記事番号:T00120714
コーヒーチェーン「成真珈琲(カム・トゥルー・コーヒー)」は、台北市の百貨店やショッピングセンター、▽遠東そごう百貨の台北復興館、▽宝麗広場(BELLAVITA、ベラヴィータ)、▽誠品生活(エリート・スペクトラム)松菸店──をはじめ、台湾で15店、海外で1店を展開しています。運営会社の成真社会企業(カム・トゥルー・ソーシャル・エンタープライズ)の2024年売上高は2億台湾元(約9億円)を超えました。
単なるコーヒーチェーンにとどまらず、国際協力NGO(非政府組織)ワールド・ビジョンの「クリーンウォータープロジェクト(CWP)」に参加し、利益の50%をアフリカの村で井戸を掘る活動に寄付しています。これまでに井戸26本を掘り、多くの人々に清潔な飲み水を提供してきました。
成真社会企業は、世界のコーヒーブランドで唯一、環境や社会に配慮した公益性の高い企業に与えられる「Bコーポレーション(B Corp)」認証を取得しました。
■王品集団から転身
成真社会企業の董事長、王国雄氏は1960年に生まれました。93年に台湾最大の外食グループ、王品集団を戴勝益氏(王品集団の董事長)とともに設立しました。副董事長を務め、▽イタリア風ベジタリアン料理の舒果、▽創作日本料理店の芸奇(ikki)、▽和風洋食の陶板屋──など人気ブランドを次々と立ち上げ、「創業王」と呼ばれていました。
社内の主導権争いで、王氏は2015年5月、突如退職しました。翌日に4人を引き連れ、資本金1000万元で成真社会企業を設立しました。
王氏は、事業で社会貢献したいと考え、「日常的にニーズがあり、消費者が理解しやすく、市場規模が大きい」という条件で、コーヒーに決めました。
当初は、コーヒー豆をサブスクリプション(定額課金)モデルでオンライン販売していました。世界各国のコーヒーに関する文章を翻訳したり、2~5分のショートムービーを制作したりと、コンテンツマーケティングで広めました。
独自のやり方だったのは、初回注文があれば、顧客を直接訪ね、おいしくいれられるようコーヒーマシンの設定を調整したことです。3カ月ごとに電話をかけ、フォローも欠かしませんでした。
17年、台中市西区のリノベーションスポット、審計新村に、成真珈琲の実店舗をオープンしました。レトロでクリエイティブな空間が、SNS映えすると話題になりました。
看板メニューは、花を使った「花系咖啡」、スモークが出る演出のほか、注文ごとに焼き上げるスフレパンケーキで、東京・表参道の有名店を超えると評されるほどです。
■コーヒー小規模農家を支援
社会的企業として、出どころのはっきりしたコーヒー豆を買い付けるため、王氏は自らアフリカのコーヒー農園を訪問しました。そこで目の当たりにしたのは、大規模農園との競争に敗れ、十分な利益を得られない小規模農家の現状でした。成真珈琲は、仲介業者を介さず、小規模農家と直接、契約栽培を結ぶことで、農家の収益向上を支援しています。
アフリカは水資源に乏しく、女性や子どもが毎日10キロメートルも歩いて水をくみに行きます。これを知った王氏は、現地の人々が安全な飲み水を飲めるよう、コーヒーが売れて得た利益の半分を井戸の掘削に充てる「善の循環」を構築しました。
■店舗の利益を還元
社内の人材育成や福利厚生も重視しています。
成真珈琲の店員の初任給は月給3万元で、同業の2万5000元を上回ります。春節ボーナス(年終奨金)1カ月分を固定で支給するほか、王品集団を参考に、店舗利益の20%を従業員に分配します。店長になると、店舗利益の10%を上乗せし、店舗の資本金の10%の株式を与えます。
社員教育のためには「コーヒー学院」を開設しました。基礎レベルはバリスタ技術、中級レベルは店舗管理、上級レベルは財務分析・マーケティングなどの経営を学びます。
■社員重視が最良の方法
王氏は、毎年春節(旧正月)前に手土産を持参して従業員の自宅を訪ね、家族に感謝の気持ちを伝えています。コロナ禍でも、決して解雇や給与カットを行わず、株主配当をやめて、現金利益を全て従業員に還元しました。飲食業界は年間離職率が通常50%以上ですが、成真珈琲は90%の定着率を維持しています。
王氏は「人を大切にすることが、最も良いビジネスモデルだ」と考えています。
企業の力を社会に還元するため、出店を続け、世界各地で成真珈琲を見かけるようにするのが目標です。
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