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第222回 半導体商社大手 文曄科技の鄭文宗・董事長/台湾


コラム 経営 作成日:2025年1月17日

台湾流経営策略

第222回 半導体商社大手 文曄科技の鄭文宗・董事長/台湾

記事番号:T00119661

 半導体商社大手、文曄科技(WTマイクロエレクトロニクス)はアジア太平洋地域で2位、世界4位の半導体部品の商社です。電子、通信、消費者向け電子製品向けが中心で、世界に50余りの営業拠点があります。主な顧客は▽アップル、▽広達電脳(クアンタ・コンピューター)、▽仁宝電脳工業(コンパル・エレクトロニクス)、▽鴻海精密工業(ホンハイ・プレシジョン・インダストリー)、▽小米集団(シャオミ)、▽華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)、▽聯想集団(レノボ)──です。

 2024年の連結売上高は9594億台湾元(約4兆5700億円)で、前年比61%増加しました。主な増収要因は、カナダの同業フューチャーエレクトロニクスを買収したことです。

■裸一貫の船出

 創業者で董事長の鄭文宗氏は1964年に生まれました。東海大学工業工程学部系を卒業し、コンパルやコンピューター周辺機器の英群企業(BTC)でエンジニアを務めた後、光宝集団(ライトン)傘下の旭宝電子に転職し、半導体部品の販売を担当しました。

 93年、当時29歳だった鄭氏は、妻の許文紅氏と共同で、文曄科技を設立し、台北市のアパートを拠点に、500万元を元手に事業を始めました。ほぼ資金援助がなく、激しい競争下で、鄭氏は「価値創造モデル」で顧客を集めました。

 普通の営業員は顧客と会って価格を提示しますが、半導体部品は価格が常に変動します。鄭氏は、価格が唯一の競争要因ではないと考え、顧客に独自の市場情報と見解を提供し、顧客が将来の需求状況を判断するのをサポートしました。

 例えば、ある部品が不足すると予想すれば、顧客に対し、早めの仕入れを助言しました。価格が下がると予想すれば、顧客に仕入れを遅らせるよう助言しました。このようなやり方で顧客の信頼を獲得し、長期的な関係を築きました。

 もう一つの価値は、多くのエンジニアの専門性です。顧客の仕入れと在庫調整を支援するだけでなく、製品をどのように使用するか教え、顧客との関係性を深めました。

 仲介サービスの粗利益率はわずか3~5%にすぎませんが、規模の経済で、急速に成長しました。

■拡大戦略の3ステップ

 鄭氏は、3段階の拡大戦略を実行しました。

 1つ目は、店頭上場と株式上場です。設立6年後、2000年に店頭市場に上場し、02年に株式市場に上場を果たしました。市場での資金調達は、資本が大きくなくても、ビジネスを急速に拡大する近道です。

 2つ目は、海外進出です。01年に中国に、03年に東南アジアや韓国に拠点を設けました。中国の台頭と、インターネットの普及というトレンドに、もし乗り遅れれば、先頭の座を失ってしまいます。

 3つ目は、M&A(合併・買収)による規模の拡大です。22年にシンガポールの同業、エクセルポイント・テクノロジーを50億元で買収しました。23年にはカナダの同業フューチャーエレクトロニクスを38億米ドルで買収すると発表しました。台湾の半導体業界で過去最大規模の買収でした。

 鄭氏は買収後、それぞれ独立経営させるのでなく、元の経営メンバーを全員留任させ、自社の社員にしました。内部のコンピューターシステムや会計システムは文曄科技とつなげました。

■2度の危機

 鄭氏は決して順風満帆ではなく、2度、大きな危機に直面しました。

 19年、米テキサス・インスツルメンツ(TI)が、代理契約を翌年末で終えると通知してきました。TIの製品は売上高の2割近くを占めていたので、衝撃を回避できません。

 当時の幹部は、TI部門の人員削減を提案しましたが、鄭氏はそうしませんでした。鄭氏は、会社に利益があれば、会社の資産であるこれらの人材を新たなビジネスに移すべきだと確信していました。そこで、組織を改革し、TI部門の500人を他の部署に異動させました。

 同じ年にもう一つの危機に直面しました。台湾で業界最大手の大聯大控股(WPGホールディングス)による敵対的買収です。

 大聯大控股は当時、文曄科技の株式の30%を取得すると発表しました。幸い、20年2月、「ホワイトナイト」として、コントローラICの祥碩科技(ASメディア・テクノロジー)が株式交換で文曄科技の株式の22.39%を取得し、大聯大控股に呑み込まれる危機を回避しました。

 文曄科技は00年の店頭上場の当時、売上高はわずか52億元でしたが、24年に5兆9594億元と、わずか24年で、180倍以上になりました。

荘建中

荘建中

ワイズコンサルティング社高級顧問

 年間200回以上のセミナー講演を行い、法律、経営、人事、財務、人材育成など、多岐にわたるテーマを幅広く扱っている。なかでも難解な内容をわかりやすく伝えることに定評があり、参加者から高い評価を得ている。ワイズのエース講師として、どんなテーマにも柔軟に対応でき、ユーモア有る話術で魅力的な講演が可能。(言語)中国語◎

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