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第226回 コネクタ大手、LOTES 朱徳祥・董事長


コラム 経営 作成日:2025年5月16日

台湾流経営策略 台湾の名経営者

第226回 コネクタ大手、LOTES 朱徳祥・董事長

記事番号:T00121716

 パソコン向けコネクタ大手の嘉沢端子工業(LOTES)は、主にコネクタの設計、製造、販売をしているほか、世界3位のCPUソケットのサプライヤーでもあります。

 顧客は▽インテル、▽アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)、▽電子機器受託製造サービス(EMS)最大手の鴻海精密工業(ホンハイ・プレシジョン・インダストリー)、▽ノートパソコンとAI(人工知能)サーバー受託生産大手の広達電脳(クアンタ・コンピューター)、▽緯創資通(ウィストロン)、▽英業達(インベンテック)──などで、安定した関係を築いています。

 特にインテルのサーバープラットフォームへのコネクタ供給で、LOTESはアジアで数少ない共同設計パートナーです。

 2024年の売上高は前年比23.1%増の301億3300万台湾元(約1460億円)で過去最高を更新しました。粗利益率は52.4%、1株当たり純利益(EPS)は63.5%増の82.77元で、過去最高を更新しました。

■職人から技術開発

 LOTESは1986年、董事長の朱徳祥氏と総経理の何徳佑氏の兄弟が共同で設立しました。朱氏は新北市立泰山高級中学(高校)の機械科を卒業、何氏は中学校を卒業後、北区職業訓練局で金型を学びました。

 朱氏は研究開発(R&D)とイノベーションが得意で、営業も兼任しています。まるで工場が自宅のようで、24時間オンコールで顧客の問題を解決しています。何氏は主に生産管理を担当しています。二人で力を合わせ、技術力を高めてきました。

 創業初期、台湾はまだ「家庭がそのまま工場」という時代でした。朱氏は高卒の職人でありながら、金型設計の才能がありました。

 最初にシンプルなコネクタ端子の製造から始めたところ、技術的ハードルが低いため競争相手が多く、朱氏の職人魂が騒ぎました。95年に難易度が高いCPU用コネクタ参入を決意しました。7年間の試行錯誤の末、02年にクランプ(挟持)技術の開発に成功しました。両側にクリップを備えた端子を設計し、挿入すれば、プロセッサーがマザーボードにしっかりと固定されるようになりました。

■鴻海との特許訴訟

 このクランプ技術は、インテルに注目されました。同時に競合の警戒心を引き起こしました。その競合相手とは、当時インテルのCPUソケットをほぼ独占供給していた鴻海です。

 05年、鴻海はLOTESに対して特許侵害訴訟を起こし、仮差し押さえも実行しました。当時、LOTESの資本金は2億元足らずでしたが、4億元以上の製品が差し押さえられ、銀行の資金も凍結されました。1年間、給与支払いが滞り、訴訟費用を調達するため奔走しました。

 最終的にはインテルが仲裁に乗り出し、LOTESと鴻海は和解に至りました。条件として、LOTESは鴻海に和解金を7900万元支払い、月間売上高の1~3%に相当するロイヤリティを支払うことになりました。

 インテルは傘下の投資会社2社を通じてLOTESに出資しました。持ち株比率は12%を超えました。

 朱氏は鴻海事件の経験を教訓に、自社で特許対策チームを立ち上げ、特許の抜け穴を補強をしました。顧客と共同で新製品を開発し、毎年売上高の7~9%をR&D費に充てるようにしました。

 LOTESは現在、特許を累計3200件以上保有しています。

■品質とスピードの両立

 LOTESは、台湾のコネクタ産業を転換・高度化した代表的な企業と見なされています。

 朱氏は「価格競争はしない」と明言し、高度かつ技術的ハードルの高い製品を開発し、少量・高品質、カスタマイズ生産を軸としています。金型開発や自動化生産ラインへの投資を惜しまず、内製化率を高めることで、製品の一貫性と歩留まりを向上させています。これにより、顧客のニーズに迅速に対応し、製品導入までの期間を大幅に短縮しています。

■社員も顧客も大切に

 朱氏は誠実と信頼を重視するリーダーシップを実践しています。人と人との信頼関係を重視し、社員との頻繁にコミュニケーションをとり、董事長として威圧的な態度を見せることはありません。その結果、互いに信頼し助け合う社風が育まれています。鴻海との特許訴訟で企業が存続の危機に迫られても、社員は朱氏を信じて共に困難を乗り越えました。

 朱氏の経営スタイルは堅実さと先見性を兼ね備え、企業の信用や長期的なパートナーシップの構築を重視しています。市場や顧客の声に耳を傾け、「準備を整え、チャンスを待つ」ことを信条とし、無謀な拡大はしませんが、産業の転換点は決して見逃しません。

 今後もLOTESをハイエンド分野に率いて、グローバルな高速コネクタ市場での地位を強化し、世界のサーバーのコネクタソリューションにおけるリーディングブランドを目指します。

荘建中

荘建中

ワイズコンサルティング社高級顧問

 年間200回以上のセミナー講演を行い、法律、経営、人事、財務、人材育成など、多岐にわたるテーマを幅広く扱っている。なかでも難解な内容をわかりやすく伝えることに定評があり、参加者から高い評価を得ている。ワイズのエース講師として、どんなテーマにも柔軟に対応でき、ユーモア有る話術で魅力的な講演が可能。(言語)中国語◎

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