記事番号:T00120068
製薬大手、保瑞薬業(ボラ・ファーマシューティカルズ)は、西洋薬の代理販売、製造、新薬開発、健康食品の研究開発(R&D)、販売が主な事業で、世界100カ国以上で販売しています。
多くの有名製薬ブランドと提携し、製薬サプライチェーン(供給網)で重要な地位を占めています。2024年の連結売上高は前年比35.6%増の192億5000万台湾元(約890億円)でした。
■父急逝で家業継ぐ
盛保熙氏は1972年生まれ。3歳で米国に移住し、西洋式の教育を受けました。94年に父の急逝を受け、大学卒業後すぐに台湾に戻り、家業の医薬品代理店「和安行」の仕事を手伝いました。経営陣のサポートを受けつつ、家族経営に管理システムを取り入れ、組織を構築しました。盛氏は倉庫の管理から、営業職、管理職、総経理とキャリアを積みました。
2007年、40歳のとき、海外市場の開拓を視野に、保瑞薬業を設立しました。医薬品の開発・生産に特化し、グローバル化を進めました。
保瑞薬業のビジネスモデルは、医薬品開発・製造受託(CDMO)です。研究開発から製造、販売までワンストップで提供します。
■エーザイ台南工場を買収
保瑞薬業は当初、資本金が200万元しかなく、工場もありませんでした。設立6年目まで1株当たり純損失(EPS)10元以上、赤字の小さな薬屋でした。
13年に日本のエーザイが台南工場を売却する際、保瑞薬業はエーザイの代理店を務め、信頼関係を築いていたので、他の台湾の製薬大手よりも低い価格ながらも、買収できました。
工場の管理経験がなく、交渉には2年かかりましたが、5年間のOEM(相手先ブランドによる生産)契約を締結し、保瑞薬業が自社で生産能力を持ち、CDMOに参入する契機となりました。
盛氏は、ファウンドリー最大手、台湾積体電路製造(TSMC)などテック企業の歴史を研究し、台湾の強みは「製造」にあると確信していました。
■M&Aで人材獲得
保瑞薬業はこれまで12年間で、M&A(合併・買収)11件を成功させました。対象は、▽聯邦化学製薬(ユニオンケミカル&ファーマシューティカルズ)、▽米インパックス・ラボラトリーの台湾子会社、▽英グラクソ・スミスクライン(GSK)のカナダ工場、▽伊甸生物医薬(エデン・バイオロジクス)、▽安成国際薬業(TWiファーマシューティカルズ)──などです。1社当たりの買収額は3億9000万元から60億元まで拡大し、13年の年間売上高が1億元足らずだったのが、24年売上高は192億5000万元まで成長しました。
盛氏は、M&Aはお金で時間を買い、目標達成を早めることができると指摘しました。海外M&Aで成功したのは、売り手の立場に立ち、何を欲しいのかよく分かっていたからだといいます。
例えば、20年のGSKカナダ工場の買収では、GSKは企業イメージを守るため、いい会社に売却し、全従業員の雇用を継続することを望んでいました。盛氏はこのことを理解し、双方が納得し、ウインウインとなる契約内容を考えました。
この買収で、北米の生産拠点を手に入れ、GSKが世界88カ国に輸出する医薬品の受託生産契約を獲得しました。
M&Aは成長をもたらしますが、成功させるには、個人でなく、チームの力が不可欠です。盛氏は、M&Aの標準作業手順(SOP)を定めたほか、従業員とのコミュニケーションを重視しています。特に買収後、従業員との信頼関係の構築に時間をかけ、「解雇しない、給与を削減しない」と繰り返します。企業文化を融合し、従業員の帰属意識を高める努力をします。
例えば、エーザイの台南工場買収後、人材の流出を防ぐため、毎週3回現場に赴き、業績の状況を説明したり、株式やボーナスを支給しました。従業員と屋台で食事をしたり、お酒を飲み、緊密な関係を築きました。
盛氏は、買収する工場よりも人材の方が価値があり、幹部を引き留めれば、チームを引き留められると考えます。
■バイテク界のTSMC
保瑞薬業の時価総額は17年の上場当時14億元でしたが、25年2月7日時点で854億元まで膨らみました。「バイオテクノロジー界のTSMC」、CDMO業界のリーダーとなりました。
今後3年以内に、CDMOの世界上位10位入りを目指しており、さらなるM&Aを続けます。
荘建中
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