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第204回 王品集団 陳正輝・董事長/台湾


コラム 経営 作成日:2023年7月21日

台湾流経営策略 台湾の名経営者

第204回 王品集団 陳正輝・董事長/台湾

記事番号:T00110127

 レストランチェーン最大手、王品餐飲集団(王品集団)は、中華料理、洋食、鍋料理、焼き肉、和食、韓国料理など36の飲食ブランドがあり、▽ステーキの王品牛排(ワン・ステーキ)、▽ステーキの西堤牛排(テイスティ)、▽和食の陶板屋、▽鉄板焼きの夏慕尼──など台湾で311店、中国で100店を展開しています。2022年の連結売上高は183億2000万台湾元(約820億円)で、1株当たり純利益(EPS)は5.15元でした。

レジャー事業から転換

 王品は元々、レジャー事業を経営していましたが、93年に飲食チェーンに転換しました。上場後、株価は529元まで上昇し、観光関連株の首位となりました。

 王品は3人の仲間で創業しましたが、1人が抜け、残った戴勝益氏と陳正輝氏が革命の戦友となりました。戴氏が「外(渉外)」を担当し、王品の企業文化や方向性の決定、マスコミ対応を行いました。陳氏は「内」を担当し、新ブランド創設や中国市場の開拓を行いました。

 王品は当初、さまざまな業種に挑戦し、多くの失敗を経験しました。その後、王品牛排に力を入れ、口コミが広まると、西堤牛排を創設しました。良い業績が出ると、新ブランド創設のSOP(標準作業手順書)を確立し、▽陶板屋、▽焼き肉の原焼、▽夏慕尼──など10以上のブランドを立ち上げました。

自分の会社と思わせる

 王品の成功の鍵は、独自の制度と企業文化にあります。戴氏は、イルカのトレーナーから発想を得て、利益を上げれば従業員にすぐに還元する制度を作りました。この制度により、従業員に会社の事業を自分ごとだと認識させ、「飲食店の従業員は配膳だけすればいい」という考え方から脱却させることができました。

 このほか、亀毛家族條款(社内の細かいルール)や「遊百国、吃百店、登百岳(100の国を旅し、100の店で食べ、100の山を登れ)」の理念を制定し、王品の「頑張り、稼ぎ、遊ぶ」企業文化を作り上げました。

廃油事件で王品神話崩壊

 14年、食用廃油などを原料に使ったラード(豚油)が食品・飲食業界に出回った廃油混入事件が発生し、王品神話の崩壊が始まりました。この未曾有の危機の対応に加え、戴氏の「月給が5万元に届かない若者は貯蓄をするな」などの失言で、消費者のイメージが崩れ、株価は一時240元を割り込みました。

 15年7月、戴氏が引退を表明し、陳氏が董事長を引き継ぎました。戴氏が物腰が柔らかく、常に笑顔だったのと比べると、陳氏は笑顔が少なく、自身のことを「先做再說(まずは行動)」と評しています。リーダーシップスタイルは、「新、簡、速、実(革新、シンプル、効率、真実の追求)」で、経営がうまくいかなければ、「一からやり直せばいい」といいます。

 陳氏が引き継いだ後、運営、市場、文化の問題に直面しました。台湾の店舗数は増えているのに、売上高は減少しており、店を増やしたからといって儲からないことに気づきました。そこで、メニュー、規模、管理を見直し、16年には、一気に35店を閉店し、3億元の損失を計上しました。

王品3.0で国際化

 王品は「バージョン1.0」で飲食業に注力し、「バージョン2.0」では多ブランド化を進めました。

 陳氏は「バージョン3.0」で国際化を進めています。従業員が創業する「組織創業」方式で新ブランドを創設したり、海外の有名な飲食ブランドを台湾に呼び込みました。

 例えば、21年、シンガポールの中華レストラン「莆田(PUTIEN)」を台湾でオープンしました。王品のブランドはこれまでセットメニューばかりでしたが、莆田は単品(アラカルト)で注文します。

食材加工を集約

 王品は多数のブランドを有し、店舗数は合わせて300店以上と、規模が圧倒的です。陳氏は「規模の経済」に着目しました。各店舗でなく、セントラルキッチン(集中調理施設)でまとめて食材を切れば、店舗のコストを下げることができます。

 陳氏は、食材の購買から、加工、検査、販売までワンストップで行う子会社、万鮮を設立しました。人件費を抑制し、統一された品質管理で、生産効率が向上しました。

 こうしたサプライチェーン(供給網)のリソース統合が、陳氏がよく口にする「サプライチェーンの相乗効果」のことです。

新ブランド生存率90%に

 鍋料理店「聚」は、セットメニューしかなく、消費者の選択肢が限られてしまい、業績が伸びませんでした。そこで、若年層は購買意欲が高く、鍋料理や焼き肉を好むことに注目し、台北市大安区忠孝東路の「聚」を、和牛食べ放題の新ブランド「和牛涮」に改装しました。

 続いて、▽鍋料理の「尬鍋」、▽和牛麻辣(マーラー)鍋の「嚮辣」、▽焼き肉食べ放題の「肉次方」、▽鉄板焼きの「就饗」──などをオープンしました。新ブランドの生存率は50%から90%まで上昇しました。

 

王品連鎖餐飲集団董事長 戴勝益氏

https://www.ys-consulting.com.tw/column/1063.html

 

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ワイズコンサルティング社高級顧問

 年間200回以上のセミナー講演を行い、法律、経営、人事、財務、人材育成など、多岐にわたるテーマを幅広く扱っている。なかでも難解な内容をわかりやすく伝えることに定評があり、参加者から高い評価を得ている。ワイズのエース講師として、どんなテーマにも柔軟に対応でき、ユーモア有る話術で魅力的な講演が可能。(言語)中国語◎

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