記事番号:T00121192
放熱モジュール大手、奇鋐科技(アジア・バイタル・コンポーネンツ、AVC)は、コンピューターなどの放熱・冷却製品のトータルソリューションを提供しています。グラフィックスプロセッサー(GPU)大手、米エヌビディアに3Dベーパーチャンバー(3D‐VC)のサプライヤーに認証された世界2社のうちの1社です。2024年の連結売上高は前年比21.23%増の717億6100万台湾元(約3200億円)で、11年連続で過去最高を更新しました。
■放熱製品に将来性
董事長の沈慶行氏は1963年に生まれました。米国のミシガン州立大学で経営学修士(MBA)を取得しました。
奇鋐科技は91年に設立されました。沈氏は創業者ではありません。99年、大衆電脳の財務長(CFO、最高財務責任者)を務めていた時に、奇鋐科技が経営難に陥っているのを目にしました。コンピューターを分解してみると、マザーボードやグラフィックスカード、パネルなどの部品は、既に強力な企業が存在していましたが、放熱製品だけはまだ価格競争の段階にとどまっていました。放熱製品の将来性に目をつけ、奇鋐科技を買収しました。
買収後、最初の課題は企業文化の再構築でした。沈氏は「顧客重視」をコアバリューに定めました。当時、台湾の放熱製品業界は差別化に乏しく、ヒートシンク(放熱器)、ファン、筐体(きょうたい)を別々のメーカーが製造していました。顧客に熱マネジメントのニーズがあっても、まず放熱システムを設計し、それに合わせて各メーカーにファンや筐体の仕様変更を依頼する必要がありました。
そこで沈氏は、大規模な研究開発(R&D)体制を構築し、▽銅製のヒートシンクをアルミ製に変更、▽ファンを小型化し、風路を最適化、▽筐体に通風口を設けて熱を排出──などの方法で、放熱効率を上げました。古河電気工業の出資を受け入れ、ヒートパイプ技術を補完しました。その後、筐体メーカーの明鑫科技、ファンメーカーの達隆科技を買収しました。ヒートシンク、ファン、筐体の生産能力を得て、トータルソリューションを提供できるようになりました。
2010年以降は、事業の多角化とグローバル化を進めました。主力の放熱事業以外に、富世達(フォシテック)に出資するなどして、ヒンジやタッチパネルに参入しました。
■25年で売上高100倍に
沈氏は、▽プライオリティー(優先順位)、▽パフォーマンス・レビュー(業績評価)、▽ペイ(賞与支給)──の独自の管理制度「3P」を制定しました。毎年、業務の優先順位を見直し、従業員の評価に応じて、賞与を分配しました。
奇鋐科技は単なる放熱モジュールメーカーから、R&D人材1500人を抱え、ファン、放熱モジュール、筐体をまとめて提供するトータルソリューション企業に進化しました。
価格で戦う必要はなくなり、会社の規模や財務状況による信頼感が生まれ、エヌビディアの協力パートナーとなりました。エヌビディアのGPUは1個当たり3万~4万米ドルという高額で、それに見合う放熱技術や筐体が必要です。奇鋐科技は、原材料やR&Dまで、高い要件を満たしています。
沈氏が99年に買収した当時、奇鋐科技の売上高はわずか7億元でしたが、今や717億元と、25年で100倍まで成長しました。
荘建中
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