第116回 ASE董事長 張虔生氏


コラム 経営 台湾事情 2015年9月4日

台湾流経営策略 台湾の名経営者

第116回 ASE董事長 張虔生氏

記事番号:T00059104

 半導体パッケージング・テスティング(封止・検査)世界最大手の日月光半導体製造(ASE)は8月21日、同業で台湾2位、世界3位の矽品精密工業(SPIL)の株式最大25%を、株式公開買い付け(TOB)を通じて取得すると発表しました。ASEは企業連合による競争力強化が目的と表明しましたが、SPILは反発し、鴻海精密工業との資本提携という意外な対抗策を打ち出しました。今回は台湾半導体業界で今最も注目の、この攻防の渦中にあるASE董事長の張虔生氏をご紹介します。
温州商人の家庭に生まれる

 張虔生氏は1944年上海で、温州商人の家庭に生まれました。49年に一家で台湾へ渡り、若いころは海運業、不動産業、建築業で経験を積みました。大学は台湾大学電機工程学科へ進み、米国イリノイ工科大学で修士号を取得しました。台湾へ戻ってからは家業の建設業を手伝いましたが、73年、建設業界の景気低迷を受けて、家族の資金援助により電子業で起業します。84年には、弟の張洪本氏とともにASEを設立しました。

モトローラの受注が転機

 創立当初は半導体生産を主に行っていましたが3年間は赤字経営が続き、銀行からの融資も受けられず、母親が不動産を売却して捻出してくれた資金によってなんとか経営を続けていました。しかしその後、モトローラから受注を得たことが転機となりました。モトローラの審査は非常に厳しいものでしたが、ASEは製造工程の改善を進めて見事採用されるに至りました。知名度が高いモトローラに採用されたことで、中堅メーカーからも信頼を得て受注を増やしていきました。

買収で業界最大手に

 ASEは財務経験者を採用して大胆な資産運用の見直しを行い、融資で得た資金で封止検査用の高性能設備を調達していきました。また、企業と工場の買収を進めていきます。

 90年以降、台湾福雷電子、米検査最大手のISE Labsを買収しました。続いてモトローラの中壢工場、韓国・坡州工場、NECの山形封止検査工場も買収し、日本と韓国に事業拠点を得ました。これらの買収を経て、ASEは半導体封止検査業界で世界最大手となりました。さらに、研究開発の継続が困難になったIDM(垂直統合型半導体メーカー)も買収して、技術のみならず顧客も獲得していきました。

 ASEは毎年、同業他社の2倍以上の研究開発(R&D)費を支出していますが、合併による生産能力の拡大によって大きな費用対効果を生み出しました。

 張虔生氏は「顧客のニーズに合わせる」という経営理念を掲げています。チップの小型化、高性能化、処理速度の追求や、専売特許の獲得を通じ、技術革新を進めることで、顧客に対して完成度の高い提案を行ってきました。ASEは出荷した製品全てに自社のロゴを入れています。これは製品に対する自信の現れといえます。

 ASEとSPILの株式をめぐる攻防戦は、当面はASEがどの程度の株式を集められるかが注目点です。狙いどおり台湾の封止・検査業界が大型再編を迎えるのか、今後の展開が注目されます。 

荘建中

荘建中

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