コラム

記事番号:T00068645
2017年1月20日15:47

 スマートフォン用カメラレンズ世界最大手の大立光電(ラーガン・プレシジョン)の株価が2017年1月5日、終値で4,050台湾元を付け、台湾株式市場で初めて4,000元を突破しました。これは1単元(1,000株)でポルシェの高級SUV(スポーツ多目的車)「カイエン」が買える金額です。

/date/2017/01/20/20koram_2.jpg林執行長は株価4,000元突破に「特別な感情はない」と話した(中央社)

 ラーガンの16年連結売上高は483億5,000万元、粗利益率は67.05%、1株当たり純利益(EPS)は169.4元でした。

小児科医師から転身

 ラーガン執行長の林恩平氏は、高雄医学大学の医学科を卒業、米国ドミニカン大学でMBAを取得しました。小児科の医師となりましたが、06年に46歳で光学産業に転身。ラーガン創業者の父親、林耀英氏の下で特別助理として4年間学び、10年6月に執行長に就任しました。

 就任当時のラーガンの時価総額は700億元でしたが、今や時価総額は5,500億元超と、たった6年半で8倍に成長させました。

問題にすぐ対応

 林氏は小児科の医師を10年以上務めていたので、問題が起きたらすぐに対処する習慣が身に付いています。病気をそのまま放置すれば、合併症を発症したり、命に関わることがあると知っているからです。

 林氏は、ラーガンにとって歩留まり率が最も重要な指標と考えています。生産ラインで問題が起きれば、会議を開いて討論するのではなく、直接生産ラインに出向き、解決を図ります。

 そのため、ラーガンの会議室はまれに見るほどの狭さです。幹部のオフィスも非常に狭く、机と椅子が1組あるだけです。社内には従業員の休憩室もなく、休憩時間には直接床に座るか、壁にもたれて休むしかありません。

師弟制度で囲い込み

 光学製品の開発や製造には、言葉で表現することのできない多くの「コツ」が必要とされます。そのコツは実際の経験によって伝承するしかありません。ラーガンは技術的リードを維持するため、「師弟制度」で従業員を教育しています。

 「師匠」は技術を教えるだけでなく、予定通りに研究開発(R&D)を進め、歩留まり率を向上させるため、「弟子」にラーガンの企業文化を伝えるのも重要な任務です。そのため、師匠は強要しませんが、残業に応じるかはどうかも評価に反映します。

 ラーガンは毎年、純利益の20%を従業員に分配しています。勤続3年のエンジニアで50万~100万元に上ります。さらに、ボーナスが100万元を超えたとしても、3年間に分け33万元ずつ支給することで、従業員の離職防止を図っています。

 またラーガンには人材流出防止システムとして、「技術の細分化」があります。従業員一人一人は特定分野の技術に特化しているものの、レンズ製造工程の全体を把握できません。そのため、たとえライバル会社が生産設備を購入したり、従業員を引き抜いても、ラーガンの脅威とはならない仕組みとなっています。

ライバルより少しでも速く

 ラーガンはかつて、米アップルの関連銘柄と見なされていましたが、今の好業績はアップルが主因ではありません。中国のスマホ大手ブランド、▽華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)▽広東欧珀移動通信(OPPO、オッポ)▽北京小米科技(小米、シャオミ)──などの旗艦機種にデュアルレンズが標準装備され、ラーガンの高稼働率を支えているようです。

 林氏は、「ライバルの遅れに期待するのではなく、どこよりも速く走らなければならない」と戒めています。

 外資系証券会社4社は、ラーガンの目標株価を5,000元に設定しており、これからのさらなる成長が楽しみです。

第101回 ラーガン創業者 林耀英氏
https://www.ys-consulting.com.tw/column/49686.html

荘建中

荘建中

シニアコンサルタント

難しい事をわかりやすく伝えるプレゼン力はワイズNo.1、毎年セミナーや研修で200回/年を越える講演を行っている。