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東日本大震災の後、作家・村上龍氏の寄稿文がニューヨーク・タイムズに掲載され、好評を得ました。村上龍氏は、政治経済に関する小説に長けている上、文壇以外とも積極的に関わっていて、村上春樹氏とともに時代を代表する作家と目されています。ですが台湾では、村上龍氏の小説は数少なく、村上春樹氏ほどは売れていません。今回はその理由を探っていきます。
台湾小説の主流と大きなズレ
その理由の一つは、村上龍氏の小説の題材が台湾人にとって重すぎることです。台湾最大手の書店、誠品書店の年間ベストセラーランキング(2009年)の上位は、家族をテーマにした小説や恋愛小説にほぼ占められています。トップは、元・台北市文化局長の龍応台氏が、家族の再会や死別について描いた「大江大海一九四九」です。2位は有名な恋愛小説作家、故・張愛玲氏の最後の作品「小団円」です。ヒット小説の傾向をみると、台湾人は家族や愛情に関する小説に興味があるといえそうです。
一方、村上龍氏の作品には、セックスと暴力と麻薬があふれています。近年では日本の金融など政治経済、教育などをテーマにした小説も少なくありません。ただ現実的過ぎるのか、内容が重すぎるのか、なかなか台湾人に受け入れられていません。ちなみに同書店の翻訳小説ランキングでは、村上春樹氏の「IQ84」が2位となりました。日本では同じ地位にある作家なのに、台湾での人気の差がうかがわれます。
途絶えた出版計画
もう一つの理由は、村上龍氏の作品を長期的に台湾に紹介しようとしていた出版社がつぶれたからです。村上春樹氏のケースと同じく、村上龍作品ならではの雰囲気が商機につながると思った三久出版社が、90年代から計画的に出版していたのですが、台湾人に受け入れられなかった上、会社の経営にも問題があったため、倒産してしまいました。近年では、大田出版社が村上龍氏の作品を引き続き紹介していますが、村上春樹氏ほどはファンからの共鳴の声が聞かれないようです。
わたしは村上龍氏の小説を大学時代から読んでいます。村上龍氏の小説は、腐敗した社会のほか、経済、政治など日本や世界の社会情勢の話も多くあり、しっかり集中して読む必要があります。台湾ではこうした小説がないので、カッコいいなと思いました。村上龍氏にあまり人気がないのは、小説の問題ではなく、台湾の出版環境と読書習慣が関係していると思います。
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