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第197回 台隆工業董事長 黄教漳氏/台湾


コラム 経営 作成日:2022年12月16日

台湾流経営策略 台湾の名経営者

第197回 台隆工業董事長 黄教漳氏/台湾

記事番号:T00106505

 台隆工業は、傘下に衣食住の事業がそろっています。▽台鈴工業(スズキの二輪車の製造販売)、▽ハンズ台隆手創館、▽吉豚屋(かつや)、▽台湾明治食品(台湾明治フード)、▽百吉冰淇淋(POKI)、▽「Niseko乳雪糕」──などです。

 養楽多(台湾ヤクルト)の大株主でもあり、匯豊汽車(フォーチュン・モーターズ)にも投資しています。通年の売上高は400億台湾元(約1800億円)以上です。

ヤクルトの営業が原点

 台隆工業は63年に設立しました。64年、ブリヂストンと共同で「BSブリヂストンバイク」を生産しました。ブリヂストンと名乗ったものの、研究開発(R&D)から全て台湾人が行いました。同年、台湾ヤクルトを共同で設立し、製造業と食品業の二足のわらじをスタートしました。

 台隆工業の董事長、黄教漳氏は61年に生まれました。上智大学経済学部を卒業し、国立台湾大学と国立政治大学で経営学修士号(EMBA)を取得しました。

 大学卒業後、黄氏は日本に残り、ヤクルトで営業職に就いていました。2年間で日本の企業文化への理解を深めたことが、日本企業とビジネスをする際の土台となりました。

 帰台後、台隆工業の食品事業部を経て、台鈴工業の董事長、台湾ヤクルトの董事などを歴任し、09年に3代目の台隆工業董事長に就任しました。

アイス王子の発見

 台湾に戻ってから台隆工業の食品事業部で、77年、POKI事業を立ち上げ、1日で70万本を売り上げる記録を達成しました。「アイスキャンディー王子」と呼ばれたそうです。

 94年、米ハーゲンダッツが台湾で路面店をオープンしました。当時20元ほどで売られていたアイスクリーム市場に、100元に迫る商品が登場し、騒然となりました。

 黄氏は、台湾のアイスクリーム市場は20~100元の中間価格帯に空きがあることに気づきました。そこで日本から明治のアイスクリームを引き込み、価格を50元程度に設定して中間価格帯を埋め、高級感がありながらも手の届く価格の商品で、ブルーオーシャン(競合のいない新市場)を作り出しました。コンビニエンスストアに明治のアイスクリームを陳列してもらうことに成功し、コンビニのアイスクリーム販売で何度も首位となりました。

ハンズと日本ブーム起こす

 99年、台隆工業は東急ハンズ(当時は東急グループ)にとって初めての海外事業パートナーとなりました。00年、台湾1号店となる「台隆手創館」を西門町(台北市万華区)にオープンし、初年度売上高1億2500万元の驚異的な記録を打ち出しました。

 1年後には高級ショッピングセンター(SC)の微風広場(ブリーズセンター、台北市松山区)に出店しました。東急ハンズが入居したことで、ブリーズセンターに若者も来店するようになりました。

 黄氏は、東急ハンズのノウハウ以外に、台湾で成功した一番の鍵は現地化だったといいます。

 日本の東急ハンズは、主な客層が男性で6割以上を占め、DIYのための「クリエイティブライフストア」です。台湾では女性をターゲットとし、ファッションや生活雑貨にも注力し、コスメやキッチン便利グッズ、おもしろ雑貨などを集めました。ロングセラー商品となっているメロン専用スプーンやりんご皮むき器、マルチアイブロウペンシルからコップまで集め、哈日(日本好き)ブームを巻き起こしました。

バイクでもマーケット拡大

 イノベーションを重視する黄氏は、05年に台鈴工業の董事長に就任した際、若者向けでスタイリッシュなバイク「晶鑽125シリーズ」で、またもや大ヒットを飛ばしました。

 黄氏の経営スタイルは一貫して「マーケットの一部をつかむのではなく、自らマーケットを大きくする」というものです。

 台鈴工業は12年、スズキの大型バイク総代理を勝ち取りました。黄氏はバイクを販売するだけでなく、同時に台湾に大型バイクのレジャーブームを連れてきました。

 14年には日本の総合家庭用品最大手のLEC(レック)製品の販売を開始し、15年には日本最大のカツ丼チェーンのかつやを合弁でオープン、18年にはマツモトキヨシを合弁でオープンしました。21年には北海道十勝の牛乳を使ったアイスクリームの自社ブランド「Niseko乳雪糕」を開発しました。

 黄氏の創新はいずれも、顧客の需要に基づいています。壮大なやり方も、小さな発見から生まれます。黄氏は、どんなビジネスでも、まず「満足させられていない需要」が何なのか見つけ出します。ビジネスの存在意義は、実質的な手助けであり、誰かの需要を満足させる「ウィンウィン」でなければ、長く続かないと考えています。

 

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荘建中

ワイズコンサルティング社高級顧問

 年間200回以上のセミナー講演を行い、法律、経営、人事、財務、人材育成など、多岐にわたるテーマを幅広く扱っている。なかでも難解な内容をわかりやすく伝えることに定評があり、参加者から高い評価を得ている。ワイズのエース講師として、どんなテーマにも柔軟に対応でき、ユーモア有る話術で魅力的な講演が可能。(言語)中国語◎

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