ワイズコンサルティング・グループ

記事番号：T00101584

　アパレル受託生産メーカー、聚陽実業（マカロット・インダストリアル）は、紡織業界の台湾積体電路製造（ＴＳＭＣ）と呼ばれています。主な顧客は▽ユニクロ、▽ＧＡＰ、▽Skechers（スケッチャーズ）、▽ＺＡＲＡ、▽Ｈ＆Ｍ、▽ＮＥＴ──など日本や米国などのアパレルブランドや、ウォルマートなどの量販店です。主な生産拠点は▽ベトナム、▽インドネシア、▽カンボジア、▽フィリピン、▽中国──などにあり、年間15種類以上、2,500パターンを生産できる、世界５位以内のアパレル受託生産メーカーです。

　2021年連結売上高は289億3,100万台湾元（約1,200億円）、税引き前利益は33億9,800万元、１株当たり純利益（ＥＰＳ）は14.33元で、過去最高でした。

働き盛りで失業

　周理平氏は1951年に生まれました。90年、台湾元高に伴い、労働集約型の紡織業や製靴業は、コストが低い東南アジアなどに移転が進みました。当時、アパレル業の総経理だった周理平氏は、工場が倒産し、失業しました。まだ中年だった周氏は、社員20人余りと800万元を出し合い、マカロットを設立しました。

　マカロットは当初、自社工場を持たず、台湾で受注し、原材料を調達し、生産はフィリピンのアパレル受託生産メーカーに委託していました。

　ある日、ウォルマートの生産委託先で問題が発生し、マカロットに大量の受注が舞い込みました。この受注に全力で応えたことで、マカロットの運命が変わりました。

ＯＤＭに事業転換

　マカロットは、ウォルマートという大口顧客を手に入れ、受注から生産まで手掛けることを決めました。その後、ＯＥＭ（相手先ブランドによる生産）からＯＤＭ（相手先ブランドによる設計・生産）にビジネスモデルを転換し、中小型の顧客からも受注できるようにしました。

　98年、アパレル研究開発（Ｒ＆Ｄ）スケジュール管理システムを独自開発しました。2000年には基幹系情報システム（ＥＲＰ）を導入し、顧客にカスタマイズしたモジュールを数多く開発しました。

　本部で、欧米など世界中の顧客の要望にすぐに応えたり、世界各国・地域の拠点の生産スケジュールや在庫を把握したりできるようになり、納期を短縮し、市場のニーズにすぐ応えられるようになりました。

チーム・誠実・共有を重視

　周理平氏は、経営管理だけでなく、企業文化を重視しています。「チーム、インテグリティー（誠実さ）、共有」を大切にし、「時代とともに進む」が口癖です。

　待遇も独特です。給与は市場平均より20％高く、一般社員は固定給65％で成果給35％、マネジメント層は固定給20％で成果給80％などの給与体系としています。

　従業員持株制度も導入しています。従業員は毎月5,000元まで自社株を購入でき、会社が最大3,500元を補助します。一般社員にとっては、毎月６～７％の臨時収入に等しく、従業員の97％が自社株を保有しています。

コロナ禍、顧客を支援

　20年以降、新型コロナウイルス感染症が世界的に流行しました。多くの企業は、顧客に代金の支払いを催促しましたが、周理平氏は、最高90日間の支払い猶予を認めました。また、３月に予定していた製品の出荷を５～６月に遅らせるなど、出荷日の延期も認めました。

　最も困っているときに援助の手を差し伸べる「雪中送炭」は、顧客の心に届きました。その後、マカロットに多くの受注が舞い込みました。

　こうした顧客支援ができたのは、財務健全性があってこそ。収入が途絶えたとしても、１年間は持ちこたえられることができます。マカロットにとって長年の財務基準です。

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