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第219回 新東陽 麦升陽・総経理/台湾


コラム 経営 作成日:2024年10月18日

台湾流経営策略

第219回 新東陽 麦升陽・総経理/台湾

記事番号:T00118139

 新東陽は、肉鬆(肉でんぶ)やビーフジャーキーなどの肉加工品や土産用食品の製造販売を手がけています。

/date/2024/10/18/20hsintungyang_2.jpg新東陽発祥の「東陽焼臘行」は、現在の武昌店(台北市中正区)となりました(YSN)

 台湾の食品メーカーで初めて、製品と流通のトレーサビリティー(履歴情報管理)を導入しました。

 台湾に直営の販売店が74店、全世界に販売拠点が3万カ所にあります。高速道路のサービスエリア(SA)での売上高は首位、空港の土産物店は最大規模です。

 2023年の売上高は37億4800万台湾元(約170億円)でした。

■「持ち帰っても温かい」

 新東陽の創業者、麦幸夫氏は、現在の桃園市大園区出身です。1960年代、弟を連れて台北で、肉でんぶなどの作り方を習得しました。その後、兄弟は市場で、温かい肉でんぶを売り出しました。店内で調理し、金属製の容器に入れて保温する方法を編み出し、自宅に持って帰ってもまだ温かいと、主婦の間で評判になりました。

 1967年、「東陽焼臘行」の看板を掲げた店舗を構えました。商売は繁盛し、販売拠点を増やしました。身につけた技術と品質の高い材料で、ポークジャーキー、ビーフジャーキー、香腸(腸詰め)、肉類の缶詰めなど、次々と新商品を開発し、「肉製品王国」と呼ばれるようになりました。

■空港開港時に出店

 商才に長けた麦幸夫氏は、「人の流れはお金の流れ」と当時から理解していました。出店先は必ず、バス停や駅出口などの交通の要所を選びました。

 1979年、中正国際空港(現在の桃園国際空港)が開港しました。台湾経済の発展に伴い、海外旅行者や海外出張者が増えると見込んで、空港内のテナントを落札し、出店しました。空港内の手荷物カートの広告スペースも18年間、利用しました。

 この戦略で、多くの観光客や台湾人が「新東陽」の紙袋を手にするようになり、「新東陽」は台湾を代表する土産品ブランドの地位を確立しました。

■古臭いイメージ刷新

 麦幸夫氏の長男で、現総経理の麦升陽氏は1992年、米国から台湾に戻り、事業に加わりました。一般社員からスタートし、ビジネスの先見力や決断力を父の背中から学びました。時代の変化に伴い、考え方ややり方も変えました。

 1997~2000年には、赤字に陥りました。新東陽は古臭いイメージで、高速道路のサービスエリアなど特殊な販路に依存しており、契約更新ができなければ、その年の業績に直撃する状況でした。

 麦升陽氏は、古臭いイメージから脱却するため、改革に着手しました。まず、コンサルティング会社に依頼し、工場の製造プロセスを改善して稼働率を90%まで引き上げ、コストを削減しました。

 社内にプロダクトマネージャーを置いて、売上高だけを追求するのではなく、製品ごとに見直し、検討するようにしました。

 自社の店舗や百貨店の売り場を増やし、サービスエリアのような特殊な販売拠点に依存するリスクを軽減しました。

 若者に人気の女優の林依晨(アリエル・リン)を広告塔に起用し、顧客層の若返りを図りました。

 「新東陽」の赤地に金色文字の包装は、従来の3倍のコストをかけ、高級感を出しました。創業以来、父の代から続く、やや時代遅れとなったロゴの位置を中央からずらし、革新しても初心を忘れない姿勢を表現しました。

■大規模改装で契約更新成功

 2012年、麦升陽氏は総経理に就任しました。この時、新東陽で売上高が最も高い清水サービスエリア(台中市清水区)で運営するショッピングコーナーの契約期限が2年後に迫っていました。入札の評価委員は、2階の稼働率が低すぎると指摘していました。

 そこで麦升陽氏は、2000万元を投じて改装し、入居テナントに補償金を支払って撤退させ、ファストフード大手のサブウェイと、飲料スタンド大手のチャタイム日出茶太を呼び込みました。

 ベテラン幹部たちは当時、2年後の落札を逃せば、投資が無駄になると心配し、改装は契約更新後でいいと進言していました。しかし麦升陽氏は、改善しなければ、契約更新のチャンスも失うと考えました。改装に踏み切ったことで、年間7億元以上の安定的な売上高をもたらすサービスエリアの契約更新に成功しました。

■カフェ併設で若者取り込み

 2020年、新型コロナウイルス感染症の流行で、海外との往来が途絶え、空港の店舗の業績がゼロになりました。同社の売上高は20%減少しました。

 麦升陽氏は、台湾の客を取り込む「入場券」を手に入れなければ、生き残れないと考えました。

 20年11月、通常店舗の4倍に当たる2000万元を投じ、台北市大同区の迪化街に、初となる食品とカフェの複合店、「新東陽迪化100」をオープンしました。バロック建築の面影を残した店舗で、看板商品の肉そぼろや、コーヒーを販売し、若者にアプローチする「入場券」を手に入れました。

 叔父でもある麦寛成・董事長からは「そんなに投資して回収できるのか」と問われましたが、麦升陽氏はこの店舗にKPI(重要業績評価指標)を求めず、来店客に「ワオ!」と言わせることだけを目指しました。

荘建中

荘建中

ワイズコンサルティング社高級顧問

 年間200回以上のセミナー講演を行い、法律、経営、人事、財務、人材育成など、多岐にわたるテーマを幅広く扱っている。なかでも難解な内容をわかりやすく伝えることに定評があり、参加者から高い評価を得ている。ワイズのエース講師として、どんなテーマにも柔軟に対応でき、ユーモア有る話術で魅力的な講演が可能。(言語)中国語◎

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