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台達電子工業(デルタ・エレクトロニクス)は電源製造の世界最大手で、執行長(CEO)の鄭平氏は創業者、鄭崇華董事長の長男です。2012年に父親から事業を引き継いだ後、それまでの受託生産から自社ブランド分野を開拓して、会社の年間売上高を120億台湾元増やし、株価の時価総額を就任当日の2,143億元から4,100億元へとほぼ2倍に拡大させ、台湾ハイテク業界5位に押し上げました。
エビ事業失敗で入社
鄭氏は子供時代に父親が常に忙しく外を駆け回っていたのを見て「父の会社には入らない」と決め、兵役を終えた後、タイでエビの養殖事業を始めます。しかし、投資に失敗して、結婚して家族を養わなければならなくなった事情もあり、養殖を断念します。理想と現実の差を痛感した鄭氏は、父に頭を下げてデルタに入社します。
鄭氏は入社後、まず中国の工場で現場主任となり、他の社員と寝食を共にしました。当初業界のことは右も左も分からない状態だったため、誰もやりたがらない雑用も積極的にこなしました。
工場運営に詳しくなった頃、広東省東莞市と江蘇省蘇州市にある工場の生産ラインの見直しに取り組みます。日本のコンサルティング会社に問題点を指摘してもらうなどした結果、2年間で東莞工場は生産額が37%増加、65時間かかっていた生産工程を2時間まで短縮することに成功しました。
また、社員のやる気を引き出して生産工程改善に生かすべく、コストカットで浮いた費用を東莞工場の社員3万人に還元して、平均月給をたった2年間で700人民元から1,500人民元へと高めました。
初代ブランド部門長に
しかし、受託生産事業は生産効率をいくら上げたところで、利益率はなかなか上がりません。そこでデルタは09年より自社ブランド事業とソリューション事業への注力を始めました。鄭氏は翌年、市場分析の能力を買われて初代のブランド部門長に任命され、それまで10数本あった生産ラインを整理して、部品、エネルギー管理、スマートグリーンライフの3大分野にまとめました。
欧米大手に対抗
12年6月、執行長に就任した鄭氏は、ソリューション事業拡大のために事業部間の協力体制強化が必要と考えます。大きな組織をまとめるのは容易ではないので、管理職者を中心に編成した方針決定委員会を設置して、投資や合併、新方針など会社の方向性を議論、決定していきました。そしてデルタはソリューション事業で、100年の歴史を持つ欧米のソリューション大手に対抗し得る技術、スピード、柔軟性、サービスのコストパフォーマンスを提供するまでに成長しました。
デルタは14年2月、170億台湾元で欧州最大の電源システムメーカー、エルテックの買収を発表しました。エルテックは電源システムの他、通信、データセンターにも強みがあり、最近は新興市場であるアフリカにも市場を拡大しています。エルテック買収はデルタのさらなる成長にとって追い風となることでしょう。
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