展させるためのマーケティングの専門家が不足していることに気づきました。見方を変えることで、自分の価値と活躍できるステージを見つけることができたのです。
その後、卓氏は研究開発(R&D)チームを率いることに専念し、蔡氏はマーケティングやブランド戦略チームの構築を担当しました。役割を分担し、互いに補完し合い、「阿吽(あうん)の呼吸」ができるようになり、今まで以上に卓氏の信頼を得て、権限を移譲されました。
■業界初の女性総経理に
蔡氏は2008年、総経理に就任しました。台湾の精密機械業界で初の女性総経理でした。
蔡氏は理系出身ではなかったため、知識不足を補うため、11年には、自動化エンジニアの資格を取得しました。05年に米国の大学で組織心理学の博士課程に進んでおり、12年、組織心理学の博士号を取得しました。
15年には『フォーブス』誌が選ぶアジアの影響力ある女性50人に台湾で唯一選出されました。
■精密機械にアートの力を
蔡氏は、サポートしたり励ますタイプのリーダーシップで、卓氏のカリスマ的なリーダーシップと補完し合い、男性中心だった企業文化に、チームのまとまりをもたらしました。
2019年、ハイウィンは設立30周年記念で、台中国家歌劇院(ナショナル台中シアター)で「テクノロジーとアートの対話」と題したコンサートを開催しました。ハイウィンのロボットアームが音楽、ダンス、演劇を組み合わせ、ハイウィンの企業文化、ブランドイメージを表現しました。
同年、創業者の卓永財氏の息子である卓文恒氏が董事長に就任し、卓永財氏はハイウィングループ総裁となりました。
ハイウィンは、技術革新と高度にカスタマイズされた製品・サービスを武器に、世界市場の開拓に成功しました。2008年に蔡氏が総経理に就任して以来、ハイウィンの時価総額は800億元以上も増加しました。
経済部工業局が発表した2023年の「台湾国際ブランド価値調査」で、ハイウィンのブランド価値は24位にランクインしました。
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