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第29回 台湾語の過去・現在・未来


コラム 台湾事情 作成日:2011年5月30日

台湾人研究所

第29回 台湾語の過去・現在・未来

記事番号:T00030290

 一概に「台湾人」と言えど、実際は色々なエスニック・グループ(族群)で構成されています。大きく分けると、最も早くから住んでいる「原住民」、清朝時代に移住した「閩南人」と「客家人」(いわゆる「本省人」)、中華民国政府と共にやって来た「外省人」となります。

 それに伴い言語もさまざまでです。日本では東京弁、関西弁といった方言がすべて日本語と総称されるのに対し、台湾の場合は中国語(北京語)、台湾語(閩南語)、客家語、原住民語と、異なる言語に区分されます。主に使われているのは中国語ですが、今回は、少なからぬ人が使用している台湾語についてお話します。

国民党の言語統一に対する反発

 1684年、中国の清朝が海禁処分(海外渡航や海上貿易の規制)を停止したことで、福建省南部に住んでいた中国人が、台湾へと大量に移住しました。その結果、彼らが使用していた「閩南語」(福建省南部の方言の意)が、原住民の話していた言葉に替わって、台湾の代表的言語となりました(すなわち台湾語)。しかし1949〜55年に中華民国政府が移って来て、国民党が言語統一政策を実行し、閩南語などの「方言」を消滅させようとしました。

 ところが閩南人はこの政策に反発し、こっそり閩南語=台湾語を使い続けたため親から子へと伝わり、消滅せず生き残ることになりました。2009年の中華民国年鑑によると、台湾の全人口のうち73%の人は台湾語が使えるとの統計が出ています。

 さらに波仕特線上市調網が2011年4月27日に実施した調査結果によると、「自分の族群の言語に精通していますか」という質問に対し、閩南人の「精通している」との回答は39%と、他の族群に比べ最高を記録しました。

言語の政治化が無意味に

 上記のような政治的背景もあって現在、台湾語と中国語は政治家たちの政争の道具となってしまっています。5月24日のワイズニュースに、台湾アイデンティティーの確立を目指している民間団体は、国民党が教育現場で「台湾語」を「閩南語」と呼び替えようとする方針について抗議したという記事がありました。

 現在政権を握る国民党が中国に接近するため、台湾アイデンティティーに関するものを抹殺しようとしているとの見方もあります。しかし今の若者にとって、本省人と外省人との壁は薄くなっています。昔のような「省籍衝突(本省人と外省人の対立)」も、もちろんありません。わたし(閩南人)は、台湾語をしゃべれない外省人を差別しません。言語で台湾人を区別するような政治的行為はどんどん無意味になっていくと思います。

台湾人の言語を外国語から守るべき

 わたしは、台湾語と中国語はどちらも台湾を代表する言語で、特に名称に関して争う必要はないと思います。

 それよりもさらに注意すべきなのは、「外籍新娘(外国籍の新婦)」が増えていることです。近年、フィリピンやベトナムなどの女性と結婚する台湾男性が増え、子供は母親の文化や言語の影響を受けるため、中国語も台湾語もあまりしゃべれなくなっているケースが目につきます。こうした傾向が進む中、より大切なのは、台湾人の言語(種類問わず)を、どうやって次の世代に受け継いでいくかということだと思います。

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