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第209回 畜産物最大手、大成集団の韓家宇・董事長/台湾


コラム 経営 作成日:2023年12月22日

台湾流経営策略 台湾の名経営者

第209回 畜産物最大手、大成集団の韓家宇・董事長/台湾

記事番号:T00112898

 大成長城企業(グレートウォール・エンタープライズ)を中核とする大成集団(グループ)は、畜産物や鶏卵の最大手メーカーです。▽中国、▽インドネシア、▽ベトナム、▽マレーシア、▽カンボジア──に海外拠点があります。

/date/2023/12/22/20daisei_2.jpg大成集団の生食できる鶏卵は、飲食業界のアカデミー賞とも呼ばれる食創賞を受賞した(大成集団リリースより)

 畜産、食用油、食肉、水産養殖、食品加工のほか、飲食レストランチェーンも手掛けています。レストラン事業は、▽排骨(スペアリブ)定食の「中一排骨」、▽とんかつ新宿さぼてん「勝博殿」、▽香港式カフェレストラン「檀島香港茶餐庁」──があります。

 2022年の連結売上高は1130億台湾元(約5200億円)で、純利益は28億5000万元でした。

マクドナルドと正面対決せず

 大成集団は1957年、韓浩然氏が設立しました。当初は、大豆油と豆餅のメーカーでした。

 韓浩然氏の長男である韓家宇氏は、米国のコネチカット大学でコンピューターサイエンスの修士号を取得し、エンジニアとして働いていました。91年に台湾に戻り、大成集団に入社し、バーガーキングの総経理に就任しました。バーガーキングはそれまで総経理が3人も交代しても赤字続きでした。

 韓氏は、マクドナルドと真っ向勝負するのではなく、病院や学校などに出店しました。15店をオープンしたころ、バーガーキングは徐々に利益が安定するようになりました。

 01年、韓氏は董事長に就任し、大成集団を台湾最大の畜産物メーカーへと導きました。売上高は毎年のように過去最高を更新しました。

囲碁を経営に応用

 韓氏は、囲碁でアマチュア五段です。碁盤から経営の心得を学びました。経営は、囲碁の対局と同じで、勝つ一手を意識するのではなく、布石を打つことが重要だと考えています。布石が良ければ、後の一手一手はスムーズに打てます。

 韓氏は、「5つの財」と「3つの本質」で、台湾の食品業界で最強の執行長(CEO、最高経営責任者)に登り詰めました。

 5つの財とは、▽管理財、▽技術財、▽機会財、▽ブランド財、▽販売チャネル財──です。

1.管理財

 韓氏は、この業界は一文商い(少額の商売)のため、暴利をむさぼることはあり得ず、管理財が必要だといいます。

 目標管理制度(MBO)を実行し、バランススコアカード(BSC)などのツールを導入しました。食品業界で初めて、ERP(統合基幹業務システム)を導入し、各部門の責任者が日々、売上高や利益などの数値を把握できるようにしました。

2.技術財

 食品業界で最も重要な食の安全を守るため、国家規格に準じた研究室、センターラボを設立しました。配合を研究し、他社より栄養価の高い製品を作ったり、動物の病気を予防したりします。

3.機会財

 投資や投機ではなく、業界の特性を把握することです。例えば、2008年、世界金融危機(リーマンショック)で小麦、大豆、トウモロコシなどの価格が大暴落した際、大成集団は大量に買い付けました。コストが低く、09年には高い利益を出しました。

4.販売チャネル財

 大成集団は、肉製品や鶏卵、食品をコンビニエンスストアやスーパーマーケット、量販店、レストランなど、さまざまなチャネルでも販売しています。自社に物流部隊もあります。

5.ブランド財

 大成集団は、畜産だけでなく、消費者向け食品にも業務範囲を拡大し、好評です。23年、チキンエキススープ「大成鶏精」が食品業界のミシュランと言われるiTQi(優秀味覚賞)一つ星を獲得しました。22年には、台北国際牛肉麺大賞を受賞しました。ペットフードは、国家ブランド玉山賞を受賞しました。いずれもブランド財の成果です。

生食できる鶏卵

1.集中と選択

 18年、3年連続で赤字だった中国事業の整理に着手しました。「棄子争先(小さい石を捨てて先手を取れ)」という囲碁の教え通り、改善困難なものは打ち切り、競争力があるものだけを残します。

2.強者同士で手を組む

 大成集団は、日本の製粉大手、昭和産業と提携しています。商社大手の丸紅、水産大手のニチレイとも提携しています。

3.将来へ投資

 大成集団は、将来のトレンドを見据えて、常に投資を拡大しています。例えば、台湾最大の食品加工工場を建設したり、バイオセキュリティーを見越して、動物ワクチンに投資しました。優良な繁殖用種豚との繁殖も行っています。

 今年10月には彰化県で10億元以上を投じ、昭和産業の技術協力で、1時間当たり38万個の鶏卵を生産できる鶏卵工場を稼働しました。生食できる鶏卵を台湾で初めて生産しています。

 今後は、▽動物用の栄養食品「全能栄養技術(トータル・ニュートリーションテクノロジーズ)」、▽動物用ワクチン「万能生医(ワンダーバックス)」、▽ペットフードの「毛能寵物栄養生技(GOMOペットフード)」──の「三能」に注力する方針です。

荘建中

荘建中

ワイズコンサルティング社高級顧問

 年間200回以上のセミナー講演を行い、法律、経営、人事、財務、人材育成など、多岐にわたるテーマを幅広く扱っている。なかでも難解な内容をわかりやすく伝えることに定評があり、参加者から高い評価を得ている。ワイズのエース講師として、どんなテーマにも柔軟に対応でき、ユーモア有る話術で魅力的な講演が可能。(言語)中国語◎

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