記事番号:T00104304
統一企業(ユニプレジデント・エンタープライゼズ)は、台湾最大の食品・飲料メーカーです。小売業や物流業、輸入業、建設業、投資運用業なども手掛けています。
最大の子会社は、コンビニエンスストア最大手、セブン-イレブンを展開する統一超商(プレジデント・チェーンストア)です。台湾だけでなくアジアにも出店し、計1万店を達成しました。台湾が約6600店、フィリピンが3200店、中国の上海市と浙江省が約200店です。
2021年の連結売上高は4735億台湾元(約2兆1000億円)、純利益は198億元、1株当たりの純利益(EPS)は3.5元でした。
多角化で成功
統一企業は1967年、高清愿氏が設立しました。サービス、品質、信用の良さと、適正価格が経営理念で、同社の企業文化にもなっています。
統一企業が急成長したのは、多角化戦略が成功したためです。日本の即席麺産業の成長を目にし、台湾市場に即席麺を導入したほか、▽缶詰、▽調理済み冷凍食品、▽パン、▽肉製品、▽乳製品、▽調味料、▽油脂、▽飲料、▽飼料──など製品を多角化し、食品業界で重要な地位を占めるようになりました。
79年に統一超商を設立し、流通・小売チェーンに参入しました。セブン-イレブンは、台湾人の生活習慣を変えただけでなく、台湾の販売チャネルに大きな変革をもたらしました。
安売り認めず
現董事長の羅智先(アレックス・ルオ)氏は、高氏の娘婿です。56年生まれで、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)でMBA(経営学修士)を取得しました。
統一企業では海外部門の課長からスタート。2007年に総経理に就任し、13年に董事長に就任しました。
羅氏は、統一企業に改革、グローバルな経営が急務であることは百も承知でしたが、総経理に就任後、まずは本業に集中し、グループの実力向上を図りました。
羅氏のビジネス思考は米国式で、数字で考えることに長け、利益創出が第一です。部下には目標を与えるだけでなく、詳細を隅々まで確認し、半年や1年の期限までに目標を達成できなければ、私情を挟まず、すぐに担当を交代させました。従業員の気を引き締めることが目的でした。
創業者の高氏の経営が加点方式とするならば、羅氏の経営は減点方式といえるでしょう。
また、羅氏は、出資先400社の財務状況を精査し、万通商業銀行(GCB)や液晶パネルメーカーの統宝光電(トポリー・オプトエレクトロニクス)など、食品や流通業以外の100社余りから出資を引き揚げました。
本業の食品事業では、粗利益率が平均に当たる30%を下回る製品の販売を終了しました。従業員がむやみに新製品を開発しないよう、米アイスクリームブランド、ベン&ジェリーズが販売を終了した「フレーバーの墓場」の特設ページを設置したことをまね、自社サイト上に、早期に販売終了した製品を供養する「ブランドの墓場」を設置しました。幹部には、旧暦の毎月1日と15日に哀悼の意を示すため花を供えるよう指示しました。
「2年で墓場に死体1000体が横たわった」と、羅氏は腹立たしげな一方で、おかしそうに語りました。
羅氏は、売れずに売り場から撤去されるとしても、利益を優先しました。低価格商品は希望小売価格以下で販売したり、販促セールを実施したりしてはならないと、販売業者に対し、強気で要求しました。スーパーマーケット最大手、全聯福利中心(PXマート)や量販店大手の大潤発(RTマート)が怒って、即席麺の人気商品「科学麺」の販売を取りやめたほどでした。
積極的に安定経営
羅氏は経営で、業績だけでなく、制度を重視しました。企業は、制度とシステムによって経営を永続できると考えているからです。
高氏が決めた「満60歳で一線を退き、65歳で定年」という制度を、羅氏は自身を含め、どんなに優れた成績を残した幹部に対しても適用しました。組織が若返るだけでなく、人、事、物がいずれも安定した組織にできるためです。
羅氏は、「安定というのは、決して何もしない消極的な管理ではなく、万全に準備してから行動する積極的な管理を指す」と話します。
安定経営を守った結果、統一企業は食品市場が飽和状態でも、新型肺炎(SARS)流行や世界金融危機などの試練を乗り越えることができました。時価総額をさらに成長させ、経済誌『天下雑誌』が発表した台湾50大企業グループに、食品業で唯一ランクインしました。
製造業から生活産業へ
統一企業は19年、韓国の飲料・菓子メーカー、熊津食品(ウンジン・フーズ)の株式の75%を70億元で取得し、北東アジアの食品市場に進出しました。北は日本や韓国から、南はインドネシアまでを網羅し、▽研究開発(R&D)と製造、▽輸出入と流通、▽小売と体験、▽提携と買収──を軸に成長する「アジア流通プラットフォーム」構想の一環です。
羅氏は、サービス業は消費者こそが主役と語り、「製品を作るのではなく、ブランドを作る」とスローガンを掲げ、暮らしに密着した生活産業の企業に転換する必要があると考えています。
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