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第215回 スーパーマイクロ創業者 チャールズ・リアングCEO/台湾


コラム 経営 作成日:2024年6月21日

台湾流経営策略 台湾の名経営者

第215回 スーパーマイクロ創業者 チャールズ・リアングCEO/台湾

記事番号:T00115987

 スーパーマイクロ(SMIC)は、世界3位のサーバーメーカーです。グリーンコンピューティング(環境への影響を最小限に抑えながら、サーバーとデータセンターのパフォーマンスを最大化すること)をコアバリューとし、省エネルギーサーバーに注力しています。

/date/2024/06/21/20supermicro_2.jpgアジア最大級の情報技術(IT)見本市、台北国際電脳展(コンピューテックス台北)で、スーパーマイクロのリアングCEO(右)とエヌビディアのフアンCEO(左)は水冷サーバー(DLC)を紹介した(5日=中央社)

 AI(人工知能)サーバーでは、グラフィックスプロセッサー(GPU)大手、エヌビディアやインテル、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)と提携しています。

 2022年4月の株価は34.1米ドルで、時価総額は18億9300万米ドルでしたが、23年以降のAIブームに乗り、24年6月20日の株価は917.64米ドル、時価総額は537億3400万米ドルに上昇しました。

 スーパーマイクロ創業者のチャールズ・リアング(梁見後)最高経営責任者(CEO)は、エヌビディア創業者のジェンスン・フアン(黄仁勲)CEO、AMDのリサ・スーCEOと3人いずれも台湾出身者で、「シリコンバレーの台湾系AI三巨頭」と称されています。

エヌビディア ジェンスン・フアンCEO

https://www.ys-consulting.com.tw/column/109541.html

AMD リサ・スーCEO

https://www.ys-consulting.com.tw/column/110623.html

弟をサプライヤーに

 リアング氏は1957年、嘉義県の小さな農村で生まれ、貧しい家庭に育ちました。姉1人と弟3人(梁見発氏、梁見達氏、梁見国氏)がいます。弟もリアング氏に続いて電子業界に入り、スーパーマイクロのサプライヤーとなりました。

 リアング氏は78年に台湾省立台北工業専科学校(現・国立台北科技大学)電機工程科を卒業し、自分で貯めたお金で米テキサス大学に留学し、修士号を取得しました。

 93年にシリコンバレーでスーパーマイクロを創業しましたが、周囲の反応は冷ややかでした。当時は価格競争が主流でしたが、リアング氏は品質こそが王道だと考えていました。リアング氏は諦めず、創業から半年で黒字転換し、07年には米国で上場を果たしました。

省エネサーバーに注力

 スーパーマイクロは「多品種少量生産」で競争しています。スーパーマイクロのサーバーは、部品がまるでブロック玩具「レゴ」のようで、モジュール化によって、設計をわずかに変更するするだけで、別のサーバーにできます。これにより、カスタマイズのコストを削減し、納期も大幅に短縮しています。

 リアング氏は、04年公開の災害映画『デイ・アフター・トゥモロー』で、吹雪や竜巻、津波などの壮絶な映像を見て、地球温暖化の問題について真剣に考え始めました。自社のサーバーをデータセンター向けに転換し、節電によってデータセンターの運営コストを削減し、温室効果ガス排出量を減らそうと考えました。スーパーマイクロは液冷技術を採用したサーバー提供で、データセンターの運営コストを40%以上削減しました。

スピードで大手と競争

 リアング氏は、スーパーマイクロのサプライチェーン(供給網)を構築するため、弟の梁見発氏にサーバー筐体(きょうたい)メーカーの大訊科技(エイブルコム・テクノロジー)を設立させ、もう一人の弟、梁見達氏には、電源装置メーカーの肯微科技(コンピュウエア・テクノロジー)を設立させました。

 93年の創業以来、人手不足で、リソースがほぼないにもかかわらず、世界市場シェア10%を達成しました。肝心なのは「スピード」でした。「時間を無駄にしない」という管理スタイルは、サプライヤー、つまり弟の梁見発氏にも適用しました。

 リアング氏は、早く製品を発売すればするほど、市場シェアを獲得でき、小さな会社は納期のスピードでしか、HPやデルのような大手と競争できないと考えました。

 同業他社は、生産能力を日数で計算しますが、スーパーマイクロは時間単位でサプライヤーの納品を管理しています。例えば、通常は仕様策定から量産までに10カ月~1年かかりますが、リアング氏の弟ならわずか4カ月で量産できます。

週休1日を30年以上

 世界トップクラスの競争力を追求するため、スーパーマイクロを厳しく管理するだけでなく、リアング氏自身も30年以上、週1日しか休んでいません。海外旅行にもほぼ行かず、数少ない趣味は登山やサイクリングです。

 こうした姿勢を弟たちにも求めました。梁見発氏が台湾でスポーツカーを購入したことを知ると、リアング氏は社風に合わないと言って、翌日すぐ売却するよう命じました。

 スーパーマイクロは生産能力を拡大するため、12年に台湾に70億台湾元(約340億円)を投じて工場を設置しました。19年には20億元を追加投資して桃園市の八徳工場を拡張し、2021年に完成しました。年間100万台のサーバーを生産できます。

 テック産業は常にイノベーションが必要で、リーダーは焦りや不安にかられやすいものです。リアング氏は、禅の教えの「順其自然(自然の成り行きに任せる)」、「順勢成功(流れに任せて成功する)」、「遵從天性(天性に従う)」をモットーにしています。

 リアング氏は、スーパーマイクロはチャンスが到来すればすぐに行動し、設計、製造、販売、カスタマーサービスまで一貫提供で、競合他社に差を付けると語りました。あるアナリストは、足りない部品がなければ、スーパーマイクロは数週間以内にサーバーの製造、組み立て、テストを完了し、出荷できると指摘しています。

荘建中

荘建中

ワイズコンサルティング社高級顧問

 年間200回以上のセミナー講演を行い、法律、経営、人事、財務、人材育成など、多岐にわたるテーマを幅広く扱っている。なかでも難解な内容をわかりやすく伝えることに定評があり、参加者から高い評価を得ている。ワイズのエース講師として、どんなテーマにも柔軟に対応でき、ユーモア有る話術で魅力的な講演が可能。(言語)中国語◎

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