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労務コンサルタントの事件簿47「残業承認制の導入で注意すべきことは?」


コラム 人事労務 作成日:2016年9月30日

労務コンサルタントの事件簿

労務コンサルタントの事件簿47「残業承認制の導入で注意すべきことは?」

記事番号:T00109294

 A社は、新竹に本社を構える自動車関連部品の販売を主とした会社です。従業員は約100人です。A社では「残業代を支払うのは月10時間まで」という総経理の方針により、それ以上の残業に対する残業代の支払いは行っていませんでした。しかし、就業規則改定に伴い、労動局のアドバイスにより、今後は残業代をきちんと支払う方針となりました。

総経理:「管理部長、ダラダラ残業をはじめとする無駄な残業にまで残業代を支払いたくないから、残業承認制を導入しようと思う」
管理部長:「はい。今までと違って残業の上限がありませんから、法的には改善されますが、申請される残業時間が心配です」
総経理:「本当に必要な残業の申請なのだろうか。従業員は残業を行う場合、事前に所属長に申請して承認を得なければならないと周知してくれ」
管理部長:「私も各営業所からの集計を把握しているだけで、実際のところは分かりません。しかし、必要性を検討することなく承認するケースが懸念されます」
総経理:「残業承認制は、無制限に残業を認めるという主旨ではないからな。早速、各所属長を招集し、残業をやみくもに承認せず、その必要性を吟味することや、事前承認を徹底し、やむを得ず事後申請となった場合にも、従業員にヒアリングの上、適正な残業時間のみ承認するように指示を出してくれ」
管理部長:「はい。しかし各所属長が指導できるか不安ですね…」

●解説
 さて、このような場合、承認を得ていない残業には残業代を支払わなくてもいいのでしょうか。原則、残業承認制を採用している場合には、承認を得ていない残業に対して残業代の支払いは必要ありません。
 しかし、台湾では今年(2016年)1月から法改正により法定労働時間が短縮(2週84時間→1週40時間)され、国定休日が年度の途中で復活(12日→19日)したにもかかわらず、残業時間の制限は月46時間で変更ありません。また、労働基準法(労基法)上、管理職であっても労働者と見なされれば、残業代を支払わなければならないという厳しい労務管理の中、人件費コストの増加は各社経営課題の一つなのではないでしょうか。
 ところで、法律では「延長労働時間は、実際の労務に従って勤務開始および終了の時間を計算しなければならない」と定められています。つまり、せっかく残業承認制を採用したとしても、会社が残業の存在を知りつつ放置すれば、暗黙の指示と解釈される可能性が高く、労働検査でも指摘を受ける可能性があります。
 よって、残業承認制を採用する場合でも、残業申請の内容とその実態(例えばタイムカードなどの打刻時間)を照合して、食い違いがある場合には従業員との面談を実施して実態を把握し、残業の承認を得ていない従業員は帰らせるなど、労働時間管理を怠らないようにする必要があります。

*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は個別にご相談下さい。

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