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労務コンサルタントの
事件簿61「台湾選挙投票日の割増賃金にまつわるトラブル」


コラム 人事労務 作成日:2022年11月11日

労務コンサルタントの事件簿

労務コンサルタントの
事件簿61「台湾選挙投票日の割増賃金にまつわるトラブル」

記事番号:T00109257

 台湾では2022年11月26日(土)に統一地方選挙の投開票が行われます。選挙の投票日は労働基準法第37条に規定の「休日とすべき日」にあたりますが、当日は従業員の投票を妨げない配慮の下、本人の同意を得た上で出勤させることが可能です。但し、通常の賃金の倍額を支給しなければなりません。
 さて、投票日の賃金取り扱いのルールについては世間でも正しく認知されていないことが多く、うっかり法律違反となってしまっている企業がよく見られます。そこで今回はよくある違反の事例をご紹介します!

田村総経理:李さん、投票日は賃金が2倍になると聞いたが、なるべくアルバイトにシフトに入ってもらった方が良いか?
李店長:そうですね。遅番には午前中に、早番には午後に投票に行ってもらえば、投票の妨げにはならないので良いと思います。
田村総経理:投票できる時間帯は?
李店長:午前8時から午後4時までです。
田村総経理:その場合って2倍の時給を支払わなければならないのか?
李店長:出勤前や退勤後の時間外に行けるから割増しは必要ないでしょう。他社でも投票日はなるべくアルバイトに対応してもらっているところが多いですよ。
田村総経理:なるほど、それは良かった。出勤した社員全てに割り増しがつくのはきついからな。
李店長:はい。当日はアルバイトをメインでシフトを組むようにします。

(その1ヶ月後)
張人事部長:総経理!大変です。労働局から公文書が届きました。投票日の出勤者に割増賃金を支給していないことが指摘されています。担当者によると、当日はパートタイム社員にとっても休日ですので、出勤させたら割り増しをつけなければならないとのことです。
田村総経理:なんだと!業務時間外に投票にいってもらってるのになぜ割り増しをつけなければならないんだ!?

◉解説
 台湾の労働基準法上、選挙投票日は国定休日と同じ扱いですので、たとえ1時間の出勤でも2倍の賃金を支給しなければなりません。また、労働部の法解釈によれば、休日とすべき日は「午前0時から午後12時までの24時間」を指しているため、厳密には投票の時間帯と全く重ならない夜間勤務の社員にも2倍の賃金を支払わなければならないのです。
 他の企業では、「投票に行く必要な時間分だけ有給の休暇(公用休暇)を与えればよい」と誤解をしていることも多く、うっかり法律に違反してしまっていることがよく見られます。但し、このようなケースで実際にパートタイム社員から訴えられる確率としてはかなり低いので、そのリスクよりも大幅なコスト増を防ぐことを優先する企業も少なくありません。投票の時間帯はきちんと割増賃金を支払っていれば、リスクはかなり低減できます。もしくは、投票日の出勤は全て代休扱いとするのもよく使われる手段です。ただ、代休は本来従業員が希望した場合に限り与えるもので、強制はできないため、従業員と合意の上で行うと良いでしょう。

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