ワイズコンサルティング・グループ

HOME サービス紹介 コラム 会社概要 採用情報 お問い合わせ

コンサルティング リサーチ セミナー 在台日本人にPR 経済ニュース 労務顧問会員

第200回 崇越集団董事長 郭智輝氏/台湾


コラム 経営 作成日:2023年3月17日

台湾流経営策略 台湾の名経営者

第200回 崇越集団董事長 郭智輝氏/台湾

記事番号:T00107975

 崇越集団は、テック産業、グリーンエネルギー産業などにまたがる企業集団です。テック産業が売上高の約90%を占めます。

 うち崇越科技(トプコ・サイエンティフィック)は台湾最大手の半導体材料・設備の商社です。顧客は▽ファウンドリー最大手、台湾積体電路製造(TSMC)、▽ファウンドリー大手の聯華電子(UMC)、▽半導体パッケージング・テスティング(封止・検査)最大手、日月光投資控股(ASEテクノロジー・ホールディング、ASEH)──など域内企業や海外企業です。2022年の連結売上高は529億7800万台湾元(約2300億円)で、9年連続で過去最高を更新しました。

 董事長の郭智輝氏は、TSMCが工場を建設中の熊本に、2023年に拠点を設置すると表明しています。

郭台銘氏と日本に商談

 郭智輝氏は、軍を除隊後、給与が高い化学工場の工場長の特別補佐の地位を捨て、勝記貿易(S.K.T.アジアン・パシフィック)の営業担当者となり、シリコンなどの化学材料や電子部品の売買を担当しました。

 日本から製品を輸入するというのに、郭氏は日本語の五十音すらできませんでした。そこで退勤後に日本語を学んだり、日本人の同僚と会話したり、歌を歌ったりしました。2年後には顧客と流暢にやり取りできるようになりました。

 ある年、高圧ケーブルや電線を販売する際に、顧客の鴻海精密工業創業者の郭台銘(テリー・ゴウ)氏と知り合いました。その後、日本の通信業界で電話回線の需要があると知り、運転手兼日本語の通訳として、郭台銘氏とともに日本に商談に赴いたこともありました。

 後日、郭台銘氏から、鴻海に入社し、子会社の経理(マネジャー)にならないかとスカウトされましたが、郭智輝氏はその誘いを断り、長年の雇用主の張永然氏とともに、崇越貿易を設立しました。

 1990年、郭氏は張氏の指示の下、電子材料部門の同僚7人を率いて、トプコを設立しました。半導体用シリコンウエハー、半導体製造工程で使用する石英製品、パッケージング材料などの業務を手掛け、TSMCやUMCが顧客でした。崇越貿易時代に、シリコンウエハー世界最大手の信越化学工業の代理権を取得しており、大量供給が可能で、品質が安定していたためです。

従業員の高級車禁止

 トプコは2003年に上場し、株価は一時1株300元まで跳ね上がりました。1株15元で株式を取得していた従業員は次々と株式を売却し、長年の夢だったメルセデス・ベンツやBMWの高級車を購入しました。

 取引先の日本のメーカーの代表者が訪台した際、トプコの従業員の多くが高級車を運転しているのを目にし、「ずるい」と感じ、販売手数料率を従来の5%から2.5%に引き下げ、その後1.25%まで引き下げました。トプコの売上高は大幅に減少し、上場後、最大の危機となりました。

 郭氏は、トプコが単なる代理店のままなら、価格決定権は他者に握られたままだと気づき、「乳母の哲学」を考え出しました。

 「乳母の哲学」とは、乳母が世話した子どもがよく教育されていれば、誰もが子どもの家柄がいい、遺伝だ、性格がいいなどとほめます。子どもの教育が行き届いていなければ、乳母のせいにされます。

 これを代理店に当てはめれば、販売成績がよければ、メーカーの製品がいいからだと言われ、販売成績が悪ければ、代理店の売り方が悪いと責められます。

 そこで郭氏は、日本メーカーと台湾で合弁会社を設立し、生産にも関わることにしました。

 また従業員に対しては今日に至るまで、高級車で出社すること、高級な腕時計や指輪を身に着けることを一切禁止しています。

リスキリング推奨

 郭氏の経営スタイルはかつて、やや日本式でした。毎朝、朝礼を開き、体操をしていました。社内には、日本留学経験者もおり、約半数が日本語を理解していました。全従業員に対し、日本語を毎週5つ学ばせ、朝礼で交代で前に出て、日本語を朗読させました。

 管理は厳しく、従業員の前で机を強く叩いたり、怒鳴ったり、オフィスの外に報告書を投げ捨てることさえありました。

 郭氏は、半導体業界の顧客は要求が細かく、スピードを求めているので、それに全力で応えなければならないと考えていました。ただ、行動に対して怒っても、人に対して怒ることはなく、決して人身攻撃はしません。

 とはいえ、現代人はストレス耐性が低く、自分自身の人生設計があるので、郭氏は昔ながらのやり方をやめざるを得ませんでした。

 郭氏は、従業員の自己啓発を推奨しています。国立大学の経営学修士(EMBA)課程に合格すれば、会社で全額を補助します。

 専門分野やマネジメント、教養などの課程を学べば、取得した単位を「学習パスポート」に記録し、人事評価に反映させています。

 福利厚生では、従業員に子どもが生まれれば、2万元の奨励金を支給します。子どもが6歳になるまで、毎月5000~1万元を支給します。

 

【セミナー情報です】

日系企業の台湾人幹部必修!意思決定の精度を高める、ビジネス数字力 上級セミナー。3日間でデータの読解力を鍛え、顧客や上司にデータを用いて報告できるスキルを身に付けさせます。4月17日開講。 検索は「ビジネス数字力上級セミナー、4月」。

【セミナー情報の詳細はこちら】

https://www.ys-consulting.com.tw/seminar/103812.html

荘建中

荘建中

ワイズコンサルティング社高級顧問

 年間200回以上のセミナー講演を行い、法律、経営、人事、財務、人材育成など、多岐にわたるテーマを幅広く扱っている。なかでも難解な内容をわかりやすく伝えることに定評があり、参加者から高い評価を得ている。ワイズのエース講師として、どんなテーマにも柔軟に対応でき、ユーモア有る話術で魅力的な講演が可能。(言語)中国語◎

台湾流経営策略台湾の名経営者

情報セキュリティ資格を取得しています

台湾のコンサルティングファーム初のISO27001(情報セキュリティ管理の国際資格)を取得しております。情報を扱うサービスだからこそ、お客様の大切な情報を高い情報管理手法に則りお預かりいたします。