コラム

記事番号:T00066068
2016年8月26日16:16

 鴻海精密工業の副総裁、戴正呉氏が13日、シャープ社長に就任しました。念願のシャープ買収を果たした郭台銘(テリー・ゴウ)董事長がシャープを託した戴氏とは、どのような人物なのでしょうか。2回にわたってご紹介します。

/date/2016/08/26/daizhengwu_2.jpgシャープの社章を付けた戴社長(シャープ提供)

 戴氏は1951年、宜蘭県で生まれました。74年、大同(TATUNG)が設立した大同工学院(現・大同大学)化学工程学系を卒業し、大同に就職しました。大同は当時、台湾最大の民間メーカーで、戴氏は日本に2年間、駐在しました。このときに日本語と日本のビジネス習慣を身に付けました。

 85年、大同を退職し、鴻海に入社しました。鴻海は当時、売上高3億台湾元余り、社員は300人足らずの小さな受託生産メーカーでしたが、戴氏はコネや紹介ではなく、新聞の求人広告を見て応募したそうです。大企業の大同から、地味な会社だった鴻海に転職するとは、先見の明があったのでしょう。

 鴻海入社後、コスト管理に精通し、効率的な工場管理を行い、口数少なく勤勉に働く姿が郭董事長の目に留まりました。92年、鴻海副総経理に就任。05年からは鴻海副総裁を任されています。コンシューマーエレクトロニクス事業、競争製品事業、テレビ事業の責任者も歴任しました。

徹底的なコスト管理

 日本を熟知している戴氏は、鴻海の「徳川家康」といわれているほか、「製造マン」の異名もあります。薄利から利益を生み出すことが得意だからです。

 平均販売価格(ASP)が毎年30%下がるといわれる電子製品業界で、戴氏は「受注価格が30%下がれば、受注を30%以上増やさなければ、売上高は増えないし、人件費は30%増やしてはならない」と言っています。簡単なロジックですが、実行するには徹底的なコスト管理が必要です。「成長し続けるために人を増やすのでは、利益は増えない」と話す戴氏は、下記3点を実行しています。

1.在庫の正確な掌握

 戴氏は「われわれの生産ラインは在庫がないどころか、『マイナス在庫』だ」と言っています。在庫の部品は入荷するとすぐに生産ラインで使う上、部品の出荷リストが予定より早く倉庫に届き、常に在庫がない状態だからです。

 また、在庫は一定期間(例えば2週間や1カ月)出荷できなければ、不良在庫として評価損を計上します。つまり、出荷や入荷を厳格に管理しなければ、会社の業績は悲惨なことになり、春節ボーナス(年終奨金)がもらえません。このため、鴻海の生産ラインはほぼ予定数を達成しています。

2.規模の経済

 例えば部品を一度に2万個注文すれば、200個を注文するより大幅な値引きを要求できます。また何度も購入し、一定量以上に達すれば、大幅な値引きを受けられます。この「規模の経済」で、鴻海は最も安く調達しています。

3.競争力強化

 鴻海は目に見える設備、工場棟、原材料、人件費だけでなく、組み立て、物流、人材教育に至るまでコストをかけていると戴氏は言っています。利益を出すだけでは、会社は2~3年しか持ちませんが、競争力があれば、会社は永続することができるからです。

第122回 鴻海精密工業副総裁 戴正呉氏(シャープ社長)(2)
https://www.ys-consulting.com.tw/column/66334.html

荘建中

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シニアコンサルタント

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